カターニア・ベッリーニ大劇場「ノルマ」

 最初から言い訳がましいが、歌がいいだけの公演というのは、なかなか感想が書きにくい。逆に音楽的に満足がいかなければ、その旨の感想はもてる。演出について言えば、良くても悪くても感想は書けるのだが、演出があってないような公演というのもある。それは書きにくい。

 今回の「ノルマ」は、まさにそういう公演であった。印象としては、「歌で勝負」の舞台である。もっとも「ノルマ」という作品自体の性質からすると、ヘタな小細工の演出を施すよりも、ベッリーニの音楽を聴かせる舞台の方が外すことのない正攻法なのかもしれない。それに、イタリアの地方都市の劇場の公演とすればまっとうな取りあげ方であり、キャストのみならずオケや合唱の良さも引き立てることになっている。

 個人的な興味からいえば、ジュリアーノ・カレッラ指揮のオケがなかなかいい雰囲気を出していた。コンサート・オケ(コンサートも上手にこなす座付きオケも含めて)にはない、とても味のある音色であった。シンフォニックな響きではなく、コンチェルティックな音である。言ってしまえば歌を引き立てる伴奏の役割に徹しているのかもしれないが、そういう役割なの中でいい音を出すオケは日本ではそう聴けないものである。

 肝心のキャストであるが、タイトルロールのディミトラ・テオドッシュウだけでなく、アダルジーザのガブリエラ・コレッキアも十分にノルマに対抗できていた。そのほかも、全体に声も体格も良くて、歌を楽しむベッリーニのオペラを聴いた、いう満足が残るものであった。

(2006年6月25日 大宮ソニックシティ)

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