千葉市民オペラ「魔笛」

市民オペラの鑑賞記で、このような感想から書き始めることはあまり感心できるものではないと思うものの、過去の公演に比べ、明らかに予算削減が目に付く公演であった。私見ではあるが、関東の市民オペラ等の中では、過去の実績から藤沢をトップにして市川が続くという構図の中で、ここ最近は千葉が着実に完成度の高い公演を続けて上昇してきているイメージを持っていた。それは藤沢にしても市川にしても数年間隔の不定期開催であることで公演を充実させているのに、千葉はきっちり2年ごとの開催ペースを維持している中での充実した公演であったので、私の中での評価は高かった。特に大掛かりな舞台装置と、プロによる適格なキャスティングは、東京で観る公演との落差を感じさせなかった。

ところが、今年の公演は、市からの助成が削減されて苦しいなかでの開催で、これまでの2回公演から1回公演に縮小するとの情報を公演関係者から聞いた。それでもキャストの水準は保っているので、(最近気になっている津山恵もパミーナで出演しているし、)どうなっているのだろうという気持ちで出かけた。

しかし実際に上演を観ると、やはり予算削減が目に見える。ここの特色であった舞台装置も思いっきり簡素化されてしまっていた。ほとんどセットなしになっていて、背景の映像に頼るようなものになっていたし、そういうなかでストーリーの深い表現もできなく、淡々と作品を上演しているような感じであった。一般的な市民オペラでもそう変わらないといえば、そうなのだけど、それではここの独自色が薄れてしまう。

ただ音楽面では手を抜いていない。まずは、伴奏のニューフィル千葉が、さすがはプロ・オケらしい響きを楽しませてくれた。実はこのオケも、県からの助成が危うくなって、昨年一時存廃さえ取りざたされていたが、どうにか持ちこたえたところである。そういう状況で、演奏レベルを維持することによって続けていこうという雰囲気が感じられる。指揮(アントン・トレムメル)はとても分かりやすいタクトで、無難な感じではあるものの、奇を衒わずきっちり聴かせてくれた。キャストもパミーナをはじめ市民オペラとしては十分であったし、合唱も人数の割にはよく歌えていた。

一般的な感想としては、助成削減の中、演奏水準を下げないだけでも立派な態度なのであろう。なんだか市の助成のことが感想の焦点になってしまったが、ふつうはそんなこと一オペラ愛好者としてとやかく言う筋合いではないのかもしれない。ただ今回に関しては、自分が千葉市に市民税を納めているから、納税者としてとやかく言う筋合いがあるのである。

2007年3月11日 千葉県文化会館)

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