東京二期会「蝶々夫人」

 二期会が「蝶々夫人」を上演するとなると、安定した楽しみがある。まず間違いなく決まったポイントで感動させられて涙を流すだろうと予想できる。良くも悪くも意外性はないと思う。

 今回は何と言っても佐藤ひさらさんのタイトルロールがすばらしかった。歌だけでなく演技も姿も、蝶々夫人にぴったり合っている。伊達英二のピンカートンも勝部太のシャープレスも良かったのだが、蝶々さんが登場した途端、舞台が引き締まったような感じだ。個性が強いような雰囲気ではないのだが、とにかく蝶々夫人がよく合っている。佐藤ひさらさんの蝶々さんを聴いただけでも、わざわざ寒い中でかけるだけの価値はあった。

 永井和子さんのスズキも慣れているのか、よく合っている。舞台が大詰めになるほどすばらしく、ピンカートン、シャープレスとの三重唱では際立っており感動した。

 (私の感想にしては珍しく、歌のことだけになった。)

(1月10日 新宿文化センター)

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