東成学園オペラ「愛の妙薬」

 市民オペラの特徴として、合唱(特に男声陣)の年齢層が高く、「村の若者たち」がリタイアしたおじいさんたちで構成されることがあって、見た目にヘンなことがよくある。それが大学主催のオペラになると、正真正銘若者たちで構成された「村の若者たち」になる。見た目の違和感解消でけでなく、とんだりはねたり、ちょっとした仕草まで若者らしくなるので見ている方もスッキリしてくる。

 東成学園オペラは、オーケストラと合唱は昭和音楽大学の学生が担当するものの、キャストは卒業生ながら一線で活躍しているプロを起用していて、いわゆる修了公演のようなものとは性質が違う。舞台も細かく作り込んでいて、もしかしたら、二期会なんかより立派かもしれない。

 オーケストラと合唱がとても良かった。アマチュアのような力みもないし、プロのように仕事の雰囲気もない。軽やかに自ら楽しんでいるようで、それでいて、プロ並みの技術水準を持っている。こういった若い人たちが、将来の日本のオペラ界を支えていくと思うだけで、頼もしくなってくる。

 演出は粟國淳さん。合唱の扱い方が巧い。一人一人にいろんな行動をとらせるが、それがあまり気にならない範囲に押さえられていて、出しゃばらせることはさせない。しかも、舞台の雰囲気を盛り上げるような、センスのいい、ふつうの日本人じゃ思いつかないような演技をさせる。プロフィールを見ると、私より一つ歳上、これからどんな作品を観せてくれるか楽しみだ。(父親は故粟國安彦さんで、学生の頃テレビで彼の演出した「トロヴァトーレ」を観たが、これが「トロヴァトーレ」としては最高の演出だと、今でも思っている。)

 それにしても、千葉から座間は遠かった。それほど珍しくもない「愛の妙薬」ひとつを観るのに、朝早く起きて電車を何度も乗り継いでえらく大変な思いをした。しかし、生の舞台は、家でCDやLDを鑑賞しているだけでは絶対に味わえない感動がある。その感動が忘れられないから、長い帰り道も「またオペラが観たい!」という気持ちでいっぱいになって、ついついチケットを買っちゃうのである。

(7月5日ハーモニーホール座間)

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