ブダペスト・オペレッタ劇場「チャールダッシュの女王」

 公演半月前でも安い席が買えたくらいだから、あまりチケットの売れ行きはよくないのかもしれないが、毎年のように来日しているにはそれだけ良さを認める人が多いということだと思う。私もこのブダペスト・オペレッタ劇場の初来日の時に「メリー・ウィドー」を観た時には、フォルクスオパーとも違う、二期会とも違う、楽しい舞台に感心した。

 とにかく出ている人みんな、芝居がうまくて踊りもうまい。もちろん歌もうまい。(そこにイタリアオペラのような歌のうまさを期待してはいけないが。)よくもあんなに激しく踊りまわりながら上手に歌えるものだと感心してしまう。この劇場に限らず外来のオペレッタはよくご愛嬌で台詞を日本語で言ってみせて笑わせてくれるのだが、ブダペストはご愛嬌どころのレベルではない。かなり長い会話のやりとりも日本語で通してしまい、観客は日本語を喋ったことに笑うのではなく、その内容で笑えるほどなのだ。下手な日本人よりもよっぽどはっきり聞き取れる。それが1回2回ではなく、随所に現れる。こういった観客を楽しませようとする努力も感心してしまう。

 昨年のバーデン市立劇場もそうだったが、フォルクスオパー以外の外来オペレッタは幕が開くまでそれほど期待せずに行ってしまうことが多い。実は今回も2回目とはいえ、そんなに期待していたわけではなかった。(前日に観たフレーニの「ボエーム」への期待に隠れてしまっていたからでもあるが。)しかし、またもや予想外に感動してしまった。まだまだ私の見極める目は甘かった。

 ところで、私はカールマンの「チャールダッシュの女王」は初めて聴いた。CDもビデオも知らないので、音楽も知らなければストーリーも全く知らなかった。うかつなことに油断していて、作品そのものがすばらしいなんてことも期待していなかった。しかしこれも私の予想に反して感動してしまい、えらく困ってしまった。つまりは泣いちゃったのである。何度も眼鏡を直すふりをして涙を拭いたものだから、となりのおばさんに気付かれたかもしれない。

(2月28日 オーチャードホール)

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