声楽研究会「椿姫」

 日本中には、特に関東にはオペラを上演するグループが実にたくさんあって、新聞や音楽雑誌ではその全ての公演の評価をカバーしきれていない。しかもピアノ伴奏の抜粋なんかではなくて、オーケストラ伴奏の字幕付き原語上演という立派な公演も数多い。そういった公演がどんなレベルなのか、どんなコンセプトなのか、自分で行って確かめるしかない。

 今回の「椿姫」は「市民による手作りオペラ」となっていたが、いわゆる「市民オペラ」とは違うみたい。各地にある市民オペラは大抵「市」が援助していて少しは余裕のあるところが多いが、そういったのではないようだ。ソリストも合唱もアマチュア臭い。アマチュア色が強いので、こちらとしても大きな期待はしなくなり、結果がどうであれ不満が残ることは少ない。

 それでも感想を述べるとすると、声量のあるソリストが多いのだが、表現力がいまひとつ物足りなかった。ドラマとしては盛り上がらない。予算が無いのか、全幕通してテーブルとイス以外に何も装置が出てこなかった。そのため、3幕では「ベッドさえも無いヴィオレッタの部屋」になってしまい、ヴィオレッタはイスに座ったまま苦しんでいた。ヴィオレッタにお金が無いのではなくて、主催者にお金が無いのだろうけど、これはおもしろかった。

 オーケストラは舞台の上よりもはるかに表現力があった。チケットやチラシには「ドリームオーケストラ」と書いてあったが、プログラムには「東京ヴェルディフィルハーモニー管弦楽団」と名前が変わっていた。要は今回の公演のための寄せ集めオーケストラなのだと思うが、そうとは思えないぐらいにまとまっていた。

 これだけオペラ団体がたくさんあるのだから、何か特色を出してもらいたい。

(3月6日府中の森芸術劇場)

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