朝霞オペラ振興会「カルメン」

 私は小さなメモ帳を持っていて、オペラの公演情報があれば、たとえ自分は行けないと分かっている北海道や九州の情報でもメモしている。情報を得た時点では行くつもりはなくても、そのうち仕事が休みになったり、その街に出張になったりと、いつ行きたくなるか分からないので、とにかくメモしている。ただこのメモは、日付と都市名と演目しかメモしていなく、それ以上は新聞やチラシを見るしかない。

 そのメモ帳に3月20、21日朝霞「カルメン」というメモがあった。期末で仕事の忙しい時期だし、21日は「夕鶴」の予定があったので、当初行くつもりはなかった。しかし、日が近づくと仕事の予定も立ち、行きたくなってきた。ところがチケットを予約しようとしたところで困ったことが起きた。どこに電話をしたらいいのか分からないのだ。「音楽の友」にも「ぴあ」にも載っていない。インターネットで「オペラ」で検索しても「朝霞」で検索しても見つからない。そもそも自分のメモがどこから得た情報なのかも思い出せない。仕方がないので当日券を期待して直接行こうかと思ったが、当日券の有無も分からず朝霞まで行くのも不安だし、第一開演時間も分かっていないのだ。困った挙句に押入れの中から過去の朝霞のチケットの半券を見つけだした。半券に書いてある番号に電話して、ようやく予約できた時は2日前だった。

 前奏曲でいきなりスクリーンにトップレスの女性の映像が映し出され、市民オペラにしてはおもしろい演出かもとワクワクしたが、あまり演出とは関係なく、間奏曲の時なんか牛の群れが映し出されたりしていた。舞台は何本もの垂れたロープとベンチのみで、舞台転換なしの極めて抽象的なもの。合唱は子供も含めて全員黒の衣裳で、控えめな演技のみに押さえていた。市民オペラの「カルメン」はタバコ工場の女が主婦のパートさんばかりで、密輸業者が初老の紳士ばかりという見た目の不自然さを避けるためにもこの合唱の処理は賢明だった。

 カルメン森永朝子、ミカエラ蔵野蘭子が良かった。エスカミーリョ北村哲朗も安定していた。ホセは気合いが入りすぎで少々違和感あり。オーケストラもよくまとまっていたが、金管が時々不安定なのはアマ・オケでは仕方がないのかも。

 900人程度のホールなので響きも無理がない。チケットは地元の楽器屋とかでしか売っていないらしく、小さなホールなのにかなりの空席が目立った。もう少し宣伝する気があれば、千葉から来る人はいなくても、東上線沿線のオペラ好きを集めるだけのことはできるだろうし、その程度のレベルは十分あるのにと思う。

(3月20日 朝霞市民会館)

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