新国立劇場「仮面舞踏会」

 特別グレギーナが好きということもないし、以前に「トロヴァトーレ」で聴いたことがあるので、絶対にグレギーナが出演する日にこだわることはなかった。とはいっても、立野至美はどんなものだろうと気になるほどでもないし、クピードと市原多朗ではどちらも良さそうだし、強いて言うなら山崎美奈を一度聴いてみたいというぐらいの気持ちの「仮面舞踏会」だった。だから発売日にはまずはグレギーナの出る9月23日のチケットを狙ってみたがダメで、25日の比較的安い席は買うことができた。しかし半月ぐらい前から、単なる個人的な日程上の理由だけで、どうしても23日に行きたくなり、今更無理だろうと諦めつつ電話してみると、案の定完売だった。25日のチケットは入手済みだし、その日は行けないということではないので、それならそれでいいのだが、念の為に直前になってもう一度電話してみた。すると、あっさり手に入った。当日券ではないのに、どうして直前になって手に入るのか、詳しいことは詮索しないことにして出かけることにした。

 さすがにグレギーナはすばらしく、(声色は私の好みではないにしても、)圧倒的であった。クピードも今まで以上に良くて、2幕の二重唱は、それだけでチケット代の元は十分に取り返した、という気分になるほど高揚した。レナートのグエルフィも良くて、2幕の幕切れのグレギーナとのやりとりはずっとオペラグラスから目が離せなかった。(アリアはとてもすばらしかったが、2幕の三重唱は直前の二重唱が高揚しすぎたため、舞台の糸が少し緩んだのは残念だった。)オスカルの山崎美奈も聴き劣りせず、ヨーロッパで活躍しているだけあって堂々としていた。

 指揮が良くないのか、オーケストラが指揮者についていけないのか、もう少しオーケストラに切れ味があればいいのに、とは感じた。演出については、特別びっくりすることはなかった。

(9月23日 新国立劇場)

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