新国立劇場「マノン・レスコー」

 かなり満足できた公演で、昨年の「アラベラ」や今回の「マノン・レスコー」のように、他ではあまり取り上げてくれない有名作品を、音楽的には上質に、演出は正統的に、料金は適正に上演してくれるところに、新国立劇場の強みがあると思う。

 私は「マノン・レスコー」は、アリアは知っていたけど、全曲についてはFM放送とテレビ放送で聴いたことがあるだけで、舞台を観るのは初めてだった。だから音楽についてもかすかにしか覚えていなかったのだが、耳心地の良いプッチーニの音楽に浸っているだけで楽しいし、プッチーニの作品は話の展開が上手いので下準備がなくても存分に楽しめる。実際、客席には身を乗り出して舞台を凝視している人が多く、音楽を聴くというよりお芝居を観ているという感じの人が多くいるように思えた。

 今回はまず何よりオーケストラの響きが良かった。前回の「仮面舞踏会」で唯一芳しくなかったのはオーケストラだったが、その時と同じ東京フィルとは思えないぐらい今回は良かった。やはり、イタリアオペラ、それもプッチーニになるとどんなオーケストラでも思い通りに鳴らすことのできる菊池彦典の指揮によるところが大きいのだと思う。最近は、菊池さんの指揮であれば少なくとも音楽だけでも安心して聴くことができると、思うようになっている。

 キャストも良くて、マノンはジョヴァンナ・カゾッラ、下原千恵子ともに十分満足できた。下原さんの場合、もう少し低い部分も響かせてほしいと私はいつも思うが、カゾッラさんと比べてもそんなに聴き劣りはしない。デ・グリューのキース・オルセン、ニコラ・マルティヌッチもともに良かったが、(これは好き嫌いの差もあると思うが)マルティヌッチは声質も風貌もデ・グリューには向いていないように感じた一方、オルセンはぴったしだと感じた。

 演出はピエールフランチェスコ・マエストリーニで、彼の演出はただひとつ昨年の不思議な「セヴィリアの理髪師」を除いては、いつもわかりやすい演出でこれも安心。

 総じて満足できた公演で、不満があるとすれば休憩が3回もあって、話と音楽のテンポが分断されたように感じたことぐらいだった。

(11月13、14日 新国立劇場)

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