俳句コーナー


新年、春、夏、秋、冬、それぞれのベスト5

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作成日 2000/4/22

新年、春、夏、秋、冬、それぞれの、これぞ!という五句を私の俳句の先生、
中込誠子さんに選んでいただきました。


新年

人の日や読みつぐグリム物語前田 普羅
きのふ見し雪原の年移りたる森 澄雄
初御空念者いろなる玉椿飯田 龍太
餅焼くや十日の宵の静かさに松本 たかし
芝居見に妻出してやる女正月志摩 芳次郎




おやしろやことしの春も旅の空松尾 芭蕉
春立つや愚の上に又愚にかへる小林 一茶
火口湖の高波をきく余寒かな飯田 蛇笏
三月や大竹原の風曇芥川 龍之介
いきいきと三月生る雲の奥飯田 龍太




夏の夜や崩れて明けし冷し物松尾 芭蕉
袷きて仮の世にある我らかな高浜 虚子
どの子にも涼しく風の吹く日かな飯田 龍太
夏めくや霽れ雷の一つきり飯田 蛇笏
林中の石みな病める晩夏かな木下 夕爾




人それぞれ書を読んでゐる良夜かな山口 青邨
石山の石より白し秋の風松尾 芭蕉
夜学すすむ教師の声の低きまま高浜 虚子
芋の露連山影を正しうす飯田 蛇笏
わが息のわが身に通ひ渡り鳥飯田 龍太




流れゆく大根の葉の早さかな高浜 虚子
冬晴や伐れば高枝のどうと墜つ飯田 蛇笏
綿虫やそこは屍の出でゆく門石田 波郷
一月の川一月の谷の中飯田 龍太
時雨来と匂ひ立つなりあすならふ志摩 芳次郎




中込誠子 なかごみせいこ

昭和2年生まれ。山梨県、市川大門町出身。
昭和24年、「雲母」入会。飯田蛇笏、龍太両先生に師事。
昭和36年、「雲母」同人。
平成4年、「雲母」終刊。
平成5年、「白露」創刊同人。






もし、よろしければ、私の拙い句にも目を通してください。

西山のせせらぎ春の雨に似て

七月の病棟の午後しづかなり

そよ風や木々が波うつ夏の夕

なつかしき青桐の幹秋の風

月光は見守る母の瞳なり

大西日向かうによき世あるごとし

秋の灯や甥の描きたる父と母

船浮ぶ十月の海見てゐたり

いずれの句も「白露」に掲載。




夏の朝日輪実る木立かな

空梅雨や雨を呼びゐる蝉の声

目を閉じて東屋の中蝉しぐれ

梅雨空や雲と山との境なし

炎昼や木陰に憩ふ庭師かな

梅雨病棟廊下にひびく靴の音

真夏空白線のびるジェット音

夏の夕雨後のそよ風なまめかし

夏欅落葉のごとき雀かな

夏夕べ樹木のざわめきゴッホに似て




林道や月あかりに照る名残り雪

白き富士乾は春の嵐なり

新緑に囲まれ立てる発電所

蝉の声風にながされ木立かな

夕立ちの雨足強くけぶるなり

夕立ちにぬれそぼる樹木なまめかし

夕立ちの降りて水面に円描く

青空に龍の住処か入道城

夏山路ガードレールの端さびれ

草いきれ修験者のごとひた歩く

襖戸に休みし小さき真白き蛾

大西日窓ごしの樹木光の絵

黒潮に似て秋雲のたなびける

秋風や戸をたたく音いねてきく

名月や夜にかがやく日輪か

真昼時何事もなく秋の庭

思案して煙草を吸うや秋の夕

赤々と口を開くや石榴かな

チャイムの音秋の夜空にしみわたる




ご意見ご感想等ありましたら下記へメールをください。
asanami@mxb.mesh.ne.jp


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