実証主義
positivism
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作成日 2003/2/9
「19世紀後半から20世紀はじめにかけて西ヨーロッパでさかんであった哲学運動で、コントやマッハの名と結びついている。経験された事実の背後に思弁や空想によって超越的な存在や抽象的な実体を想定することに反対し、認識の対象を経験的所与としての事実にかぎり、これをそれ自体によって解明しようとする立場。コントが人間の知識をいわゆる実証的段階で完結するものとし、これを最高の段階とみたのは、実証主義の立場を宣言したものといえる。マッハの場合には、堅実な研究成果の蓄積に自信をもつ当時の自然科学者たちがヘーゲルの思弁的な自然哲学にたいしていだいた反感と嫌悪にささえられて、経験的事実の尊重を叫びながら一気に感覚所与の雑沓のなかへかけこみ、そしてひたすらそこに閉じこもるという、主観主義的感覚実証主義がみられる。すなわち、<経験>がこのうえなくせまく解されてただの主観的感覚とされ、ほかならぬ経験が客観的実在(物質)を感覚の源泉だと証言するのに、それは無視されて、物質は<超越的><形而上学的>なものだとされ科学と哲学から追放される。世界は、結局のところ、ばらばらな<世界要素>としての感覚の複合に帰着させられる。レーニンが《唯物論と経験批判論》のなかでこうした主観的観念論としてのマッハ主義を徹底的に批判したことは、よく知られている。
現代ブルジョア哲学の主流のひとつである分析哲学は、このマッハ主義を源流のひとつとしているものである。」
哲学辞典 森 宏一編集 青木書店 より
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