科学


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作成日 2003/1/3

「事物の構造や性質や法則を探究する人間の理論的認識活動、およびその所産としての体系的理論的知識をいう。科学は、その社会的存在様式からいえば、世界を精神的にわがものにしようとする人間の認識諸活動のうちの主要な形態として、社会的分業の特殊な領域であって、今日、巨大な制度となり数百万の人びとの職業となっているが、これは長期にわたる発展の結果である。もともと科学は、人間の実践的な社会的生活過程から生まれそだってきたもの、すなわち、人間は、自然を変化させる生産活動の過程、および社会生活、特に階級闘争の過程で、観察・実験・調査などをおこない、これによってえた知識を整理・分析・総合して概念や仮説をつくり、これを実践によって検証し、こうして対象の一般的・必然的・本質的関連(法則)を明らかにしてきたのである。そしてついに、一定の段階で、いくつかの基本法則にもとづいて関連ある諸現象を統一的に説明する理論体系をつくりあげるにいたった。 これが自然科学および社会科学である。このように、科学は人間の実践的活動を基礎とし条件として成立し、実践が提起する課題を理論的に解決する努力という性格をもつから、実践の多様化と発展にともなって永遠に発展しつづける。その傾向は、一方ではいちじるしい分化・特殊化(specialization)をもたらし、他方ではそれと同時に、統合・普遍化(universalization)へのうごき、したがっていくつかの分野にまたがる分科(たとえばサイバネティックス)の成立をもたらす。

認識活動の所産としての科学は、宗教や芸術とは違って、公共的に確認できる事実にもとづき概念的論理的思考を駆使して構成された体系的な理論であり、社会的意識形態のひとつである。その力は、実践的吟味に堪えた法則的な客観的真理だというところにある。人間は、科学のおかげで、自然と社会の法則を意識的に利用し、将来の予見(科学的予測)もできるようになり、それは人類発展の強力な武器のひとつである。じじつ今日、自然科学はますます社会の直接的生産力に転化しつつあり、また社会科学は社会主義諸国において、社会的過程の指導の基礎となっている。 科学の哲学的考察にあたっては、理論を抽象的にとりあげて、その論理的構造その他を分析するだけではなく、その内容の世界観上の意義を明らかにしなければならず、また課題が提起され物質的研究手段が提供されて認識が獲得されてくる過程と科学の社会的機能とを具体的に分析して、歴史性・民族性・階級性を帯びて形成される科学の現実を解明しなければならない。」

哲学辞典 森 宏一編集 青木書店 より




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