ばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃ 水を蹴る豪快な音が聞こえてくる。 そして音は水際から一気に飛び上がる。 豪快一郎と豪快やな雄一であった。 「なんだっ、この段々畑はっ。お茶でも植えるのかっ!?」 「早まるなっ一郎っ。これはきっと蜜柑だっ。」 「なんだと雄一、何故分かるっ?」 「俺の故郷ではこういうとこには蜜柑が植わっているのさっ!」 「なるほどやるな雄一っ。」 「「「明けましておめでとう。お年玉を上げよう。」」」 「「ん!?お前達は黒鬼会っ。何をくれるんだっ?」」 「ふふふ、これを見るがよい。」 段々畑に花組を閉じこめた魔水晶が現れる。 「何いっ?蜜柑じゃないのかっ!」 「雄一っ、外れたようだなっ。だが気にしない、気にしない!」 「一休み、一休みっ」 「俺なんか凄くいやぁな気分がするんで帰るっ」 「ワタシもだ。なんかあいつら見てると金剛思い出しちまうよっ。」 「何だとっ!おらっ!」 いつもの口げんかをしながら二人は帰宅した。 「お前ら、今日は一体どうしたのだ?何か変だぞ。」 「「馬鹿野郎っ。正月早々鬼の面なんかかぶってる奴の方がよっぽど変だっ!」」 反論できない鬼王は、ここで自分のペースを取り戻そうとかねてから用意の セリフを言うことにした。 「ふふふ、大神。花組は全て我ら黒鬼会が捕らえたっ。お前の一番大事なのは誰だ?」 「あ〜っ?何を言っているっ!全員一番大事に決まってるっ!」 「馬鹿者っ、こういうのは一人だけと相場は決まっているのだっ。」 「小さい、小さいぞっ鬼王っ。男なら一人なんてみみっちいことを言うなっ! ど〜んと行けっ、どおぉんとなっ!」 「お、おかしい。明らかにいつもと様子が違う。やけに豪快だっ。 だがまあいいっ。出でよっ降魔っ。」 「子馬?子馬なんか出してどうするつもりだっ。鬼王っ。」 「誰が子馬と言ったっ。降魔だっ、降魔兵器っ。」 「うるさいっ、四の五の言うなっ!問答無用だっ!みんなっ、待ってろよっ。今助けてやるからなっ。行くぞ雄一っ!」 「おうっ!おうっおうっおうっ!」 「なんだっ、それは!返事は一回でいいっ!男なら返事は一回だっ!」 「甘いな、一郎っ!これは白浜さふぁりぱあくのアシカの真似だっ!」 「ふ、成長したな雄一っ。とおっ!」 二人は何故かまた水に飛び込みそこらへんを走り回る。 そしてまた段々畑に飛び上がると段々を往復し始めた。 良く体育会系のクラブが雨の日にやるあれである。 ひととおり、辺りを荒らし回った後二人は段々畑の中央で 腕相撲のように腕を組み叫んだ。 「ふぁいとおっ!!!」 「いっぱあぁぁっつ!!!」 その瞬間、異様な迫力が二人の体から発散され、折角出てきた降魔は一瞬で消し飛び、 花組を捕らえていた魔水晶は一気に砕け散った。 「「後はお前だけだっ、鬼王っ!」」 このままでは面子丸つぶれの鬼王は、口元に余裕の笑みを浮かべようとしながら、 強がった。 「ふ、ふふ。いやもう時は十分稼いだ。」 と同時に水の中から巨大な鳥居がせり出してきた。 「なんだっ、その鳥居はっ。でかけりゃ豪快ってもんじゃないぞっ、鬼王っ!」 「過ぎたるは及ばざるが如しだっ。」 「それは私が説明してやろうっ。」 「なんだっ、京極っ!貴様死んだ振りしてたなっ!せこいぞ京極っ!」 「・・・は、八鬼門封魔陣の秘法により帝都にかけられし魔の封印を解くのだっ。」 「なんだっ、京極っ!貴様そんなに貧乏だったのかっ。よし!飯くらい俺が食わしてやるっ!今からみんなで煉瓦亭だっ!」 「な、なんでそうなる?」 「貴様今言っただろうっ? 『わし着物食う、不味ぃ』<(わしきものくうまじぃ)<八鬼門封魔陣って!」 「だ、誰もそんな事っ・・・」 「かまわん!貧乏は恥ではないっ!行くぞ、京極っ!」 そう言うと豪快一郎は京極を抱え上げ、豪快に走り去った。 「きょ、京極様ぁ。」 鬼王が追う。 「よし!競争だっ、一郎っ!」 豪快やな雄一は、先行する鬼王に追いつくとこれもまた抱え上げ、豪快一郎を追った。 「あ、ずるいですよ大神さん。私も行きますっ!」 「抜け駆けは許しません事よ、京極っ!」 「飯の話にあたいが遅れるわけにはいかねぇ!」 「アイリスも行くぅっ!」 「イタリア人の食欲見せて上げマ〜ス。」 「アホ言いな、食欲言うたら中国人やでえっ!」 「疲労が激しい。補給が必要だ。」 「やれやれ、・・・でも確かにお腹が空いたわ。」 花組の面々も豪快一郎を追う。 ・・・そして。 八鬼門封魔陣は発動し、武蔵は独り寂しく取り残された。 |