Boorin's All Works On Sacra-BBS

「豪快一郎が檄す」



「はあ」
「どうしたの?ため息なんてついて。」
「いえ、何でもないの。」
「本当、どうしたんですか。何か悩み事があるなら話して下さいよ。
私で出来ることなら何でもしますから。」
「ありがとう。・・・でもこれはあたしの問題なのよ。」
「ふ〜ん、そういうときは大神少尉のお風呂でも覗けば元気になるわよ。」
「う・・・ん。でも一郎ちゃんにも関係あるのよね。」

そう言いながらも斧彦の身体は夢遊病患者のように風呂場へと向かう。
琴音と菊之丞はただそれを見守ることしかできなかった。




風呂場ではやけに豪快な水音と風呂桶の音がしている。
風呂場の反響で音が二重三重にも重なって一つの異空間を作り出していた。
それを作り出しているのはもちろん豪快一郎である。

今日も先ほど風呂を覗こうとして金ダライを喰らった大神は、
豪快一郎にちぇいんじしていた。
が、しかし風呂には誰もいなかった。
残念だが仕方ない。

「人は何故風呂にはいるのか。そこに風呂があるからだっ。
よしっ、風呂入るぞっ。」


豪快一郎の気持ちの切り替えは、光よりも速い。

「でっびぃ〜っる」

豪快一郎は豪快に叫びながら、服を破り捨てると風呂場に躍り込んだ。
日本人の伝統であるかけ湯などしない。
いきなり湯船で泳ぎ出すのだ。

クロール、バタフライ、ターン毎に泳法を変える。
一通りの泳法を泳いで、洗い場に直行。

紅蘭特製の蒸気洗濯機をひっつかんで湯船の湯を掬う。
その中に石鹸をぶち込むと身体ごと洗濯機に入り込みスイッチを入れるのだ。

「♪ひっきさいたぁーふくをすてぇ、とぉびこっむふぅろばでぇー、
せぇっけんをあわだぁてぇてーからだをあらうのぉだー。

まっわっれぇーこーそくのーてーいーこーくせんたぁっきぃー
うっなぁれぇーしょぉげきのーていこーくせんたぁっきぃー」


大声で歌いながら、全身を同時に洗うのだ。

この間約3分。

「豪快とはこういうことだっ。」




風呂場から上がった豪快一郎を待っていたのは斧彦であった。


「ん?どうしたんですかっ、斧彦さんっ!」

「実はあたし、一郎ちゃんに話したいことがあるの。」

「いいですよ。どうぞっ。」

「あの、えとね。・・・あたし。」

「かあーっ、斧彦さんっ。男なら話は手短にっ。ちんたらしてたら80歳になって
死んでしまいますわっ。」

「あ、ごめんなさい。でもあたし、身体は男だけど心は女だから。」

「そんなことはどうでもいいっ。豪快に行きましょうっ!豪快にっ!」

「じゃあ言うわね。実はあたし、一郎ちゃんの他に好きな人が出来ちゃったの。」

「ん!めでたいっ!で、誰?」

「う〜ん、意地悪ぅ。ちょっとくらいじぇらしぃしてもいいんじゃない?」

「男ならそんなことは気にしない気にしないっ。で、誰?」

「ごめんね、一郎ちゃん。怒っちゃいやよ。実はね。武蔵ちゃんなの。

「あ〜ん?聞こえんっ!男なら豪快に喋って下さいっ!豪快にっ!」

「だから女なんだってば。でも思い切って叫んじゃおうかな。」

「おうっ!いけっ!豪快に、どおぉぉおんとなっ!」

あたしは武蔵ちゃんが好きっ。
きゃっ、どうしよう言っちゃった。」

「よしっ、俺に任せておけっ!今俺の頭の中をヒラメとカレイが舞い踊ったわ。
すなわち閃いたっ!」

「え?なになに?何が閃いたの?」

「話はブリッジに行ってからだっ!」





「何だと?ミカサの突入をやめる?どういうことだ?」

「実は斧彦さんが武蔵に惚れちゃったそうなんですわ。
それでその愛の成就と京極をぶったおす一石二鳥のプランを思いついたんですわっ!」

「む、武蔵に惚れたぁ?」
「きゃっ、恥ずかしいっ。一郎ちゃんったら。」
「ま、まあいい。・・・で、どういうプランなんだ?」

「斧彦さんに夜這いをかけてもらうんですわっ!
無理矢理武蔵の愛を奪って自分のものにしてしまえば、
武蔵は腹の中の京極を吐き出すでしょうがっ。」

「な、なるほど。武蔵は太田のために京極を吐き出すって訳か。」

「そういうことっ!完璧ですわっ!」

「だが、どうやって夜這いをかけるんだ?」

「そんなことは考えてませんっ。
だが何とかなるでしょう。
それが豪快というもんですわっ。」

「な、なんかよく分からんがやってみろ。」

さしもの歴戦の勇士、米田一基をしても豪快一郎の迫力には押され気味であった。


「らじゃーっ!斧彦さん、行くぞっ!」

「でも、まだ夜じゃないわよ。」

「かあーっ、小さいっ、小さいですわ、斧彦さん!夜じゃなければ夜にする!
それが豪快というもんですわっ!」


豪快一郎はそう言い放つと、窓の外に手を出して思いっきり引き寄せた。



「がちょ〜ん!」



空気が豪快一郎の腕の動きによって引き寄せられ、
手の動きの前方に半径10kmの巨大な扇形の真空状態が発生した。
当然、次の瞬間周りの空気がなだれ込み、
その動きによって地球の自転が加速される。

そして、夜は来た。

「す、すごいわ一郎ちゃん!」

「はっはっはっ、これが豪快ということだっ!」


「でも、武蔵ちゃん、あたしの愛を受け入れてくれるかなぁ。」

「かあーっ、この期に及んでまだそんなことをっ!
そんなうじうじした奴はもう知らん!
金ダライに頭をぶつけて死んでしまえっ!」

「し、しどいわ一郎ちゃん!死んでやるっ!」

斧彦はそう叫ぶと風呂場に走ってドアを開けた。

ぼぐんっ

ちゃらっ、ちゃらっ、ちゃらっ、ちゃらっ、ちゃちゃらっ。

「ちぇいんじっ!」

太田斧彦は頭に金ダライを食らうと豪快だ斧彦にちぇいんじするっ!


「かあーっ、あたしったら何をうじうじ悩んでたのかしら。
愛は奪うものっ!欲しいものは欲しいっ!
あたし行くわっ!」


「よしっ、斧彦さん出撃せよ!」


「了解っ!」


豪快だ斧彦は、いきなり甲板を駆け出して空に舞った。


「『♪愛は心の翼。Fly to you あなたのもとに飛んでいくわぁ。』
武蔵ちゃぁ〜ん!」


行く手に飛来する降魔どもを蹴散らし、豪快だ斧彦は飛ぶ。
ただ愛に向かって一直線にっ!
武蔵の顔が迫ってくる。


「武蔵ちゃん、チュウして上げるわっ!」


豪快だ斧彦はその愛しい唇にキスをした。
豪快な激しい情熱的なキスだった。
武蔵は最初抵抗した。
が、次第にその顔が赤らみ目が潤み始める。

・・・そして、武蔵は陥ちた。


「美しいっ!豪快だっ!成長したな、斧彦さんっ!」



「二人の間に邪魔者はいらないわっ!さあ行きましょう二人の世界へっ!」


頬を薔薇色に染めた武蔵はひとつ頷くと、
腹の中から京極や鬼王、金剛、降魔どもを吐き出した。

ひしと抱き合う二人。
その瞬間、彼らの願いは成満し、
二人の世界は円く閉じ姿を消した。


「これが豪快ということだっ!これが豪華愛ということだっ!」


後には馥郁と薔薇が香るのみ。

(了)

#すみません。言い訳はしません。
#つい書いてしまいました。
#読んで気分が悪くなった方、すみませんでした。m(_ _)m


(了)

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