夏の終わりの夜、まだ空気に昼間の焼けるような熱が残っている。 「もう、夏も終わりか。今年の夏は何も面白いことがなかったな。」 「そうですな。」 「いっそ、花火でもやるか。」 「いいですね、なかなか粋じゃないですか。」 「そうであろう?よし、かしゃぴん、お前花火やれ。」 「は?」 「は、ではない。火と言えばお前だろう?決まりだ、かしゃぴん、お前が花火やること。 異議のある人手を挙げて。・・・異議は認めません、けって〜い!」 まるで小学生の学級会のような京極の無邪気な強引さに、かしゃぴんは花火をやることになった。 「し、ん、ぱ、い、す、る、な。 こ、の、も、っ、く、が、て、つ、だ、い、ま、す、ぞぉ、〜。」 いつもかしゃぴんとつるんでいるもっくがサポートを買って出る。 その日から、かしゃぴんともっくの修行の日々が始まった。 ウインドブレーカーを着込み、シャドウをしながらのロードワーク。 雨の日も風の日も。 生卵を飲み、余ったものはでこの上で目玉焼きにしてもっくに。 縄跳び、メディシン・ボール、パンチング・ボール。 「き、そ、た、い、りょ、く、は、つ、き、ま、し、た、ぞぉ、〜。 こ、こ、か、ら、は、わ、ざ、の、れ、ん、しゅ、う、で、す、ぞぉ、〜。」 もっくが花火のアイディアを出してきた。 夏の醍醐味はやはり浜辺でやるロケット花火に尽きる。 ということでかしゃぴんはロケット花火をやることになった。 現役最年長発明家、もっくのアイディアはこうである。 イモけんぴを大量に喰ってガスを出し、そのガスに紅蓮火輪双で点火するというものだ。 誰もが一度は夢見て敗れ去っていったガスロケットへの挑戦。 まさに永遠のチャレンジャーかしゃぴんの面目躍如である。 「なんでイモけんぴなんですか?そんなのいやですよ。 私は都会生まれの都会育ちですよ。 かりんとうだったら大好物なんですけどもねぇ。」 「つ、べ、こ、べ、いっ、ちゃ、い、け、ま、せ、ん、ぞぉ、〜。 お、と、こ、な、ら、だ、まっ、て、り、ぽ、び、た、ん、いっ、ぽ、ん!」 「分かりましたよ。」 「カリコリカリコリ、五行相克、そらっ、紅蓮火輪双!」 ぼへっ 着火失敗。 「き、あ、い、が、た、ら、ん、で、す、ぞぉ、〜。 こ、こ、ろ、を、あ、つ、く、も、や、す、の、で、す、ぞぉ、〜。」 かしゃぴんともっくの修行は続く。 人類の夢、ガスロケットに向けて。 数日後。 いよいよ打ち上げの時は来た。 「もっく、かしゃぴんは飛べるようになったのか?」 「ふ、ぉ、ふ、ぉ、ふ、ぉ。そ、れ、は、み、て、の、お、た、の、し、み、で、す、ぞぉ、〜。」 種子島の海辺に立つかしゃぴん。 目を閉じて何かを待っている。 風がかしゃぴんの髪を揺らす。 手にはイモけんぴの入ったナイロン袋が揺れている。 かしゃぴんはおのが身体のうちからわき上がる欲求の高まりを待っていた。 来るっ! かしゃぴんは、かっと目を開くと猛然とイモけんぴを食い始めた。 ますます高まる欲求! 「和尚慟哭! 宇宙(そら)っ! くれっ!かりんとうっ!」 魂の叫びと共にかしゃぴんの尻に火が点る。 ひゅうぅぅぅぅぅぅ! かしゃぴんは空気を引き裂き上昇していった。 「見事だ、かしゃぴん。余は満足じゃ。 よしっ、みんなで盛り上がるぞっ! Let's ボンダンスっ! ♪WowWo〜、WowWowWo〜・・・」 空にはかしゃぴんロケット、 地には黒鬼会 with K によるボンダンスの花が咲く。 まこと美しい幻想的な夏の一夜であった。 (了)
#ガチャピン宇宙制覇記念の完全時期ネタです。 #元ネタ分からない方すみません。なんとなく書いてしまいました。 |