blanc 10 for lovers 04 「一緒に帰ろう」





 2学期はあれこれと行事が多くて、毎日がとても充実していて忙しい。
 会計部の仕事を終えて、学園から寮に向かう帰り道。
 夕焼けの中、並んだ影はずいぶんと長くなっていて。
 気が付けば季節はいつの間にか、すっかり秋を深めている。

「伊藤くん」

 繋いだ手をつんつんと軽く引いて。
 気を引くようにしながら、七条が啓太の名前を呼んだ。

「ほら、ここからだと校舎と職員棟の側面が、ちょうど並んで見えるんです」
「? はい」

 そうして眼差しで示すのは、いつも帰りに通る道の、いつもと変わらない光景だ。
 それを改めて指摘されて、啓太は少し不思議に思いながらそれでもこくんと頷いてみせる。

「窓も」
「え?」
「窓も、並んでいるんですよ」
「???」
「これなら足りますね」

 ね、と。まるで同意を求めるように。
 しごく満足そうに云う七条に、足りるってなにがですかと問い掛けようと口を開きかけたところで。

「・・・・・ぁ」

 ふと、思い当たる。


『本当は伊藤くんの名前も入れたかったのですが、窓の数が足りなかったので・・・』


「しっ」

 校舎の屋上で初めて告白をされたときの、とても残念そうな口調。

「し、ししししちじょうさんっ?!」

 目を剥いて、啓太は慌てて七条を振り仰いだ。

「た、足りるってあのまさか・・・っ」
「ナイショです」

 語尾にハートマークが見えそうな上機嫌で云って、フフフと小首を傾げてみせる七条の。
 愛情表現がちっとも「ナイショ」ではないことを、幸か不幸か啓太は既に重々知っている。


「し、七条さん――――っ!!」


 作戦決行がクリスマスなのか大晦日なのか元旦なのか、それとも二人だけが知っているナイショの記念日なのか。

「あの俺っ、ほんとに名前は入れなくても全然っ、いいですから!!!」

 どうやら全ては、悪魔の胸ひとつ――――・・・・





きっとこの後
「だめですか?(悲しげ)」
とか云い出す七条にまたひと悩みさせられるんですよ啓太は(笑)

驚いたり悩んだり喜んだり怒ったり。いつだって一生懸命。
やはし啓太はそうでなくては!

それにしてもここのとこ七啓ばっかり書いてます。
次のお題アップも軽くえちありで多分七啓。
七啓月間やら七条の呪いやら・・・。


wordsIndex  itemsIndex  charaIndex