読書の・・・?・トノサマver.





 ゴンっ!

「っ!?」

 衝撃と、間近に聞こえた小さいとは云い難いなんらかの衝突音に、啓太は驚いて瞬いた。

「・・・・・」

 目の前にあるのは机と思しき木目。
 そのうえ、額がなんだかじんじんする。
 どうやら衝突を起こしたのは、啓太の額とこの木目の机らしいと気がついて。
 そういえば自分は今、読書をしていたはずだったと思い出す。
 それがついついうとうととしてしまって・・・。

「ぃ、たた・・・」

 右手の人差指で額を擦りながら顔を上げると。そこには。

「なうん!」

 至近距離の机のうえで、ネコが胸を張っている。

「あ、ト、トノサマ! ・・・今の、見てた?」
「なうーん」

 尋ねてみれば、余裕の面持ちで頷かれて。
 情けなさに啓太は、脱力してぱたりとまた机に突っ伏してしまう。

「・・・・・」

 その突っ伏した頭を、柔らかな、おそらくは尻尾にぽんぽんと軽く叩かれて。
 ゆっくりと顔だけ仰のかせると、すぐ脇にトノサマの気配。

「? トノサマ・・・?」

 なに? と顔を向けたら。
 柔らかな温かさがふわりと近づいて。
 ぶつけた額を、ぺろんと舐められた。

 ネ、ネコに慰められるとは・・・。

 果てしなくとほほな気分に陥りつつも、それでも胸のうちは確かにふんわりと温かさに満たされたから。
 啓太はとろりと目許を和ませて。
 ありがと、トノサマ、と、ふかふかな毛皮の首筋をぽんぽんと優しく撫で返した。