MAX 200Points!いそいそと準備を始めたのは一週間前のことで。 七条のお気に入りのケーキ屋に、七条のお気に入りのケーキの予約を入れた。 そんなことをするのは生まれて初めてだったからとても緊張して、でも無事に予約ができたあとは本当に嬉しくて、準備が整ったことを一週間も七条に内緒にしておくのは、とてもとても大変なことだった。 そして当日、食堂で一緒に夕食を終えたあとで、届いたケーキを大事に抱えてほくほくと七条の部屋を訪れた啓太は、驚いた顔で啓太を迎えてくれた七条の様子に、この一週間の苦労が(主に内緒にしなければならなかったことへの大変さが!)ようやく報われた気持ちになった。 二人で一緒に茶葉を選んで紅茶を入れて、並んでソファに腰を下ろして、ケーキの包みを開いてそうっと箱を開けて、2種類のケーキを半分こにしてショートケーキも季節のタルトもどっちも美味しいですねと幸せに笑い合ってそうして、とても大切な「お誕生日おめでとうございます」の言葉を告げたら七条は、本当に幸せそうに笑って「ありがとう」と啓太の頬にキスをくれた。 それで啓太も幸せになって、また来年もこうやってお祝いができたらいいなと、うっとりしながらそんな風に考えていたところで・・・。 「? ポイントカード?」 うながされるまま差し出した両手の上に乗せられた、小さな二つ折の紙のカード。 その表紙をきょとんと見下ろして、啓太は不思議そうに呟いた。 「はい」 啓太の反応が想像していた通りだったのだろう。 微笑ましそうにその姿を眺めながら、七条はにっこり笑って頷いてみせる。 「でも・・・今日は七条さんの誕生日じゃないですか、なのに」 「ええ、ですからそれは、僕にとって嬉しい君へのプレゼントなんです」 「・・・・・?」 七条の答えの意味が分からず小さく首を傾げる啓太に。 「プレゼントというよりもむしろ、おねだり、ですね」 そう云って少し身をかがめて顔を寄せて啓太と眼差しをあわせた七条は、意味ありげにふふふと笑った。 「・・・・・・・・」 間近から急にそんなものを渡されて、目を瞠った啓太は次の瞬間かああと頬を熱くする。 そのほてった頬に、ちゅっともうひとつ小さなキスを落としてから。 七条はこのカードの使い方の説明を始める。 「伊藤くんが嬉しいなとか、幸せだなとか、僕と一緒にいてよかったなとか、そんな風に思ってくれたときにひとつ、ポイントを加算してください」 そこまでは納得できて、啓太はこくんと頷いた。 「そうして一定のポイントがたまったら」 「・・・・・」 たまったらどうなるのかと、折れ目を開いてカードの中身を見る、と。 「・・・・・っ、・・・!!」 目を剥いた啓太は次の瞬間、ぷしゅうううううと頭から湯気を吹いた。 カードの中身はお店でよく渡されるポイントカードと同じに、四角い桝目がたくさん並んでいる。 そうしてその桝目の2行に1度の割合で、つまり20ポイントたまるごとに特典が・・・・・・この場合きっと七条にとっての特典が、書いて、ある、のだ、けれ、ども・・・。 「――――――・・・・・・っ」 ポイントを重ねるごとに特典の内容の、過激度が増しているような気がするのは、きっと啓太の気のせいなどではなくて。 後半に至ってはこれはちょっとどうしたって無理です!と、抗議しようと顔を上げたのだけれど。 その向けた眼差しの先にあるのが、なんだかとても幸せそうな表情をした、七条の顔だったりするものだから。 「・・・っ、し、・・七条さんあの、これ」 「今日は誕生日ですから」 「・・・ぅ・・・・・・で、でも!」 「大丈夫ですよ。カードが埋まるまでには、きっととても時間が掛かりますから。ね?」 「〜〜〜〜〜〜〜っ」 だからといってどこがどう大丈夫なのかが分からないままに、いつもの通りに笑顔で押し切られて。 七条の顔を見上げて口ごもったまま固まってしまった啓太の、その困り果てた顔にくすりと笑った七条は。 「まずは君からのキスのプレゼントをもらうために20ポイント、ですね」 頑張ります、と。 啓太の唇に優しいキスをひとつ落とした。 ・・・・・まずは、1ポイント獲得。 |