こういちの野望第3回急須から湯気が立つ。 「はい、どうぞ」 「ああ、ありがとう」 こういちがKKから湯呑みを受け取る。 よっちょとあっちょに別れを告げ、二人は中の亭に戻っていた。 「こういちさん、今日はホントにお疲れさまでした。おかげでいいシーンが撮れました。」 これは本心からだ。KKは今日のこういちの演技に満足していた。 「いやいやー、なかなか面白かったよ。」 「そう言ってもらえると嬉しいです。」 なごやかに話が進む。思えば、こういちとこんなに落ち着いて話すのは久しぶりかもしれない。 いつもKKはこういちの突拍子もない話にイラつかされている。 今日は同じ目標を達成した同士のような気分なのだろう。 KKがクラブ旭ワンコイン上映会の今後について話し始めた。 クラブ旭ワンコイン上映会(CAOCS)はKKが主催している自主上映の団体で、映画『赤ぱっち』はCAOCSの製作作品になる。 KKもあまり人にCAOCSの将来について語ることはないのだが、この同士になら話してもいいと思ったのかもしれない。 「CAOCSでは、これから撮影機材を揃えて自主映画を制作する人に貸し出して行こうと思ってるんですよ、幸いここは上映設備も整ってるし、格好の場所だと思いませんか?」 「そうだね、僕も編集機材とかを買って揃えていこうと思ってるんだ。」 「そうかー、中の亭に来たら、上映はできるし、撮影機材は貸してもらえるし、編集もできるんですね。それだけ映像に特化したらすごいですね。」 ・・・特化?今朝の考えがKKの胸をよぎる。 (それだけではダメなのだ、何か特化したものがないと・・・、何か・・・。) 特化!そうか、これだ! 「こういちさん、それですよ、中の亭NPO法人化への道が見えて来ましたよ!」 |