するとシャルルは物憂げな表情のまま顔を傾けて、あなたの頬に唇を押し当てました。
こめかみあたりにかかる息も、滲んだ血を吸い取るような唇の動きも、かすかに触れたあたたかい彼の舌の感触も、わずかな一瞬でしたが、あなたはリアルに感じて心臓がバックンバックンしました。ユメミだったら周りの人全員変身させそうな勢いです。
「おいで、消毒したほうがいい」
「…はい」
あまりの刺激に脱力状態のあなたは黙って花瓶を持ったままシャルルについて会場を後にしました。そうしてメイド控え室へやって来ました。
「脱いで」
「ええっ!?」
「…その濡れたエプロンだけでもどうにかしろ」
「え、あ、は、はい!」
一瞬大きく誤解をしたあなたにシャルルは呆れ顔でそう言い、奥の部屋へ入って行きました。
あなたは花瓶を流し台の上に置き、白いエプロンをはずし、ジャーッとしぼりました。
やがてシャルルが救急箱を持って来て座るように言い、あなたは彼に頬を突き出して、おとなしく消毒されました。
「なぜ君は、勝手にまとわりついて、勝手にドジふんで、オレの手をわずらわせるかな」
「う…」
手当てをしながらシャルルは冷たく言い放ちました。ごもっともです。
あなたは言い返せなくて、ちょっとヒリヒリしてきた頬に眉をしかめてみせました。
するとシャルルはフーフーと2回、消毒液を乾かすように息を吹きかけてきました。なんとも無邪気で甘い仕種!しかしその息が耳の端にもかかったので、あなたはくすぐったくて笑ってしまいました。
「もっと沁みるのをつけてやろうか」
「う…」
また怒られてあなたはガックシと肩を落としました。やがて手当てが終わり、救急箱のフタをパタンと閉める音がして、シャルルが立ち上がりました。あなたもあわてて立ち上がり、
「あの、た、楽しんでほしかったんです!」
「誰に、何を?」
「…あなたに、クリスマスを」
「…」
そう言って、少しでも気持ちが伝わるよう、あなたは一生懸命シャルルを見ました。
シャルルはしばらくあなたを見つめたままでしたが、やがてフワリと花が咲くように微笑んでくれました。
「では、聖なる夜に、オレのご先祖様でケガをして楽しませてくれた君に」
皮肉たっぷりに、でも明るい声でそう言い、シャルルは花瓶にあったバラを一輪とり、トゲを取り除いて、あなたに差し出しました。
「メリー・クリスマス」
バラを受け取って、あなたはヒリつく頬を我慢しつつ、精一杯、微笑み返すのでした。
