船長に要求されるもの

 

  船長に要求される必要なもの、それは、安全運航を任す事のできる強い責任感。              どんな状況においても、最善を見極めることのできる判断力、そして乗組員をまとめる統率力である。

 過去の海難事故において、たくさんの船長が、救命艇で脱出すれば助かるにもかかわらず、船と運命をともにし、殉職している。私の先輩も、ブリッヂのコンパスに体を縛り付け、船とともに海に沈んだと言う話を学生の頃教官より、たびたび聞いたものである。それが今の時代に美徳だとは言えないが、それほど船長とは、安全運航確保と言う最も重要な船長職務に自分自身に責任を科しているのである。船は、世界で一番大きな乗り物である。それ故、価値も高い、又、何十億の積荷を輸送することもあれば、客船など何百人の御客様の命を預かる。到底、中途半端な責任感などで、やれる職務ではないことを理解願いたいのです。

 我々船乗りは、1つの船で運命を共にしている。もしも大きな事故でも起これば、全員命を落とすことさえ、考えられるのです。船長に命を預けていると言っても過言ではない。実際15年の船乗り人生の中には、そのような危険な経験もあった。船長の1つの判断が、乗組員の生死をわけるのです。どんな追い込まれた状況においても最善を見極め、迷わず判断する。これが船長には、必要なのです。

 我々船乗りにとって船とは、会社ではなく、家なのです。休みを終えて、乗船してきた時は、”お帰り”と声をかける乗組員もいます。1年を家で過ごす時間より、船で過ごす時間の方がはるかに長いし、非番の時間も、船内で過ごし、船で食事をし、船で寝ているのです。私の乗船しているフェリーで言うと、33名の所帯が、同じ家で生活しながらともに仕事をしているようなものなのです。考えてみてください、親と同居して生活するのさえ、いろいろなトラブルがでてきて、結構大変なものです。 それが、33人の他人なんですから、それをまとめる統率力が船長には、必要になってくるのです。それと同時に船員にも、協調性が要求させるわけです。