船と運命を共にする船長の責任感


一般の方からよく、船長は何故海難に遭遇したとき、船と運命を共にするのですか?と言う質問を受ける。
実際私の先輩たちも、海難事故に於いて船と運命を共にし、殉職した話を学生の頃から度々教官より、聞かされたものであった。法律的に述べると、海難が発生した場合、船長は、人命の救助並びに船舶及び積荷の安全確保のために必要な手段を尽くすことが厳しく義務付けられており、船内にある者すべての退避が、確認した後でなければ本船を離れる事ができない。
よって最後に船を離れるのが、船長になる。以前、どこかの客船で、遭難時、御客と一緒に逃げた船長がいたが、法律的にも、罰せられるのである。タイタニックのように沈む間際でさえ、たくさんの乗客が残っていた状態では、船長も船と運命を共にする以外の選択はない。船長と言う職は、多大な責任とプレシッシャーを背負っている。これが原因で心臓を患う者も少なくないくらいそれは大きい。何十億、何百億という船と積荷、それに何百人の尊い命が、船長の判断ミスで失われる事さえある。また大きな事故が起きれば会社の存続さえ危うい。不幸にも海難に遭遇し、自分の背負っていた責任のある船が目の前で沈んでいく時、それを救命ボートの上から眺めるなんて出来なかったのではないだろうか。陸のサラリーマンには、想像もつかない大きな責任を船長は背負っているのです。それが今実際船長として乗船している私の答えです。


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