映画 PERFECT STORM を見て


話題の映画PERFECT STORMを見たので感想を書いてみたいと思う。この
映画は、1991年に実際に発生した100年に1度という巨大台風を映画化
したものだ。普通の台風で起こりうる波はせいぜい10mぐらいであるのに対
してこの台風では30mというとてつもなく大きな波が観測されている。いかに
巨大であったかが容易に想像できる所である。これは、ハリケーン、寒冷
高気圧、爆弾低気圧の3つが、普通では考えられない気象条件がジャスト
タイミングにより揃ってしまったために一体化したもので「嵐を越えた嵐」と
なったのである。物語の主役は、グロスターの漁師。アンドレア ゲイル号に
乗り込み大漁と一攫千金を求めて漁に出ていく。久しぶりの大漁に活気づく
船内であったが帰路にこの嵐にのみ込まれ乗組員6人全員が帰らぬ人と
なってしまった。彼らには、今までの経験からきっとこの嵐を乗り切れるという
自信が有ったに違いない。なぜなら天気図を入手していたにもかかわらず
嵐の中に船を進めたのだから。しかしながら、その嵐は彼らの想像を遙かに
超えた物で、誰もが生きて経験することの出来ない巨大な嵐だったのだ。
男たちの判断のミスであった。
私は小学校の5年生の時に、和歌山から白浜に17フィートのモーターボート
で旅行に行ったことがある。その帰路に台風のうねりに遭遇したのだ。台風が
過ぎ去った直後で風は全くなかったが巨大なうねりだけが残っていた。
7mぐらいはあったと思う。近くを航行していたヨットのマストがうねりにのみ
込まれ全く見えなくなる。このうねりを後ろから受けての航行であったが、
17フィートのボートは、まるでサーフィンをしているような走り方をした。ボートの
方が少し波よりも速く、波を登る時は、スピードが全く止まってしまい、波を駆け
下りる時は、ジェットコースターのように滑り落ちるのだ。全くこの映画の中の
アンドレア ゲイル号である。CGの作り出した波のリアル感は見事だった。
今、プロの船乗りとして考えてみると全くの自殺行為である。あんなうねりの
中をよく無事で帰って来たものだと思う。この時初めて、身の危険を感じて救命
胴衣を着用したものだ。
その後、プロの船乗りをこころざし、商船学校で学び、練習船に乗船し、特に
帆船では、海という物を学んだような気がする。そして、社船に乗船して現在に
至っているが、海から学んだ教訓がある。それは、”海をなめたらあかん” 
”嵐をなめたらあかん” という事である。時に海は、気象学を越えた想像も
つかない姿を見せるのである。これは、プロの船乗りとして決して忘れては
ならない教訓であり、この映画は、私にこの教訓を再認識させてくれた。
最後に帰らぬ人となったブロスターの海を愛した男たちに心から敬意をはらい、
ご冥福をお祈り申し上げます。