映画タイタニックを観て
先日ようやくタイタニックを観ることが出来たので、船長という専門的な立場から感想を述べよう。
久しぶりに感動を覚えた映画でありました。ストーリー、構成、迫力どれをとっても最高の映画でした。
まだ観ていない人は、ビデオで観るのではなく、是非とも映画館のあの大きなスクリーンで観てほしい。
ラブストーリーもなかなかのもので、最後のクライマックスには、お客さんの殆どが涙していましたね。
ハンカチを忘れず持っていきましょう。
1912年4月15日午前2時20分世界最大の豪華客船タイタニック号は、ニューファウンドランド沖400
マイル海底3776メートルの海底に沈没した。乗客乗員2223人のうち生存者は、たったの706人であっ
た。これ程事故を拡大したした最大の理由は、救命設備の不備であろう。現在では考えられない事である
が、タイタニックには、定員の半分の救命ホートしか積んでいなかった。タイタニックの事故以来救命設備
に関する国際的な条約が確立したといわれ、現在は定員の115%が、救命設備規定で義務づけられてい
る。当時この基準で救命ホードを積んでいれば、殆ど犠牲者を出さずにすんだはずである。
第二の理由として、乗組員の救命設備に対する知識不足。上記数字からもおわかりでしょうが、定員の
半数の救命ボートを積んでいたはずなのに、実際助かったのは3分の1程度、事故当時の海上状況から
すれば少なくとも半数以上の生存者がいてもおかしくない。その原因が、乗組員の救命ボートに対する
知識不足であった。救命ボートにどれだけの収容能力があるのか、ボートダビット(ボートを降ろす装置)が、
どれくらいの重量に耐えられるのか、よく認識されていなかったからなのです。大きな船員の過失であった
と言える。我々船員は、特に客船乗りは、新しい船に乗船したときは、まず、その船の救命設備を確認する
のが常務とせれている。
乗船したその日に非常事態が発生しないともかぎらないからです。
第三の理由として、船長の大きな判断ミスがあったこと。
タイタニックは、氷山と接触し、沈没しましたが、当時氷山の情報は、かなり取得していました。にも
かかわらず会社からの圧力に負け、逆に速力を上げ全速で航海を続けた。もし、見張りを増やし、速力
を落とし、コースを変えて航海していれば、このような惨事は避けられたかもしれない。大きな船長の判断
ミスであったといえる。
上記三つの理由は、いずれも、当時不沈船と言われていたタイタニックゆえに犯された過ちであった
ように思う。船と言う乗り物は、鉄で出来ています。当然ながら水には浮かない。現在においても不沈船
など存在しないことを理解してほしい。
レオナルト゛ディカプリオとケイトウィンスレットが船首で海の風を受けキスをする非常にロマンチックな
場面がありましたね。船乗りなら誰もが一度は経験していることですが、残念ながらあの場所は、どんな
客船であれ立ち入り禁止区域になっており、ましてブルワークによじ登るなんて言う行為は、絶対に許して
はくれません。船橋から丸見えですからね、残念。
氷山に衝突し、海水流入を食い止めるため、一等航海士が、船橋より水密扉を閉鎖する場面があり
ました。機関室で作業していた作業員が閉鎖しつつある水密扉にあわてて逃げる場面ですが、普通
水密扉が閉まる時は、警報を鳴らし、閉鎖区域に人がいないことを完全に確認してから閉鎖しますから、
あの映画のようなシーンは、存在しないかも。
この映画を通じ、船長として、船員としていろいろな事を教えられたようなきがします。
ありがとう タイタニック