フットピアノのこと
‘90年代の初め、ぼくらは名古屋の矢場町にあったアルマジロっていう南部酒場で毎月演奏させもらっていた。
ある夜、そのアルマジロに、ひとりの白人紳士がやってきた。彼が言うには、独りで世界のあちこちで演奏してきたという。
どんな話でライブが決まったのかは、よく憶えていないんだけれど、とにかく一度、演奏してもらおうという話がまとまって、その夜がやってきた。
残念なことに、ぼくは、その夜に立ち会っていないんだけど、ギターと小さなハイハットと、何やら不思議な楽器を持ち込んだ紳士の演奏に、店中がのけぞったって話を後で人づてに聴いた。
これが、Robert “One-man” Johnsonを知った、そもそもの始まりだった。
この時、ロバートが持ち込んだのが、足鍵盤でピアノのアクションを動かしてベースの弦を弾く楽器。ロバートはこのストリングベースを脚で弾くっていうコンセプトを、サンフランシスコ・ベイ・ブルースで皆が知ってるジェシーフラーから教わったという。
Robert "One Man" Johnson のフットピアノ
現在、ロバートはアイオワで活躍している。ロバートのフットピアノは進化し続けていて、最近の愛器はとってもコンパクト。しかもアタックの強い良い音で鳴っている。
一貫しているのは、アップライトピアノのアクションを使った12鍵盤仕様であること。
左足で鍵盤を操り、右足はハイハットを踏んでいる。
ブルースから古いロックからちょっとはねた曲も、どれもかっこいい。
音からするとピックアップはマグネティックなのかな?今度、尋ねてみよう。
Jesse Fuller のフットピアノ
ロバートの師匠に当たるジェシーフラーの足ベースは、"Footdella"(フットデラ)って呼ばれている。現物がスミソニアンに保管されているそうなので、死ぬまでに一度じっくり見てみたいなあ。
よく出てくる写真がこれ。
何世代かの作例があるようだけど、これはかなり初めの頃じゃないかな。
この手のオリジナル楽器の常として、観れば見るほど謎がてんこ盛りなのです。
- 弦は6本
6本の鍵盤で、6本の弦を鳴らしている。そのことを初めて聞いた時は、何が何だかわからなかった。その後、ビデオがでまわるようになり、よくよく見てみると、鍵盤は左から
W-V-Y-U-X-T
っていう並びになっているらしい。
曲のキーが変わったら、カポ代わりに、適当なところに6つの弦をセーハーするようにフレットを立てればいいわけだから、考えてみれば、大概の曲はこれで間に合うかも。
- アクション
ピアノのハンマーを流用してるようにも見えるし、そうでないようにも見える。音を止めるダンパーがどうなっているのかもよくわからない。
- 踵を固定
踵の位置を固定する小さな台がついている。なぜこれが必要なのかは謎。
- とにかくでかい
ギターの全長と比べてみても、高さだけでも1.2mはありそうだ。横にハンドルが付いているけれど、どうやって持ち運んでいたのだろう。
フットピアノを作ってみる
ロバートの、とても独りで演奏しているとは思えない、曲芸のようなホットな演奏を何度も聴いた。ときにはハモニカで参加させてもらったりもした。
そんなこんなで時間が経って、ロバートは名古屋を離れてしまったんだけれど、あるとき、ロバートが演奏していた楽器を作ってみようか、と、ふと思い立ってしまった。
で、最初に作ってみたのがこれ。
1作目
Low-CからCまでのオクターブ+1の13鍵仕様。ペグは長ナット。スパナ二本で調律。弦はエレキベースのB弦(5弦)からA弦(3弦)でスケールはロングスケール相当。鍵盤幅が25mm。アクションは試行錯誤してでっち上げた自作品。ダンパーは鍵盤直付のスポンジゴム。
鍵盤幅が広すぎて、1オクターブを三分割して組んだんだけど、一曲弾くと股が裂けそう…。これは失敗でしたなあ。
で、あっという間にバラして、もう少し幅を狭くしたのがこれ。
2作目
鍵盤幅を20oに縮小。13鍵を二分割。響板は、15mm厚のパインの集成材。
ピックアップは響板の裏にピエゾを貼り付け。
うん。そこはかとなくベースの音がする(気がする)。
これで2015年5月から年末まで、あちこちのバーで演奏した。
でも、いかにも大きすぎるし、何より工作の精度が低くて、弦ごとに音が違いすぎる。チューニングにスパナが必要っていうのも、いかがかなあ、と。
一念発起して作り直したのがこれ。
3作目
鍵盤幅は18mmで鍵盤間隔が9mm。弦の間隔は18mm。ペグはエレキベースのペグを流用。響板はスネアドラム流用のバンジョースタイル。ピエゾピックアップで音を拾い、自作のプリアンプを通してベースアンプに送ることにした。
なりはだいぶ小さくなったけど、音は大きくなった。
これも2016年正月から年末まで、丸一年使っていた。
でも、音が気にいらない。ボーンというよりゴーン。田舎臭い曲をやるときは雰囲気だけど、洒落た曲にはいかにも合わない。
もう少し何とかしたいと悩んでいたら、とある方が、アップライトピアノのアクション一式を譲ってくれた。
とあるライブを観に行ったら、ウクレレベースを弾いてる人がいて、これが実にいい音だった。
むくむくと意欲が湧いてきて、作ってみたのがこれ。
4作目
鍵盤幅18mmと鍵盤間隔9mmは、足が憶えてしまったので変更なし。弦の間隔は15mmに縮小。スケールを544mmに短縮して、高さを620mmまで圧縮した。
響板はスプルース単板。フレームはハードメイプル。
弦はウレタンゴムで、ブリッジの下にピエゾ素子を4発。
ペグはエレキベースのペグを改造。
踏んでみるとウッドベースみたいな音がする。
ようやく、探していた楽器が手に入った気分になった。
こんな楽器を手に入れたい人が他にいるとは思えないけど、無人島翁長七も、孤島を脱出するときには、流木を使った船の造り方を島に書き残してきたと吉村昭も書いていた。メモを残しておけば、ひょっとすると誰かの役に立つかもしれないね。
鍵盤部分
鍵盤前部 ヒノキ材 18mm×18mm×230mm(白鍵) ×140mm(黒鍵)
鍵盤後部 ヒノキ材 18mm×15mm×それぞれ
鍵盤支持板 ヒノキ材 9mm×50mm×70mm
ベース板 シナベニヤ合板 12mm厚
センターピン ステンレス5mm径丸棒
スプリング 外径5mm 自由長30mm 線径0.55mm バネ定数0.5N/mm
ポストワイヤー&キャプスタン キャップボルトM4×25mm、長ナットM4×20mm、樹脂製なべネジM4×15mm
鍵盤の可動部を横から見たところの図面。だいたいの寸法はこのとおり。
鍵盤の屈曲部を上から見たところの図面。結局、寸法は現物合わせ。
(メモ)
- 鍵盤の材
今回は工作が楽なので、鍵盤をヒノキ材で組み、木固めエースで補強する方法を選んだけれど、できれば硬い木(チェリーかメイプル)を選びたかった。体力を鍛えていつか挑戦したい。
- 鍵盤を戻す機構
今回からスプリングに押しバネを採用。本物のピアノはウエイトで鍵盤が戻る仕組みだけど、この鍵盤の場合、支点から手前が長すぎて釣り合わせるとウエイトが馬鹿でかくなってしまう。
今までは引きバネを使っていたけれど、ものによっては一月くらいで切れてしまった。この押しバネは、メーカーによると許容たわみ45%以内に抑えれば100万回の伸縮に耐えるそうな。2ビートで踏むと、トニックが1小節で2回。ワンコード12小節の曲だとして24回。10コーラスで一曲だとして240回。一晩で30曲演奏したとして7,200回。100万回耐えるなら、ワンコードの曲だけで押し通しても138回のライブに耐えられる。(はず)4年は持つ計算だ。
スプリングはいろいろ試して、この仕様に落ち着いた。目の前の没にしたバネの山を眺めながら、これで何か作れないかと思っている自分が阿保らしい。
- 鍵盤の支え
本物のピアノの鍵盤は前後のバランスピンに鍵盤を乗せる構造。ノイズや、個々の鍵盤の調整ではその方が圧倒的に有利。
残念ながら足では鍵盤と鍵盤の間隔がないと弾けないので、支点にシャフトを通して鍵盤を支えることにした。
以前はベアリングを組み込んだりもしたけど、手間の割に効果がなかったので、今回はシャフトを通しただけ。
- 鍵盤のストローク
ピアノのアクションを使うので、本当はキャプスタン(鍵盤がアクションを押し上げる部分)のストロークが本物のピアノと同じほぼ6mmになるように調整すべき。アップライトピアノの鍵盤は、支点から手前が3、奥が2の比率なのだそうだ。だからキーストロークが10mmのとき、アクションには約6mmの動きが伝わることになる。
今回は、なぜだか支点からの比率が1:1だと思い込んで作ってしまったので、キーストローク約10mmはいいけれど、アクションの動きも10mmになってしまった。
その分、アクションの部品は大きく動かされているわけで、音は大きいけど、耐久性に難ありってことになるかもしれない。
しばらく様子をみてみましょう。
- アクションに動きを伝達する機構
本物のキャプスタンは、木製のキャップのような部品で、ウィペンのフェルト(ヒールクロス)に当たる頭の部分に滑り易いよう黒鉛が塗られている。
フェルトを痛めない素材であることと、高さを調整できることが必要な部品なので、今回は真鍮の高ナットとステンレスのキャップボルトで高さを稼ぎ、高ナットに樹脂製のなべネジを介してウィペンを動かすことにした。
以前は鉄製のネジを使っていたけれど、かなりの力が一点にかかるらしく、何回かライブをするたびにここに相当する部分に穴が空いた。今回は今のところトラブルがないので、しばらくはこれで。
アクション
ウィペン(A) 鍵盤の動きを伝える部品
ハンマー(B) 弦をたたく部品
ダンパー(C) 弦の響きを止める部品
アクションレール(D) ウィペンとハンマーとダンパーを取り付ける横木。今回はチェリー材で自作。
レギュレーションボタン(E) ハンマーが弦に当たる寸前に鍵盤の動きを伝えるジャックという棒状のパーツがハンマーバット(ハンマーの根本)から外れるよう調整するための部品。今回はラミン丸棒とヒノキ材で自作。
ジャックストップレール(F) ハンマーバットから外れたジャックがとんでもないところにいかないよう抑える横棒。今回はヒノキ材にスポンジを貼り付けて自作。
ハンマーストップレール(G) レストポジション(弾いていないときのハンマーの位置)を決める横棒。今回はヒノキ材にスポンジを貼り付けて自作。
(メモ)
- アクションレール
今回は、ご厚意で譲っていただいたウィペン、ハンマー、ダンパーを自作のアクションレールに取り付けている。
本当は、バラバラの部品から、本来の位置関係を復元するのは不可能だと思う。(今回は、悪戦苦闘の末、適当なところでお茶を濁した。)
これから中古のピアノをばらしてアクションを組もうという方がいたら、部品をねじ止めしている木製の土台(アクションレール)を切り出して保存しておくことを強くお勧めする。
- 交差弦か垂直弦(平行弦)か
アップライトピアノは弦長を稼げるよう交差弦になっている。
だからハンマー(上の画像では白いフェルトの部品。)もダンパー(音を止めるフェルト。上の写真ではハンマーの向こうに映っている赤い部品。)も弦に合わせて傾いている。
ちなみに、その昔は、弦を垂直に張った平行弦のピアノも作られていたらしい。
フットピアノは、このピアノと同じ平行弦。
だから、ハンマーヘッドもダンパーも垂直に作り直す必要があった。ところがハンマーを作り変えるためには、ハンマーシャンク(ハンマーのシャフト)を切る必要がある。そうすると打弦する点が低くなり、ハンマーとダンパーが干渉してしまう。
そこで、今回はハンマーには目をつぶって、ダンパーだけ垂直弦仕様に改造した。とは言っても、ダンパーを切り取ってエポキシ樹脂で付け直し、ダンパーワイヤをえいやっと曲げただけですけど。
それでも、ハンマーシャンクとダンパーヘッド(ダンパーをワイヤーに止める木の部品)が当たってカチカチ鳴ってしまうものが現れた。写真でダンパーヘッドに白いフェルトが貼られているのは、そのノイズを防ぐため。
なお、本物のピアノではハンマーとダンパーが左右にずれて配置され、ダンパーが弦から離れすぎないようダンパーレールという横棒で抑えられているから、こういうことが起こらないのです。
- レットオフ
レットオフ(ジャックがレギュレーションボタンに当たってハンマーバットから外れるときの弦とハンマーの間隔)は4mm程度に調整。鍵盤を押し下げたときのハンマーは弦から13mm程度に調整。
この「程度」って辺りは、コンマ01ミリに気を遣う調律師さん達にこっぴどく叱られそう。(本物は3.17mmと12.5mmに揃えるのだそうです。)
確かにここをしっかり調整しないと、鍵盤ごとのタッチがバラバラになる。ぼくの足は鈍感なので、タッチまではよくわからないけれど、ここの調整に手を抜くと簡単に弦を二度打ちしたり、ビビったりすることはわかりました。
- ジャックストップレール
ジャックストップレールをどう調整するのがベストなのかはよくわからなかった。遊びが広すぎると二度打ち、狭すぎるとビビリの原因になる。その真ん中でえいやっと位置を決定。
- ハンマーレール
ハンマーレールを弦から離すほどストロークが大きくなり、音も大きくなる。アップライトピアノのソフトペダルは、このストロークを小さくして音を小さくする仕掛け。今回はレストポジションでのハンマーと弦の間隔が50mm程度になるように調整した。
ヘッド部分と弦
ヘッド板(A) ハードメイプル 15mm×290mm×120mm
ヘッド板(B) ハードメイプル 15mm×290mm×50mm
ナット(C) エボニーとヒノキ材で自作
テンションバー(D) ステンレス製L型アングル
ベース用ペグ(E) 左側用 7個 右側用6個
弦(F) ウレタンゴム
(メモ)
- 弦
弦は、工業用プーリーの丸ベルト用に作られたウレタンゴムを使ってみた。いわゆるウクレレベースの弦がこれらしい。
今回使っているのはバンドー化学のバンコード丸ベルトという製品。直径5mm、4mm、3.5mmを使い分けている。
それぞれウクレレベースのE弦、A弦、D弦に相当する太さ。素材自体は東急ハンズでも手に入るけれど、さすがに直径のバリエーションがないので、業者さんから取り寄せた。10m単位で購入することになるけれど、それほど高いものではないので、まあいいか、と。
ところで、これまでは何の疑いもなく左端のC(C1)が再低音、右端のC(C2)が最高音のオクターブにチューニングしていた。ところがウクレレに合わせるには音が低すぎる。下のCなんてウクレレの再低音のC(C4)(ギターの3弦5フレット)からすると、丸々3オクターブ下なんだから、考えてみれば当たり前だ。そこで、今回は、Eを最低音(E1)にすることにして、C〜D#はオクターブ上でごまかしている。試してみたら快調なので、当分これでいくつもり。
下の表に図面段階でのフットピアノのスケールと、元になったバリトンスケールのウクレレベースを比べてみた。
鍵盤
|
音名
|
弦径
|
スケール
|
(参考)
KALA
U-Bass
のスケール
|
1
|
C2
|
4mm
|
505.0mm
|
445.7mm
|
2
|
C#2/Db2
|
4mm
|
492.0mm
|
420.7mm
|
3
|
D2
|
3.5mm
|
544.0mm
|
530.0mm
|
4
|
D#2/Eb2
|
3.5mm
|
531.0mm
|
500.2mm
|
5
|
E1
|
5mm
|
544.0mm
|
530.0mm
|
6
|
F1
|
5mm
|
531.0mm
|
500.2mm
|
7
|
F#1/Gb1
|
5mm
|
518.0mm
|
472.2mm
|
8
|
G1
|
5mm
|
505.0mm
|
445.7mm
|
9
|
G#1/Ab1
|
5mm
|
492.0mm
|
420.7mm
|
10
|
A1
|
4mm
|
544.0mm
|
530.0mm
|
11
|
A#1/Bb1
|
4mm
|
531.0mm
|
500.2mm
|
12
|
B1
|
4mm
|
518.0mm
|
472.2mm
|
13
|
C2
|
4mm
|
505.0mm
|
445.7mm
|
各弦とも、ウクレレベースよりも少しずつ弦長が長くなっていくのは、ナットを載せるヘッド板2の長さが120mmしかないから。
ヘッド板をもっと長くすれば、理論上のスケールに近づけて、弦のテンションを一定にできるけれど、その分、響板(トップ)を小さくしなければいけなくなる。
フレット楽器ではないから、弦長が長ければ、その分テンションを高くすればいい、と割り切ってみた。もちろん、あまりテンションが違いすぎても、特定の弦から突然元気な音がしたりして気持ちが悪い。図面の寸法から出発して、いろいろ試し、これなら許せるかな、というところに落ち着いた。
なお、このウレタンゴムを弦楽器に使うというアイディアは素晴らしいと思う。そこにはホントの試行錯誤があったはず。ウクレレベース弦のあれこれについては、ウクレレ界の先達MATTさんのサイトを大いに参考にさせていただいた。
- ナット
2枚の板を向かい合わせにしてヘッドを作り、奥のヘッドにナットを止める構造は、前作から試しているもの。この構造は、ロバートが昔使っていたフットピアノを参考にしている。
ベースのペグを使うと、ペグ同士の間隔を取らなければならないから、どうしても、手前と奥の二つのヘッドを用意しないと、13個のペグを配置することができない。
ピアノと同じようにチューニングピンを使えば、1枚のヘッドでも収められると思うけれど、その場合には頻繁にチューニングをいじることができなくなる。悩みどころだ。
話を元に戻すと、ナット(駒)は各弦ごとに独立させ、それぞれテンションバーを入れて、弦が押し付けられるようにしている。
なお、ナットは黒檀の小片をヒノキ材の土台に接着して拵え、奥のヘッドの板に木ねじで止めてみた。
- ペグ
ペグは難物。なんといってもウレタンゴムの弦は太い。
KALAがU-Bass用のペグを小売りしてるようだけれど、国内ではなかなか手に入りそうもないし、取り寄せると結構な値段になりそうだ。
ジャンク箱を漁っていたら、以前、一個当たり200円少々っていう安さに目がくらんで、大量に購入し、先代のフットピアノに最初使ってみたものの、あまりの造りの悪さにお蔵入りしていたペグがでてきた。スチール弦を張るとギアが欠けて回らなくなるという代物。壊れても惜しくないので、弦を止めるスリットをウレタンゴムが入るまでプライヤーで広げてみた。
ウレタンゴムは、スチール弦ほどのテンションがかからないので、この造りでもなんとか耐えられそう。
なお、ところどころギアが露出しているのは、安ものだけに、ごそごそと加工していたらカバーが外れてしまったからです。
ブリッジ部分
ブリッジ(A) エボニーとヒノキ材で自作
ピックアップ(B) ケヤキ材 30mm×30mm×290mm
テールピース(C) 圧電素子×4
(メモ)
- ブリッジ
ブリッジの高さは30mm。エボニーのサドルとヒノキ材のブリッジ本体を接着して組み立てて、13本の弦を乗せている。
一般的なギターのようにトップ(響板)にブリッジを固定するのではなく、ウッドベースやバンジョーのようにトップに乗せているだけ。
ウレタンゴムの弦は滑りが悪いので、チューニングのために弦を巻き上げても、ギターの弦のようにブリッジの上を滑ってくれず、ブリッジごとペグの方へ引っ張られてしまう。このため、ブリッジを接着剤やネジでトップに固定して、うっかりチューニングしようものなら、ベリベリっと剥がれてしまうことになると思う。
あ、よく見たら写真でも、少しブリッジの下側が浮いていますね...
- テールピース
弦の端を止めるテールピースは、ケヤキの角材に穴を開けたもの。
この部分で弦のテンションをすべて受け止めるので、頑丈で狂わないことが素材の条件。
今回は木目が好みのケヤキ材を使用したけれど、狂いが多いケヤよりもチェリーやメイプルを選ぶのが正解だと思う。ウォールナットなんていうのもいいなあ。(お客さんからはまったく見えないけど)
- ピックアップ
前作までは、トップにピエゾピックアップを貼り付けていた。生音が大きいスチール弦だとそれでも音量が稼げたけれど、ウレタンゴムの弦の生音はあまりに小さい。それをトップから拾っても、まったく音量が稼げない。
こりゃ、使い物にならないなあ、とがっかりしたけれど、ブリッジの下にピエゾを敷き、弦のテンションで押さえつけてみたら、ありがたいことにしっかりした音が出てほっとした。
製品のウクレレベースがアンダーサドルピックアップばかりなのは理由があったのね。
ジャンク屋さんで大量に手に入れた京セラ製の圧電ブザーから取り出した圧電素子が一番好みの音だったので、そいつを4個パラレルに繋いでいる。音量はプリアンプなしでも大丈夫。
細い弦ほどパワーがないので、音量をそろえるため、1-2弦の間、3-4弦の間、7-8弦の間、11-12弦の間にそれぞれピックアップを配置してみた。
今のところ、許容範囲かなあって感じ。もう少し試行錯誤が必要だと思います。
(june/6/2017 追記)
これまでの配置だと、右側の弦ほど音量が稼げない。
まあいっか、とそのままにして置いたら、とうとう、先日のライブで指摘してくれるお客さんが出現。
むむう。やっぱりさぼっていてはいけませんね。ということで、9-10弦の間にもう一つピックアップを増設することにした。
まだステージで試していないので結果はわからないけど、部屋で鳴らしている分にはいい感じ。
トップ(響板)部分
トップ(響板)(A) スプルース材 5mm×250mm×555mm
ブレイス(補強材)(B) ヒノキ材 10mm×12mm×230mm
ブレイス(枠)(C) ヒノキ材 10mm×15mm
フレーム(D) ハードメイプル材 20mm厚
(メモ)
- トップ
トップの厚みは根拠もなく5mmにしてみた。
今のところ、ほどよく弦のテンションを受け止めているような気がする。
もちろん、ここが薄いほどよく響き、厚いほど頑丈になる。
昔のウクレレなんて1mmくらいしかありませんからね。よく響くはずです。
- ブレイス
ブレイシングはギターのお作法通り、両端に向かって削ったうえで、トップ板に接着し、トップ板が少しアーチを描くようにした。
今回は、両端が中央よりも2mm低くなるようカンナをかけた。
偶然だけど、弦を張ったら、トップがほぼまっすぐになったので、これで正解だったと思いこむことにしました。
- 弦の端末
弦の端末処理はコマ結びだけ。
強度はこれでも十分。見た目は演奏しているぼくからは見えないから不問ということで...。
今後のお題
次に挑戦してみたいことを、覚えとして...。
- スケール
最初に比べればかなり小さくなったけれど、それでもまだクルマがなければ運べない。
もう一回り弦を太くして、スケールを短縮すれば、もう少し軽く、小さくできるはず。
ハモニカアンプと、ハモニカと、フットピアノと、ウクレレと、ハイハットを抱えて、電車で移動できることを目指すのが昭和生まれの日本人の心意気。
- 鍵盤
今度は鍵盤もハードメイプルで組んでみたい。それならば、本物のピアノと同じ構造にも挑戦できるかも。
メープルは硬いからなー。工具から揃えないと歯が立たないのです。
- シースルーの響板
前作のバンジョー構造は、観ている人から、アクションが動くのが見えた。これってライブでは大事だと思う。今回のは、音はよくなったけれど、観ている人から何をやっているのかわからないってのがいけませんね。
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