センター試験監督
大学入試センター試験の監督をすることになった
試験監督は毎年大学の職員が行っており
今回依頼されたので引き受けたのである
昨年も頼まれたのであるが
それは予備監督というものであり
他の試験監督者が都合により欠席した場合にそなえて
自宅待機するという任務であった
結局欠席者はなく
自宅待機という任務を果たしたのであった
今年は正式な試験監督である
正式な試験監督は説明会に参加する必要がある
説明会では試験監督マニュアルを手渡された
製本され右肩に赤字で「取り扱い注意」と書かれた正式なマニュアルである
マニュアルには受験者に対して発するべき言葉などが実に細かく書かれており
これを読んでいれば自動的に試験は終了するといった感じであった
受験者が鼻血を出して解答用紙が汚れてしまった場合の対処法
遅刻者が「採点されなくても一応受験したい」と言った場合の対処法など
実にさまざまな状況に対する対処の仕方も書かれている
それらを細かく説明していったため
説明会は1時間を越えるものとなった
さて監督当日
センター試験2日目である
朝8時50分に海城高校という高校の
食堂2階の監督控室に集合となっている
学校入り口で係員に「受験票を見せてください」と言われて
一瞬焦ったが監督者は身分証明書を見せれば入れることを思い出し
身分証明書を提示して入り食堂を目指す
食堂にはすでに監督者が多数集結していた
試験監督は一教室2名体制で行われる
一人は監督責任者でもう一人は監督者である
2名の監督で45名収容可能な各教室を担当するのである
私は監督初心者なので監督者であり
よって私とともに監督をする方は監督責任者ということになる
監督控室は担当教室ごとに座ることになっており
私とともに監督をする方はすでに到着していた
適当にあいさつをし少しばかりの会話と打ち合わせをする
話によるとどうやら私の仕事は微々たるものであることが判明した
試験本部から問題用紙と解答用紙を受けとること
問題用紙と解答用紙を配布すること
試験開始直後に「試験開始しました」と書かれた紙を廊下に出すこと
解答用紙を回収し試験本部にもっていくこと
以上が私の任務である
これら以外の時間は教室後部のイスに座っていればいいということである
受験生へ言葉を発したり
写真票を確認してまわったりするのは監督責任者がやってくれるらしい
私は当初受験生へ言葉を発するのは監督者の役目だと思っており
前日は一人でマニュアルどおりに練習していたりしたのであった
そのため少しばかりがっかりしたが
仕事が楽になったので特に不満はなかった
さていよいよ試験開始
最初は国語の試験である
センター試験はなにか問題があると
ニュースとなってしまう全国的試験なので
やや緊張気味に仕事をこなす
問題用紙と解答用紙を配布し
試験が開始され「試験開始しました」の紙を廊下に出す
あとはやることがないので
予備の問題用紙を持って教室後部に行き
問題をパラパラとながめながら試験終了を待つのみである
しかし突如受験生が手を上げた
問題等に対する質問は試験本部に報告する義務があり
実に厄介なのである
厄介なのであるが対処するのが監督の役目なので
挙手した受験生のもとに向かう
するとその受験生は下のほうを指差した
その方向を見ると鉛筆3、消しゴム1が落ちていた
挙手はそれらを拾ってほしいという合図だと認識した私は
監督者らしく威厳のある態度でそれらを拾いあげ
受験生の机の上に置き
何事も無かったように教室後部に向かい監督業務を続けたのであった
しかし試験開始から約30分後
またしても他の受験生の手があがった
今回は「ティッシュを使用したい」という要望であった
マニュアルによるとティッシュの使用を認める場合は
「袋から取り出し中身のみを机の上に置かせる」ことになっているため
マニュアルどおりに対処し事なきを得た
これ以降受験生の手はあがらず
無事国語の試験は終了し解答用紙を回収
盗難などに注意しながら解答用紙を本部に渡し
一つ目の試験監督任務は終了した
監督控室に戻ると各席に弁当が置いてあった
監督者用弁当というで私の席にも置いてあったので
ありがたくいただいた
さて次は理科1のテストである
受験生は休み時間が長いが
監督者はいろいろ準備がありわりとあわただしい
理科1の試験は全く問題なく終了した
監督責任者は私の任務があまりに退屈だと思ったのだろうか
次の理科2の試験では私に写真照会の仕事をやらせてくれた
写真照会とは受験生の写真票の写真が
受験生自身の顔と一致するかを確かめる作業である
試験終了10分前までにやればいいということで
退屈になってきたころにおもむろに立ち上がり
写真と顔を見ながら教室を回る
意味ありげに長く立ち止まってプレッシャーを与えてみたりと
なかなか楽しい作業である
写真照会の作業をしてわかったことは
私が担当している教室にいる受験生は
「池上」から「市川」までの
全て「イ」で始まる苗字を所有しているということであった
「石井」と呼ぶと5名くらいが振り返る実にマニアックな教室なのである
それどころか他の教室には「安西」などが数名いたりするのである
そんなことを考えているうちに理科2の試験は終了した
次の公民の試験も問題なく終わり
監督の任務は全て終了となった
センター試験監督は初体験であり新鮮なものであった
今後何度か監督経験を積み
将来的には監督責任者となって受験生に様々な指示をしたいと考えている
もどろうか