技官誕生
実に唐突であるが私は技官となった
東京大学生産技術研究所というところで
文部科学技官という職業で働くことになったのである
配属予定研究室の助教授がイギリスに出張中であったため
国際電話で面接という実にマニアックな採用法となった
面接後に研究室を見学しに行くと
日本語が堪能な外国人に出迎えられた
モミアゲが途中から前面に向かって垂直に曲がった
おしゃれなドイツ人である
しかもそのモミアゲは終端にいくに従って
細く鋭くなっていくというモミアゲであった
さらにそのモミアゲは金色のモミアゲであった
加えてそのモミアゲは
毎日かかさず手入れされているようなモミアゲであった
その人物は研究室の助手であることが判明した
いわば私の上司といってもいいであろう
4月からは毎日彼のモミアゲを見ることになる
助教授はイギリス出張中
助手はドイツ人ということから大体予想はしていたが
この研究室では英語が主に使用されるということであった
英語がわからない私の将来は暗澹たるものになると予想される
さらに研究分野は学生時代とは違う分野
しかしこのあたりは慣れればなんとかなるはずである
ともかく私は技官としての一歩を踏み出したのであった
もどろうか