公認棒


「公認棒」というものが我が家にある

なぜ所有するに至ったかは詳しくは覚えていない

ただなんとなく記憶しているのは
私が大学2年くらいのときのサークルの合宿で
朝起きたらこの「公認棒」を手にしていたということである

実に運命的な出会いであったといえる

この「公認棒」という名前は正式名称ではない

「公認棒」というのは
「公認」と書かれたシールが貼ってある
長さ1m程度の黄色の棒である





この「公認」シールの存在により
いつしかこの棒は「公認棒」と呼ばれるようになったのである

正式名称が不明であることに加えて
さらに使用法もさだかではない

要するに何もわかっていないのである

「手品に使う棒」「物干し竿」などの候補が挙がったが
「公認」マークの存在理由が不明であり
いまひとつ説得力に欠けた

しかし正式な使用法はわからずとも活躍の場は与えられた

ある時は野球のバットとして
またある時はテレビのスイッチや電灯のスイッチを
離れた場所から押すときの遠隔操作用棒などとして活躍した

上の公認棒の写真で微妙に公認棒が曲がっているのは
これで私が隣家に飛び込む大ホームランを打ったからである

こうして地味に活躍しつつも
「公認棒」の正体は判明しないまま数年の歳月が過ぎた


しかし数年後の先日
ふと公認棒を見てみると「公認」の文字の下に
「National Recreation Association of Japan」
と書かれているのに気づいた

私はこの名称をインターネットで検索してみることにした

数年前はこれをインターネットで検索しようなど考えもしなかった
ここ数年のインターネットの発展は目を見張るものがある

するとでてきた
日本名で「日本レクリエーション協会」というらしい

でてきたのは日本レクリエーション協会のホームページで
この協会はレクリエーションの普及を目指して活動している協会であり
さらにレクリエーション道具を販売していることが明らかとなった

この公認棒はレクリエーションに使用するものなのかと思い
このホームページ内をくまなく探してみた

しかし公認棒らしきものを発見することはできなかった

ただカタログを無料配送してくれるということなので
早速申し込んだ

そして数日後にそれは届いた

期待を込めてカタログを開く

数ページ目で私は衝撃を受けた

公認棒の正体がついに判明したのである





正式名称は「どんぱあ棒」
キャッチング・ザ・スティックという競技で使用されるものであった

「どんぱあ棒」はショッキングである
「ドン・パッ」のリズムだから「どんぱあ棒」である

あまりに衝撃的でやや意識がもうろうとしつつも
「キャッチング・ザ・スティック」という競技の詳細を調べてみる

日本レクリエーション協会によると
キャッチング・ザ・スティックのルールは以下のようなものらしい

用具:どんぱあ棒16本(日本レクリエーション協会公認)
競技方法(主なルール)
1. チーム10人編成で横一列に並び
  右から8人はそれぞれ右手と左手に1本ずつスティックを持つ
2. 「セーノ」のかけ声で8人が一斉に
  「トン、トン」と2本のスティックを2回打ちつけ
  打ちつけたと同時に「パッ」とスティックを離し
  素早く右側の離した2本のスティックをキャッチし
  この時点からカウントを開始する
3. 右端に出た人は、速やかに左端へ移動し
  これまでの動作を連続して繰り返し、カウントを取る
4. 1人でもキャッチミスがあれば、その時点で終了となる
5. チャレンジできる回数は3回までで
  その中の最高記録をチーム記録とする
6. チャレンジごとのメンバーの並び変えは認められ
  チャレンジ間の休憩時間は30秒以内とする




これがキャッチング・ザ・スティックという競技の模様である

1本でもショッキングな公認棒が16本集結している
それらをあやつる10名の奇人

壮観であるとしか言いようがない


このキャッチング・ザ・スティックという競技は
チャレンジ・ザ・ゲームというジャンルの競技のうちの1つらしい

チャレンジ・ザ・ゲームというのは
キャッチング・ザ・スティックのような競技を正式に行い
その得点を全国で競うというシステムである

月間および年間上位3位以上のチームには
なにかしら景品が贈呈されるらしい
全国各地でこの景品をめざして
キャッチング・ザ・スティックが行われているのである

公式記録と認められるためには以下の注意がある



公認用具を使用しなければならないのだ
これで「公認」マークが入っている理由も判明した

全ての疑問が解消され実にすがすがしい気分となった

しかしよく考えてみると
どんぱあ棒は16本セットで販売されており
16本を使用して競技が行われるため
私が1本もってきたことで
残りの15本のどんぱあ棒の存在価値がなくなっているのだ

申し訳ないとしかいいようがない

「どんぱあ棒」本来の目的で使うことができなくなった15本は
「バット」「遠隔操作用棒」などの
「公認棒」本来の目的で使われているに違いない




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