空母改造計画

空母を育てることになった

もちろんテニス的にだ

空母を人間的に育てる能力と資格は僕にはない
育ててもなんか変な生き物になるのがいいとこだろう

まあテニスを教えることになったのだ

以前から空母がしつこく教えてくれと言っていて
教えても無駄だろうが
教えずにこのままほっとくと
こんど空母と打ったときに時間の無駄になるので
ぜひ教えようということになったのだ

ひとつひとつ悪いところをなおしていくには
悪いところだらけで大変だし
いいところをのばそうにも
全くいいところがないので
このさい根本的に改造することにした

プレースタイルは一発屋のストローカー

嫌いな言葉は「一所懸命」

好きな言葉は「結果オーライ」

そういう方向に育てることにした

まあもともとその方向に進む要素はあった

その方向をめざしてフォームから何からすべて変える

人間性まで変えたいところだが
そこまでは立ち入らないことにする

僕の指導者としての方針は
「ほめ殺し教官」

少しでもうまくいくと
「おお！かっこいい！」
「飲み込みがはやいね」
などとほめてやる

ところがこれが全く信じてもらえない

ほめ言葉が悪いのか
それとも僕の演技力がないのか
よくわからないが信じてくれないのだ

しかし空母は着実にねらった方向に進んでいる

本人が信じていないだけで
実際かなりの向上が見られる

今はフォアだけだが
これからいろんな技を教えていく予定である

問題は空母が練習にくるのかということであるが
いずれにせよ今後の彼のテニスに注目である

「ほんとにこれでいいのか」
「だまされているような気がしてならない」

彼はいつもそうつぶやいている

そして首をかしげながら凄まじいショットを放っているのである



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