POINT 5
フランス語ならではの子音


 これまでは母音を中心に見てきましたが,今度は子音を見てみましょう。フランス語の子音は英語の子音の読みと似ていますが,いくつか英語ではなされない発音法があります。ここでは,この異なる子音の発音をピックアップしてみました。


S(エス),Z(ゼッド)
 「S」と「Z」は,ほぼ同じ音の子音で「ス」と読むか「ズ」と読むかの違いがあります。ただし,「S」は単体では「ス」と発音しますが,母音と母音に挟まれた場合,「ズ」と濁ります。語頭意外のたいていの場合は母音に挟まれているので,むしろ「ズ」と読む方が多いかもしれません。「Z」は基本的に「ズ」と発音します。

Example:
●S
・通常(ス)
son(ソン:音),solitude(ソリテュード:孤独),Bastille(バスティーユ)

・母音に挟まれる場合(ズ)
hasard(アザール:偶然),visage(ヴィザージュ:顔),cuisine(キュイジーヌ:料理)

●Z
・通常(ズ)
zoo(ズー:動物園),horizon(オリゾン:地平線),bronze(ブロンズ:銅)


C(セ),Ç(セ・セディーユ)
 次は「C(セ)」です。「S」が「ズ」と濁ることが多いのに対し,「C」は濁らず,「サシスセソ」の音を作ります。「Ç(セ・セディーユ)」も同じです。ただし,語頭などにアクセントの来る音(続く母音がa,u,oの場合など)では「ク」となり「カキクケコ」の音を作ります。英語のように「チ」とか「チェ」のような音を作ることはありません。

Example:
●C
・通常(ス)
ceci(スシ:これ),cent(サン:100),Nice(ニース<地名>)

・語頭にアクセントが来る場合(ク)
calendrier(カランドリエ:カレンダー),cahier(カイエ:ノート),colline(コリーヌ:丘),cuisine(キュイジーヌ:料理)

●Ç(常に「ス」)
ça(サ:それ),française(フランセーズ:フランスの)


G(ジェ),J(ジィ)
 フランス語のアルファベ(alphabet)では,「G」を「ジェ」と呼び,「J」を「ジィ」と発音します。これを英語の「G」「J」と比べてみてください。英語ではまったく反対に「ジィ」「ジェイ」と発音することがわかるでしょう。つまり,英語とフランス語は,この2つの子音に関しては,読み方がまったく逆なのです。ただ,どちらも発音的には同じで,「ja gi ju ge jo」で,「ジャ,ジィ,ジュ,ジェ,ジョ」と考えてよいでしょう。
 ただし,「G」は,後ろの母音が「ア」「オ」「ウ」の場合,つまり「ga」「go」「gu」の場合には,「ガ・ゴ・グ」と発音します。また,母音を用いず単独で用いられる場合も,「グ」となります。要するに,「G」の場合,「e」「i」というような弱母音が続く場合は「ジュ」と発音し,「a」「o」「u」のような強母音が続く場合は「グ」と発音するという特性を持っているのです。と書くと,なんだか難しそうに思えますが,これ実は英語の「G」とほとんど同じ。それほど悩むことはないでしょう。

Example:
●J(ジィ)
juillet(ジュイエ:7月),jardin(ジャルダン:庭),jaune(ジョーヌ:黄色)

●G(ジェ)
・弱母音(e,i)が後ろに続く場合(ジュ)
gens(ジャン:人々),manger(マンジェ:食べる),age(アージュ:歳),gilet(ジレ:ベスト)

・強母音(a,o,u)が後ろに続く場合(グ)
gare(ガール:駅),gomme(ゴンム:ゴム),guerre(ゲール:戦争)

・単独で用いられる場合(gr,glなどの二重母音)(グ)
aigle(エーグル:翼),grand(グラン:大きい)


H(アッシュ)
 フランス語に限らず,ラテン系の言語では「H」を発音しません。よく単語の頭に「H」が置かれていることがありますが,まったく無視して次の母音から発音しましょう。どうしてこうなったのかは諸説あるようですが,ヨーロッパ言語の「H」の音は,日本語で言う「はひふへほ」のような音ではなく,もっと喉の奥をしゃがれさせるような感じで出す音で,たとえて言うなら,くしゃみをするときの「ハクション」という音の「ハ」に近い音です(実際には「アクション」と聞こえると思います)。それくらい喉に負担がかかるということで,これが自然と消滅していったものと思われます。というわけで,フランス人は,本田(honda)さんを「オンダ」さんと,北海道(Hokkaido)を「オカイドー」と呼ぶというわけです。

Example:
●H(アッシュ:無音)
hier(イエール:昨日),habiter(アビテ:住む),Yokohama(ヨコアマ:横浜),rehabilitation(レアビリタシヨン:リハビリテーション,公務復帰)


K(カ),Q(ク)
 まず,初めに言っておきたいのは,フランス語などのラテン諸語では「K」という文字は基本的に使われません。「K」というのは,どちらかというと,ゲルマンやスラブなどの北欧諸語で使われる言葉なのです。むろん,フランス語の語彙の中にも,「K」が使われる言葉はありますが,これらは基本的に外来語と考えてよいでしょう。フランスと言っても,北はドイツに接しているわけですから,当然ゲルマン系の影響も少なからず受けているのです。
 では,フランス語で「カキクケコ」に相当する言葉がないのかというと,そうではありません。これに相当するのが「Q(ク)」なのです。ただし,「Q」は単独では用いられず,常に「QU」という形を取ります。もっと言ってしまえば,「QU」の後ろに来る母音は決まっていて,常に「e」か「u」となります。つまり,「Q」が使われる場合は,「qui(キ)」あるいは「que(ク)」,それとアクセントがついた場合の「que'(ケ)」しか存在しないことになるのです。
 では,「カ」や「コ」の音はどうするのかと言うと,前出した「ca」あるいは「co」を用います。「cu」もありますが,フランス語では「u」を「ユ」と発音するので(「ウ」ではない点に注意),「cu」と綴ると「キュ」となってしまうのです。

 ちょっとわかりづらくなってきたので,この辺で「カキクケコ」を整理してみましょう。

(ca)
(qui)
(que)
(que')
(co)

Example:
●Q(ク)
quelque chose(ケルクショーズ:何か),Monique(モニック:女性名),quitter(キテ:別れる),Qu'est-ce que c'est?(ケスクセ?:それは何ですか?)


R(エール)
 さあ,出ました。フランス語におけるもっとも取っつきづらい子音「R」の登場です。「R」はフランス語では「アール」ではなく「エール」と発音しますが,この最後の「ル」がくせ者。いわゆる「のどちんこ」の部分を鳴らすようにして,胆をはくような,いびきをかいているような感じで「ル」とも「グ」とも「フ」ともつかないような音を出します。これが「エール」の音なのです。ただし,聴いている分には,この音は「ル」とは聞こえず,「グ(フ)」というように聞こえるかと思います。ですから「エール」というよりも「エーグ」あるいは「エーフ」のほうが,本当は音的には近いのかもしれません。
 とにかくこの下品な音は,我々上品な言葉を発する日本人(笑)には少々難しいのですが,何日も「エーグ(フ)」とやっているうちに,何となくコツがつかめてくるものです。あきらめずにやってみてください。コツは,「ル」といわず,自然に出てくる「グ(フ)」の音を大事にすることです。逆にこれができるようになると,結構フランス語がうまくなったような気がするものです。下の例などを毎日練習してみてください。

Example:
●R(エール)
important(アンポル(フ)タン:重要な),printemps(プラ(ハ)ンタン:春),regarder(ル(フ)ギャル(フ)デ:眺める),Paris(パリ(ヒ))


B(ベ),D(デ),F(エフ),L(エル),M(エム),N(エンヌ)
P(ペ),T(テ),V(ヴェ),W(ドゥブルヴェ),X(イクス)

 これらの子音は,英語と読みはほとんど同じです。また,ここに含まれていない「Y(イグレック)」に関しては,フランス語では母音扱いになるので,ここでは言及しません。次のレッスンを見てください。




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