Notre-Dame de Paris(ノートルダム寺院)

ノートルダムの裏の公園。
ちょっと汚いけど,観光客も少なく
落ち着けます。
 ノートルダム寺院は,パリのちょうど真ん中。セーヌに浮かぶシテ島にあるカトリック寺院です。シテ島は,パリの中心部にあるのみならず,パリの発祥の地でもあり,そこに存在する「ノートル・ダム(我らの婦人=聖母マリア様のこと)」は,まさにパリジャンの心の中心とも言うべき存在です。

 フランスは,基本的にカトリック国ですから,教会にもヒエラルキーが存在します。もちろん,カトリックのヒエラルキーの頂点にあるのはローマのバチカン大聖堂ですが,その下に各国の中心となる教会が位置することになります。イタリアだったらミラノのドゥオーモや,フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ,ロンドンならセント・ポール,日本は目白のカトリック教会とヒエラルキーの上の方に存在する教会があるものですが,パリのこのノートルダム寺院もこのクラスに当たる由緒ある教会と言えます。

 というわけで,この界隈は,当然ながら常に観光客でごった返しています。常に,マイクを持った現地ガイドがいろいろな国の観光客を相手に声を張り上げて何事か説明しています。周りを見ればおみやげ屋さんばかりが軒を連ねており,まさに「パリの浅草」的スポットとも言えますが,それだけで終わってしまうのはあまりにももったいないというもの。時間に余裕があるなら,パリをぶらっと散歩して,歩き疲れたところで,このノートルダムに来てみるといいです。お腹が空いたら,近くのサンドウィッチ屋さんで,ジャンボン=フロマージュでも買って,ノートルダムの前の公園のベンチに座り,ぼんやりとこの寺院を眺めてみてください。この崇高なゴシック調の教会が,あなたの心をきっといやしてくれるはずです。

94年当時のノートルダム。
このときは改装工事中でした。
 日本人の我々にはなかなか分かりづらい感覚ですが,ヨーロッパの街にはあまり心休まる場所というのがありません。カフェに入るお金もないような人もたくさんいます。そして,行くあてもない外国人もパリの街にはたくさんの放浪者が住んでいるのです。そんな人たちが街をさまよって歩き疲れたとき,ふと目にする気高い教会の姿はなぜか心を休ませてくれるのです。中に入って祈りを唱えられる人はまだマシで,中には教会の中に入ることさえためらわれる浮浪者や,異教徒も多くいます。でも,そういう人でも,教会を外から眺めることは自由です。そして,外観が気高い教会ほど,心を慰められるものもないのです。教会はいたずらにファサードを豪勢にしているのではなく,こうした見た目の崇高さも神の教えとして建築に取り入れられているのです。


 そうして見ると,教会の前で物乞いをしている人の前でも少しは優しくなれるかもしれません。そういうあなたを「ノートル・ダム(我らが聖母)」が暖かく見守っていてくれるでしょう。おっといけない。少し感傷的になってしまいましたね。

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