Ope'ra Garnier(オペラ・ガルニエ)

オペラ座前の広場より,オペラ座を望む。
この場所からだととても全体が入り切りません。
それくらい巨大な建物なのです。
 パリのオペラ座と言えば、ミラノ、ウィーンと並び、世界でも3本の指に入るほど有名なオペラ座でしょう。でも、実は現在、パリにはオペラ座は新旧あわせて2つあるのです。ですから、タクシーなどに乗って「パリのオペラ座に行って下さい」と言っても、「Quell'Opera?(どっちのオペラだい?)」と返されてしまうかもしれません。もし、あなたが、いわゆる伝統的なパリのオペラ座に行きたいのであれば「A la Opera Garnier(アラ・オペラ・ガルニエ)」と言ってください。この「オペラ・ガルニエ」こそが、観光で訪れるいわゆる「パリのオペラ座」なのです。


 オペラ・ガルニエは、現在のパリ市街のちょうど真ん中あたりに位置しています。19世紀末に行われた、有名なオスマン男爵のパリ大改造の際に、ルーブル宮殿のあるあたりからまっすぐ北へ、オペラ・ガルニエへ向かう大きな直線通りができました。このため、ルーブルの北からこの道をまっすぐ北に見ると、道の左右にシンメトリックな建物が並び、その一番奥、真っ正面にオペラ・ガルニエが見えるという大スペクタクルが待っているのです。観光客にとっては、これほど素敵な景観はまたとないでしょう。日本の神社と表参道のような関係と言えばわかりやすいでしょう。
 当然ながら、参道の脇には多種多様なお土産やさんが軒を連ねることとなります。観光都市でもありながら、もともとこの手のお土産やさんが少ないパリではありますが、このオペラ座へ向かう、その名も「オペラ通り」の脇には、フランスが誇るブランド品の免税店がずらりと並んでいます。もちろん、目当ては日本人を筆頭とする観光客。パリを巡る観光ツアーでは、必ずこのあたりで2時間ほどのお買い物タイムが組み込まれているはずです。浅草の浅草寺前の仲見世とほとんど変わりません。もちろん、カフェの値段もけっこうしますので要注意。
 このような状況ですから、パリジャンは、この通りがあまり好きではないと言います。プライドの高いパリの人たちは、極度に観光化されたような場所を、「落ちぶれた場所」として忌み嫌う傾向があるのでしょう。まあ、そんなこんなでいろいろと賛否両論のオペラ通りですが、当のオペラ・ガルニエの方は、その格を落とすことはありません。前に伸びるオペラ通りを含んだその重厚なたたずまいは、世界中のオペラ座の中でも1,2をあらそう存在感。もちろんのこと、そこで上演される演目や、出演するアーティストのレベルも超一級です。2002年現在、この劇場(と言うよりパリ市全体)の音楽監督を務めているのは、韓国人のチョン・ミュンフン。彼はもうここで10年以上音楽監督を勤めているのではないでしょうか。東洋系では、日本の小澤征爾と並ぶ名指揮者として定評があります。
重厚なオペラ・ガルニエ内部。
やはり、この雰囲気がないと、
オペラを観た気にならないかも。
 ただし、このオペラ・ガルニエは、現在、基本的にバレエ専門の劇場となっています。老巧化してきたオペラ・ガルニエに代わって、10年ほど前に「オペラ・バスティーユ(新オペラ座)」が完成しました。この登場によって、パリで行われるオペラの上演は、バスティーユに移されることとなったのです。しかし、あまりにも現代的な作りのオペラ・バスティーユでは、「オペラを観たという気にならない」という意見が多かったのでしょう。もう一度、オペラ・ガルニエにオペラを引き戻そうという熱が高まり、現在ではオペラも上演されているはずです。ただし、バスティーユと違ってここで上演されるオペラのチケットを取るのは大変そうですが。


 もう1つ、オペラ・ガルニエを有名にしているものに、ロイド・ウェーバーの大ヒットミュージカル「オペラ座の怪人」があります。ストーリーは、オペラ座が舞台。この劇場の地下深くに仮面をかぶった怪人が住んでおり、彼のためにいつも5番のバルコン席が空けてあるという物語です。観光でこの劇場を訪れた人は、やはりこの5番バルコンの前まで行って、写真を撮るのでしょうね(実は僕もやりましたが(笑))。でも、実際にこの劇場に入ってみて、その荘厳さを目の当たりにすると、あのストーリーも真実みが出てきて、けっこうおもしろいですよ。

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