Qu'est-ce que Renault twingo m'impresse?
(トゥインゴファーストインプレッション)

4・ちょっと古めかしいエンジンフィーリング

 クルマといえば,やはり走りについて語らないわけにはいかないでしょう。でも,実はトゥインゴの走りに関しては,それほどほめられる点がないのです。

 トゥインゴに搭載されているエンジンは,97年までの初期モデルが1238ccのOHV,それ以降のトゥインゴ2が1148ccのOHCとなっています。後期型のほうが排気量は少ないものの,OHCになったことでエンジンパワーは上がっています。うちのトゥインゴは初期モデルの1238cc・OHVモデルなので,ここではこのエンジンについてのみその印象を語ってみます。もちろん,現行のOHCモデルはもう少しましになっていますので,その点はあらかじめご了承ください(笑)。

 OHVと言われてもピンとこない人も多いと思います。僕もよくわかってません。簡単に言えば,1世代前のエンジン駆動方式です。現代のクルマはほとんどがOHC(SOHC)あるいはその発展系であるDOHCの方式を使っているため,現代に作られたクルマとしてはかなり異質な存在ともいえます。ちなみに,OHVエンジンを搭載しているほかのクルマとしては,ローバーミニ,VWビートル,ルノー4,フィアット500などが挙げられます。要するに,古めかしくてバタバタとうるさいエンジンだと思ってください。

 このような古いエンジンをどうしてトゥインゴが採用したのか僕は知りませんが,あのファニーフェイスに,やや荒っぽいOHVエンジンというのは,ちょっと意外な感じがします。今のトゥインゴはOHCになっているので,それほど違和感を感じることなく,「ラテン系の元気なよく回るエンジン」という印象がぴったりですが,初期モデルのOHVは「元気よく」を通り越して「けっこううるさい」くらいな感じがあります。

 ただし,うるさいとは言っても,エンジンが吠えるようだとか,そういうことはありません。乗ってみると感じると思いますが,トゥインゴのOHVエンジンはエンジン音はかなり軽やかで「ウィーン!」というようなモーターっぽい音を出して回転していきます。これはこれでとてもナイスな感じなんですが,問題はアイドリング時の振動で,これがステアリングなどを通してブルブルブルブルと小刻みに震えるのです。走っているときは問題ないんですが,停止時にはステアリングを握っていたくないほど振動が伝わってくるので,この点はかなり不満があります。うちの89年式パンダですら,これほど振動したことはありません。最初に試乗したOHCの現行トゥインゴでは気にならなかったので,きっとこの現象は古いOHVエンジンにのみ起こりうる現象なんだと思います。

 この点をのぞけば,トゥインゴのOHVエンジンは,現代のクルマが失ってしまったラテン系のうるさくも楽しい高回転エンジンです。この点は現行トゥインゴのOHCエンジンにも引き継がれていて,十分に楽しくて素直なエンジンフィーリングを持っています。かつてのルノー4などが持っていた,そして今のプジョーやルノーの小型車が失ってしまったフィーリングがここに残されていると言うこともできるでしょう。特にOHVならその感覚をより深く味わうことができるはずです。


トゥインゴのエンジンルーム。
ものすごく小さいスペースに小さなOHVエンジンが押し込められています。

 ただし,トゥインゴのエンジンには僕はいまひとつ満足できない点があります。それは加速の鈍さと坂道でのパワーです。トゥインゴのエンジンは,OHVで1200ccクラス,OHCで1100ccクラスですから,1000ccクラスの国産車や外車と比べても,ひとまわり大きなクラスのエンジンを搭載していることになります。パンダでも,旧式の1000ccと,マイナーチェンジ後の1100ccではその力強さにおいて,かなりの違いがありますので,このクラスの100ccというのはバカにできない数値なのです。

 でも,トゥインゴのエンジンはハッキリ言って非力です。トゥインゴのミッションは5速ですが,ラテン系の多分に漏れず高回転型のエンジンは,時速50kmを超えるあたりから5速を使用するようになります。また,坂道では2速でないと登れません。かといってトルクがそれほど太いわけでもなく,車体が重いわけではないのに,1速からの加速はのんびりとしています。信号待ちなどでのスタートダッシュでは,小型車なのに必ず出遅れます。一言で言うなら,トルクのない非力なエンジンなのです。

 でも,トゥインゴのエンジンにもいいところはあります。それは平地での3速・4速あたりの加速感です。もともとタフな山道などでの使用を前提として作られていないらしく,山道などではその非力さを見せつけられるエンジンも,平地でのいわゆる実用的な速度域では,その力を存分に発揮します。さすがにストップ&ゴーの多い都心部ではトルクの強い国産車やドイツ車にかないませんが,一度走り始めて加速がつき始めたらトゥインゴはたちまち弾丸のごとく突っ走り始めます。その加速感は,車重をスピードに乗せて加速するという,まったく基本的な慣性の法則に基づいたものという感じがします。

 これがどういうわけなのか考えると,自然とトゥインゴの車体設計が思い浮かんできます。トゥインゴの場合は,車内空間を広くとるために,エンジンを車体の最前部にコンパクトに収めています。つまり,フロント部分にウェイトのほとんどが集中しているわけで,クルマにのってあまりいい重量配分とは思えません。しかし,これを逆手に取って,フロントの重さを進行方向への速度に乗せていくことで,そこには慣性が生まれ,スピードも軽やかにアップしていきます。そのため,非力なエンジンでも一度スピードに乗せてしまえば,あとはそれほどアクセルをふかさなくても,自然とすうーっと加速していくという,ほかではなかなかえられない加速感が味わえるのかもしれません。そのかわり坂道を登るときはまったくこれが効かないため,加速も自ずから遅くなってしまうのでしょう。でも下りは本当に早いです。フロントの重量が一気に下り方向に向かっていくのですから当然かもしれません。

 以上は,まったくの僕の推測にすぎませんが,トゥインゴのエンジンフィーリングとはざっとこんなものです。イタ車のように熱くパワフルに回るわけでもなく,ドイツ車のように重厚にトルクフルに回るわけでもなく,高回転でしかもトルクがないという,あまりいいエンジンじゃないのかもしれません。でも,こういうわけで,トゥインゴに乗っていると,町中での加速などで何とも言えない快感を味わうことができます。山道には弱いですが,街乗りには最高。まさにパリジャンの使うスモールカーなのです。


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