●CINEMA(映画)

監督 マイケル・ラドフォード:出演 マッシモ・トロイージ,フィリップ・ノワレほか
「IL POSTINO」(イル・ポスティーノ:郵便屋)
(1995 MILAMAX INTERNATIONAL)
 いまさらなんですが,これはぜひとも紹介しておかなくてはいけない作品です。映画館上映はもう3年ほど前の話ですが,とにかく単館ロードショーだったので,まだ見ていない人も多いでしょう。今はビデオ化されているので,ぜひ見てください。絶対泣けます。
 さて,この作品は,ナポリ近郊の小さな島に生まれたマリオ(マッシモ・トロイージ)と,世界的に有名なコミュニスト系詩人のパブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)との交流の物語である。ネルーダは故国チリから政治的に迫害され,この小さな島に転がり込んできた。そこへ,自転車を持っていたことから郵便配達夫(ポスティーノ)になったマリオが頻繁に訪れるようになり,2人の間に交流が深まっていくようになる。詩人はマリオに詩を教え,マリオはその詩を恋人ベアトリーチェに向けてゆく。そして…。  ああ,もうどんなに語っても言葉が陳腐に思えてきてしまう。とにかく見てほしい。主演のマッシモ・トロイージはコメディ俳優だが,この作品を撮影してこの世を去った。彼の演技とも思えない演技と哀愁を帯びたその表情だけでももう泣ける。それに,名優フィリップ・ノワレの渋い演技も本当にいい。生のナポレターノ(ナポリ方言)を勉強するいい題材でもある(多分普通の日本人には聞き取れないはず)。
 「ニューシネマパラダイス」を見てもなにかピンとこなかったあなた。これこそが本当のイタリアなんですよ。夢とか郷愁だけでは語れないイタリア南部の哀愁と温かさがこの映画には溢れている。マッシモが送ってくれた最大のプレゼントといっても,それはあながち嘘ではないはず。とにかく見よう!
(Febbraio/27/2000)


監督・主演:ロベルト・ベニーニ
「LA VITA E BELLA」("LIFE IS BEAUTIFUL" ライフ・イズ・ビューティフル)
(1998 MILAMAX INTERNATIONAL)
 1999年のアカデミー賞3部門(主演男優賞/外国語映画賞/作曲賞(ドラマ部門))に輝いたことでも記憶に新しいイタリア映画。監督・脚本・主演とすべてをコメディ俳優,ロベルト・ベニーニが行った,彼の芸術の集大成ともいえる作品です。
 話としては,第二次大戦前から戦中にかけてのイタリアで行われたユダヤ人収容所のお話で,まあそれだけ聞いてもヘビーな感じを受けるかもしれません。でも,この作品は全体を通して明るいコメディムードで語られており,戦争映画などにありがちな悲壮感はあまり感じません。ベニーニ扮する主人公のグイドは,いっしょに収容された息子と最愛の妻を守るため,1つの大きな芝居を演じます。この内容は見てのお楽しみなのですが,やがて戦争が終わり,ラストシーンで息子が叫ぶ「Abbiamo Vinto!(アッビアーモ・ビント!:僕たちは勝ったよ!)」というセリフを聞いた瞬間,僕の目からはどおーっと涙が流れてしまいました。映画で泣いたのは本当に久しぶりです。今でもこの場面を思い出すと目頭が熱くなります。このセリフの重さはとうてい言葉では言い表せません。とにかく見てください。
 見所はやはり主演のロベルト・ベニーニの演技でしょう。なんでも「イタリアのチャップリン」とかいわれているようですが,ある意味で彼の演技は本当にイタリア的です。見る人によっては「やりすぎ」とも言われそうな大げさな演技ですが,それが逆に裏腹な切なさや悲しみを増幅させてくれるのです。イタリア映画が好きじゃない人でも十分に楽しめる映画で,最後には絶対に泣けるはずです。「IL POSTINO」と並んで,僕の永遠のお気に入り映画となりました。
(Marzo/1/2000)


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