STEP3
名詞と形容詞を組み合わせれば何だって表現できる!
〜イタリア語・文法編3〜

STEP2で名詞の使い方をマスターしたら,
今度は形容詞を組み合わせましょう。
名詞とそれを形容する形容詞を組み合わせるだけで
イタリア語の表現できる世界がぐんと広がるはずです。


形容詞は名詞の後に付くのがキホン

 イタリア語の形容詞は基本的には修飾する名詞の後に付きます。これはフランス語,スペイン語などロマンス語系の言語に共通する特徴で,英語などゲルマン系の言語と異なるところです。たとえば「白い山」という言葉を英語であらわすと「white mountain(ホワイト・マウンテン)」となりますが,イタリア語では「山」を意味する「monte(モンテ)」と,「白い」を意味する「bianco(ビアンコ)」を組みあわせて「monte bianco(モンテ・ビアンコ)」となります。ちなみにモンテ・ビアンコとはフランス語で言う「モン・ブラン(白い山)」で,同じ山のことを指します。

■「名詞+形容詞」の例
casa(家)+ bianca(白い)casa bianca(カーザ・ビアンカ:白い家)
acqua(水)+ gasata(ガス入りの)acqua gasata(アクア・ガサータ:炭酸水)
ufficcio(会社・役場)+ postale(郵便の)ufficcio postale(郵便局)
risotto(リゾット)+ milanese(ミラノの)risotto milanese(ミラノ風リゾット)

 ただし,例外も幾つかあります。一般的に言って短い形容詞や,あるいはよく使う決まり文句に関しては,形容詞が名詞の前に来ることもあります。でも,これを使うのはほんの一部ですので,よく使うものに関しては覚えてしまったほうが楽です。

■「形容詞+名詞」のパターンになるもの
・buon(良い),male(悪い)など性質を表す一部の形容詞
 buon giorno(良い日),male cose(悪いこと)など
・grande(gran)(大きい),piccolo(小さい)などの大きさを表す一部の形容詞
 gran hotel(大きいホテル),piccola orquesta(小さなオーケストラ)
・uno,due,tre...など数を表す形容詞
 uno pomodoro(1コのトマト),due ragazzi(2人の子供)


形容詞は名詞の性・数によって変化する

 名詞のところで,名詞は性と数によって語尾が変化すると書きましたが,形容詞にもまったく同じことが当てはまります。ただし,形容詞は単独で性・数を持っているわけではなく,あくまでも名詞の性・数にあわせて変化するというのが特徴です。
 と言うと,何だか難しそうですが,形容詞の語尾変化は名詞のそれとまったく同じなので,心配はいりません。例を見てもらえば分かるのですが,イタリア語は「名詞+形容詞」という順番で単語が並ぶので,先に発音する名詞の語尾変化に形容詞も音をあわせていけばいいというだけの話なのです。
 では,例を見てみましょう。

■形容詞は名詞の性・数にあわせて変化する
●男性名詞・単数(例:tempo)
 tempo(時間)+ libero(自由な)→ tempo libero(自由な時間)
●女性名詞・単数(例:casa)
 casa(家)+ bianco(白い)→ casa bianca(白い家)
●男性名詞・複数(例:ragazzi)
 ragazzi(子供たち)+ italiano(イタリアの)→ ragazzi italiani(イタリアの子供たち)
●女性名詞・複数(例:macchina)
 macchine(車たち)+ classico(クラシックの)→ macchine classiche(クラシックカーたち)

 例を見れば分かるかと思いますが,基本的に形容詞の語尾変化は,名詞の語尾変化に音をあわせていくだけでいいのでとても簡単です。要するに,名詞の最後が「オ」で終われば形容詞の最後も「オ」で終わる。「ア」で終われば,形容詞の最後も「ア」で終わる。というように,名詞と形容詞の語尾で韻を踏んでいけばいいのですイタリア語のリズムがテンポよく聞こえるのは,実はこうした韻を踏む音の変化があるからなのです。

 これに,さらに冠詞をつけると,そのリズミカルな音がよく分かるようになります。

■イタリア語は「冠詞+名詞+形容詞」で同じ韻を踏む
il tempo libero
la casa bianca
i ragazzi italiani
le macchine classiche

 口に出して発音してみると,何とも簡単にそして直感的に頭に入ってくるかと思います。言葉というのは理屈と音でできていますが,この理屈と音が絶妙にマッチしているのが,イタリア語なのです。「冠詞+名詞+形容詞」でほぼ同一の語尾を持っているという言語はそうないと思います。この韻の感じさえ頭と耳にたたき込んでしまえば,もうイタリア語の初歩は卒業と言ってもいいかもしれません。


名詞と形容詞を覚えたら「essere」もついでに覚えよう

 名詞と形容詞を覚えればたいていの現象や事物の説明が行えるようになります。あとはボキャブラリーを増やしていけば,とりあえず「晴れた空(il cielo sereno)」とか「大きい人(il grande uomo)」「黒い瞳(gli occhi neri)」「日本の女の子たち(le ragazze giaponese)」みたいなことはイタリア語で言えるようになるはずです。  ここまで来たら,ついでに英語のbe動詞にあたる「essere(エッセレ)」まで覚えてしまいましょう。essereという動詞を覚えるだけで,「名詞+essere+形容詞」といういちばん単純な構文が作れるようになります。1つの動詞を覚えるだけで,構文が作れるようになるのですから,覚えない手はありませんね。これだけで,ずいぶんイタリア語が上達した気になれるはずです。

 では,essereの活用を見てみましょう。

1人称単数sono(ソノ)1人称複数siamo(シアーモ)
2人称単数sei(セイ)2人称複数siete(シエーテ)
3人称単数e`(エ)3人称複数sono(ソノ)

 これは,essereの現在形の活用です。まずは,この活用を頭にたたき込んでください。もし,そんなに覚えられないというなら,3人称単数の「e`(エ)」だけでも覚えましょう。3人称単数というのは,いわゆる「モノ」の単数形ですから,応用範囲が広いのです。essereの活用ではこの「e`」を使う機会が圧倒的に多いので,まずはここから覚えましょう。例を見てみます。

Il cane e` carino.(その犬はかわいい)
L'italiano e` sinpatico.(イタリア人は好感がもてる)
La casa e` grande.(その家は大きい)
La donna e` bella.(あの女の人はきれいだ)

 「e`」という1個の活用を覚えただけでずいぶんいろんな表現ができますね。言うまでもありませんが,この文型のポイントは,「A e` B」とした場合,「A=B」になることです。つまり,Aという主語はBの形容詞の状態である,ということです。このとき,主語の名詞と,修飾する形容詞の性と数も一致していなくてはなりません。ですから,たとえば最後の「La donna e` bella.(あの女の人はきれいだ)」という文も,主語を男性名詞に置き換えると「Il paese e` bello.(その国はきれいだ)」と形容詞の性も変化するのです。

 それでは,ついでに3人称複数の活用「sono」も覚えてしまいましょう。

I cani sono carini.(その犬たちはかわいい)
L'italiani sono sinpatici.(あのイタリア人たちは好感がもてる)
Le case sono grande.(その家たちは大きい)
Le donne sono belle.(あの女の人たちはきれいだ)

 さきほどの例の文章を複数形に変えてみました。sonoをはさんで,主語と形容詞の性・数が一致して変化していることが分かるかと思います。
 語尾変化をともなうので,ちょっと難しいかもしれませんが,この場合もリズムが大事です。「i cani」と始まったら,最後の語尾変化も「i」で終わるというような一種の慣れができてしまえば,とっても簡単です。ぜひ,何度も口に出して覚えてしまいましょう。


形容詞を強調したいときは「molto」をつける

 形容詞の度合いを表すときに,英語なら単語の前に「very」をつけて強調します。この「very」に当たるイタリア語が「molto(モルト)」です。使い方は英語のveryとまったく同じで,通常は形容詞の前につけて使います。

■moltoを使った強調の例
bene(ベーネ:良い)molto bene(モルト・ベーネ:とても良い)
importante(インポルタンテ:重要な)molto importante(モルト・インポルタンテ:とても重要な)
caldo(カルド:熱い)molto/ caldo(モルト・カルド:とても熱い)
vecchio(ヴェッキオ:古い)molto vecchio(モルト・ヴェッキオ:とても古い)

 これはこれで簡単なのですが,実はイタリア語にはこのほかにもいろいろと形容詞の程度を表す言い方があります。その中でもmoltoと並んでよく使われるのが,語尾の母音を取って「-issimo(-イッシモ)」をつけるやり方です。ちなみにこの場合の女性形は「-issima(-イッシマ)」になります。よく参考書などでは「-issimo」を最上級として扱っていますが,単独で使う場合には「molto」とほぼ同義だと考えていいと思います。音楽で使う「fortessimo(フォルティッシモ:とても強い)」「pianissimo(ピアニッシモ:とても弱い)」もこれを使った表現です。

■-issimoを使った強調の例
bene(ベーネ:良い)benissiomo(a)(ベニッシモ(マ):とても良い)
importante(インポルタンテ:重要な)importantissimo(a)(インポルタンティッシモ(マ):とても重要な)
caldo(カルド:熱い)caldissimo(a)(カルディッシモ(マ):とても熱い)
vecchio(ヴェッキオ:古い)vecchissimo(a)(ヴェッキッシモ(マ):とても古い)
forte(フォルテ:強い)fortissimo(a)(フォルティッシモ:とても強い)
piano(ピアノ:弱い,やさしい)pianissimo(a)(ピアニッシモ:とても弱い)
bravo(ブラーヴォ:すごい,えらい)bravissimo(a)(ブラヴィッシモ(マ):とてもすごい,とてもえらい)
bello(ベッロ:きれい)bellisimo(a)(ベリッシマ(マ):とてもきれい)


次回はSTEP 4のレッスンです
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