まずは基本となる「avere」の活用を覚えよう。
イタリア語は,よく動詞の活用が複雑で難しいと言われます。
名詞や形容詞はある程度慣れてしまえば,簡単に語尾を活用させられるものですが,動詞となると人称のほかにも時制によって活用が変化します。そのうえ,英語などにはない条件法や接続法といった面倒くさい活用まで出てきて,英語に慣れ親しんだ日本人は混乱するばかり。1つの動詞について50通り以上の活用があるのですから,それはびっくりしてしまうことでしょう。
でも,ご安心を。確かにイタリア語の動詞体型は複雑ですが,何もそのすべてを覚える必要はないのです。せいぜいが,現在形と複合過去に単純過去,あとは未来形と条件法くらいマスターしておけば,たいていの用は足りてしまいます。
そして,何よりイタリア語の動詞の語尾変化はすべての動詞で同じなので,ワンパターンを覚えてしまえば,ほぼすべての動詞に応用できてしまうのです。そう考えると,せいぜいが30パターンくらいの変化を覚えるだけで,動詞のほぼすべてを網羅できてしまうことになります。不規則変化の多い英語よりはずっと親しみやすいはずなのです。
このことを頭に置いて,まずは,英語のhaveに当たる「avere(アヴェーレ:持つ)」という動詞の現在形の変化を見てみることにしましょう。この動詞はなにかにつけて使われるほか,すべての動詞の活用の基礎ともなる動詞ですから,ぜひ現在形の活用だけでも口に出して覚えてしまいましょう。
avere(アヴェーレ:持つ)
io | ho(オ) | 私は持つ |
tu | hai(アイ) | 君は持つ |
lui / lei | ha(ア) | 彼/彼女は持つ |
noi | abbiamo(アッビアーモ) | 私たちは持つ |
voi | avete(アヴェーテ) | あなたたちは持つ |
loro | hanno(アンノ) | 彼ら/彼女らは持つ |
発音の仕方はLEZZIONE4で見たとおりで,「h(アッカ)」の音は発音しないことを頭に入れれば,すんなり発音できるはずです。なお,1人称複数のnoiだけが「av」ではなく「abb」となっていますが,これは特殊な例で,発音上の問題からこうなっています。
一通り覚えてしまったら,ほかの動詞の活用を見てみましょう。
cantare(カンターレ:歌う)
io | canto(カント) | 私は歌う |
tu | canti(カンティ) | 君は歌う |
lui / lei | canta(カンタ) | 彼/彼女は歌う |
noi | cantiamo(カンティアーモ) | 私たちは歌う |
voi | cantate(カンターテ) | あなたたちは歌う |
loro | cantano(カンタノ) | 彼ら/彼女らは歌う |
ここまで発音してみると,avereとcantareの間には共通する音があることに気がつくはずです。その部分だけを抜き出してみるとこうなります。
io | -o(−オ) |
tu | -i(−イ) |
lui / lei | -a(−ア) |
noi | -(i)amo(−(イ)アーモ) |
voi | -e(a,i)te(−エ(ア,イ)ーテ) |
loro | -a(o)no(−ア(オ)ノ) |
これが,イタリア語の動詞の現在形に共通する語尾変化なのです。この規則は,英語のbe動詞に当たるessere(エッセレ)以外のすべての動詞に当てはまる規則です。つまりは,この6つの語尾変化さえ何度か口に出して覚えてしまえば,イタリア語の動詞・現在形の変化はマスターしたも同然ということになります。
なお,イタリア語では特別のことがない限り,主語にあたる人称代名詞を省略しますので,実際には単に「ho 〜」や「canta 〜」だけで人称を区別することになります。例を見てみましょう。
Ho la mia macchina.(オ・ラ・ミア・マッキナ:私は自分の車を持っている。)
Hai la cigarette? (アイ・ラ・シガレッテ?:タバコ持ってる?)
Ha fame? (ア・ファーメ?:おなかがすきましたか?)
Abbiamo coraggio!(アッビアーモ・コラッジョ!:元気を出そう!)
Avete passaporti?(アヴェーテ・パッサポルティ?:パスポートは持ってる?)
Hanno gli zaini.(アンノ・レ・ザイニ:彼らはリュックを背負っている。)
イタリア語の動詞は「-ARE」,「-IRE」,「-ERE」の3種類
この変化を一通り覚えたら,次の動詞を活用させてみてください。
1 amare(アマーレ:好む,愛する)
2 sentire(センティーレ:感じる,聞く)
3 vedere(ヴェデーレ:見る)
これらの動詞を活用させる際に重要なのは,その動詞の原形(不定形)の中から,変化しない部分を見極めることです。実は,ここに挙げた3つの動詞は,それぞれが異なった語尾を持っています。1は「-are(アーレ)」で終わっているので「-are(アーレ)動詞」と呼ばれています。同様にして,2は「-ire(イーレ)」で終わっている「-ire(イーレ)動詞」,3は「-ere(エーレ)」で終わっているため「-ere(エーレ)動詞」と呼ばれています。
イタリア語の動詞は,大きく分けてこの3種類で成り立っていますが,要するにこれらの-are,-ire,-ereといったそれぞれの語尾を取り去った部分が変化しない部分になるわけです。ですから,1のamareの場合なら「amare - are = am」,2のsentireは「sentire - ire = sent」,3のvedereは「vedere - ere = ved」がそれぞれ変化しない部分になります。ちょっとややこしいと思うかもしれませんが,実はこんなことをいちいち考える必要はありません。イタリア語の動詞に少し慣れれば,こんなことは自然と分かるようになります。それでは,この変化しない部分にさきほどの活用語尾をつけて活用させてみましょう。
1 -ARE動詞の活用例:amare(amが基幹部分)
io | amo | アーモ |
tu | ami | アーミ |
lui /lei | ama | アーマ |
noi | amiamo | アミアーモ |
voi | amate | アマーテ |
loro | amano | アーマノ |
2 -IRE動詞の活用例:sentire(sentが基幹部分)
io | sento | セント |
tu | senti | センティ |
lui /lei | senta | センタ |
noi | sentiamo | センティアーモ |
voi | sentite | センティーテ |
loro | sentono | セントノ |
3 -ERE動詞の活用例:vedere(vedが基幹部分)
io | vedo | ヴェード |
tu | vedi | ヴェーディ |
lui / lei | veda | ヴェーダ |
noi | vediamo | ヴェディアーモ |
voi | vedete | ヴェデーテ |
loro | vedono | ヴェードノ |
このパターンを何度も繰り返し発音しているうちに,イタリア語の動詞の活用形がなんとなく分かってきたかと思います。ここまで来れば分かるかと思いますが,イタリア語の現在形の語尾はほぼすべての動詞で共通の形を持っています。ですから,たった6つのパターンを覚えてしまえば,あとは応用でどうとでもなってしまうのです。辞書で動詞を調べたら,試しに一通り声に出して活用させてみてください。そうすれば,動詞の活用なんて本当にすらすらと出てくるようになりますよ。