STEP6
過去形をマスターすれば,たいていのことは言い表せる。
〜イタリア語・文法編6〜

イタリア語の動詞の時制は複雑ですが,
実際に使用するのは,現在・2種類の過去・未来の計4種です。
このうち,もっとも基本的な現在形に関してはこれまでに見てきた通り。
あと2種類の過去形さえマスターすれば,
ほとんどの動詞表現が可能になるといっても過言ではないのです。
さあ,あと少しがんばってマスターしましょう。


まずは「Avere」の活用をおさらいしよう。

 イタリア語には大きく分けて2種類の過去があります。その1つは,通常の過去を示す「近過去」,もう1つが過去の状態や習慣などを表す「半過去」です(そのほかの過去時制はほとんど使用しません)。この2つの過去の違いは,初めのうちなかなか理解するのが難しいかもしれません。しかし,一般に過去を表すもっとも単純な方法は近過去になるので,まずはこれを基本として覚えることにしましょう。

 近過去とは,「持つ」という意味の動詞「avere(アヴェーレ)」過去分詞を組み合わせて使うところからこう呼ばれます。ちょうど英語の「have」を用いた過去形と同じように,「avere+過去分詞」という形で作り出されます。ただし,英語の近過去が「〜してしまった」とか「〜したことがある」といった完了・経験などを表すのに対し,イタリア語の近過去は単純に「〜した」という過去の事実を述べるだけです。このあたりは,英語とイタリア語でまったく逆と言ってもいいかもしれません。

 では,まずは近過去に組み合わせられる「avere」の活用をもう一度おさらいしてみましょう。

avere(アヴェーレ:持つ)

io ho(オ) 私は持つ
tu hai(アイ) 君は持つ
lui / lei ha(ア) 彼/彼女は持つ
noi abbiamo(アッビアーモ) 私たちは持つ
voi avete(アヴェーテ) あなたたちは持つ
loro hanno(アンノ) 彼ら/彼女らは持つ

 このようにavereは過去形を作り出す上でひんぱんに使われる動詞なので,かならずその活用を頭に叩き込んでおくようにしなくてはなりません。


過去分詞は,動詞の語尾を「-to」に変える

 それでは,次に,過去分詞の作り方について見てみます。

 過去分詞の作り方は非常に単純です。基本的には,動詞の無活用部分,たとえば「mangiare(マンジャーレ:食べる)」なら,語尾のareを取った「mangia(マンジャ)」がそれに当たります。現在形の場合と違って,最後に母音の「a」がくっついてきますが,これは単純に音の問題だと思ってください。あとは,これに過去分詞を示す「-to」をつけるだけで過去分詞はできあがります。ですから,「mangia」+「-to」で「mangiato(マンジャート)」が,「mangiare」の過去分詞ということになるのです。

 この法則に従って,以下の動詞を過去分詞に変えるとこうなります。

1・cantare(カンターレ:歌う) cantato(カンタート)
2・finire(フィニーレ:終える) finito(フィニート)
3・vedere(ヴェデーレ:見る) visto(ヴィスト)

 このうち3の「vedere」は「vedeto」でなく「visto」となっていますね。このように,特殊な形を持つものもあるので注意しましょう。これも口に出しているうちに知らず知らず覚えてしまうものです。基本的にイタリア語の過去分詞はこのように単純なものです。


avereと過去分詞を組み合わせて近過去を作り出そう

 ここまでマスターできれば,近過去を作り出すのは簡単です。文系は「avere+過去分詞」という形で組み立てられ,活用するのはavereの部分のみです。英語のhaveを使った過去完了形とまったく同じような活用をするといえばわかりやすいでしょう。

mangiare(マンジャーレ:食べる)の近過去活用

Ho mangiato il gelato. (オ・マンジャート・イル・ジェラート) 私はアイスを食べた。
Hai mangiato il gelato. (アイ・マンジャート・イル・ジェラート) 君はアイスを食べた。
Ha mangiato il gelato. (ア・マンジャート・イル・ジェラート) 彼/彼女/あなたはアイスを食べた。
Abbiamo mangiato il gelato. (アッビアーモ・マンジャート・イル・ジェラート) 私たちはアイスを食べた。
Avete mangiato il gelato. (アヴェーテ・マンジャート・イル・ジェラート) あなたがたはアイスを食べた。
Hanno mangiato il gelato. (アンノ・マンジャート・イル・ジェラート) 彼らはアイスを食べた。

 どうですか。とても簡単でしょ。これを使えば,簡単な日記くらいはすぐに書けるようになりますよね。近過去を使った日記を下に書いてみるので,参考にこれを読んでみてください。

Stamattina, ho fatto la prima colazzione a 8 ore. Ho mangiato le pane con un cappucino. Sono partito all'ufficio alle 9. Ho lavorato per 8 ore. Dopo il lavoro, sono andato al bar con il mio amico. E poi ho tornato a casa alle 6. A casa, ho fatto la cena con la mia famiglia.

 これくらいの文ならおおよそ意味がわかるようになったかと思います。この文章は日記なので,すべて1人称単数形で書かれています。ですから,活用はすべて「ho+過去分詞」という形のはずですが,中にはいくつか「sono+過去分詞」というものも出てきました。ここで思い出してほしいのですが,「sono」というのは,イタリア語のbe動詞に当たる「essere(エッセレ)」という動詞の1人称単数形です。つまり,近過去形を作る動詞には「avere」のほかに「essere」もあるのです。これはこのあと説明しますが,ほとんどの場合,近過去ははavereを使用し,essereは特殊な場合のみ使用すると覚えておくとよいでしょう。


移動を表す過去形にはessereを使う

 では,近過去を作る際,どういうときに「essere」を使うのでしょう。一言で言うなら,「移動」の概念を示す動詞のみにessereを使用します。移動の概念を示す動詞とは,「andare(アンダーレ:行く)」,「venire(ヴェニーレ:来る)」,「partire(パルティーレ:出発する)」,「arrivare(アッリヴァーレ:着く)」,「salire(サリーレ:上がる)」,「scendere(シェンデレ:下がる)」,「stare(スターレ:とどまる,〜の状態である)」などです。このほか,「nascere(ナッシェレ:生まれる)」「morire(モリーレ:死ぬ)」もこの世からの移動と考えられるので,過去形には「essere」を使います。andareやvenire,stareはよく使う動詞なので,過去形を作るときにはかならずessereを使うと覚えておく必要がありますが,そのほかはあまり使わないので,頭の片隅に「移動はessere」と覚えておけば大丈夫です。

 では,essereの活用のおさらいも含めて,andareの過去活用を見てみましょう。

andare(アンダーレ:行く)の近過去活用

Sono andato a scuola. (ソノ・アンダート・ア・スクオーラ) 私は学校に行った。
Sei andato a scuola. (セイ・アンダート・ア・スクオーラ) 君は学校に行った。
E andato a scuola. (エ・アンダート・ア・スクオーラ) 彼/彼女/あなたは学校に行った。
Siamo andato a scuola. (シアーモ・アンダート・ア・スクオーラ) 私たちは学校に行った。
Siete andato a scuola. (シエーテ・アンダート・ア・スクオーラ) 君たちは学校に行った。
Sono andato a scuola. (ソノ・アンダート・ア・スクオーラ) 彼ら/彼女らは学校に行った。

 基本的には,avereを使った複合形と同じで「essere」だけを活用させ,あとに過去分詞をつなげるだけと簡単です。

 ただし,essereを使用する際には,過去分詞は形容詞と同様に扱われるので,性数を一致させなくてはなりません。ですから,たとえば女性が主語だった場合は,過去分詞も「andata」と語尾が「-ta」に変化します。また,主語が複数である場合には「andati」「andate」と形容詞同様に性数の語尾変化が起こりますので,注意しましょう。

essereを使った近過去は性数が主語と一致する

Sono andata a scuola. (ソノ・アンダータ・ア・スクオーラ) 私は学校に行った(主語が女性の場合)。
Siamo andati a scuola. (シアーモ・アンダーティ・ア・スクオーラ) 僕たちは学校に行った。
Sono andate a scuola. (ソノ・アンダーテ・ア・スクオーラ) 彼女たちは学校に行った。

次はSTEP7のレッスンです。


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