2種類ある過去形のうち,半過去(単純過去)は,その名の通り活用が非常に単純。
1パターンさえ覚えてしまえば,どんな動詞にだって活用できます。
前レッスンで覚えた近過去と,この半過去を使い分ければ,
過去に起こった出来事は,ほぼすべて表現できることになります。
さあ,過去動詞の後半も,張り切ってマスターしましょう。
過去の継続,状態を表す「半過去」
前のレッスンでは,日常会話で使われるイタリア語の過去には2種類あるといいました。そのうちの基本的な過去が先に見た近過去ですが,もう1つ「半過去」というものが過去形には存在します。英語にも,ふつうの過去形と過去完了形(have+過去分詞)があるように,イタリア語をはじめとするロマンス語系の言語にも,2種類の過去があるのです。本当は,小説などで使われる「大過去」などさらに多くの過去時制があるのですが,日常会話ではほとんど使われないので,ここでは無視します。
半過去の用法を一言でいうなら,「過去における時間の継続性」を意味する過去系です。つまり,近過去が過去のある1点を指すのに対し,半過去では過去のある期間中続いていた行為を指すわけです。時間の流れを線で表すなら,近過去が点,半過去が線ということになるのです。具体的な例をあげると,「〜していた」とか「〜の状態だった」というようなニュアンスの場合には,近過去ではなく半過去を使います。参考書などでは,「継続」「反復」「過去の状態」などと書かれていると思いますが,要するに,過去の1点ではない状態を示す場合は半過去を使うというふうに覚えておけばいいでしょう。
では,半過去の活用を見てみましょう。半過去の活用はどの動詞でも同じ活用形を示すところに特徴があります。つまり,1パターンの活用さえ覚えてしまえば,-ARE動詞だろうが,-ERE動詞だろうが,-IRE動詞だろうが,どの動詞でも当てはめることができるのです。けっこう簡単ですね。まずは,基本となるavereの活用を見てみましょう。
avere(アヴェーレ:持つ)の半過去活用
Avevo | (アヴェーヴォ) | 私は持つ |
Avevi | (アヴェーヴィ) | 君は持つ |
Aveva | (アヴェーヴァ) | 彼/彼女/あなたは持つ |
Avevamo | (アヴェヴァーモ) | 私たちは持つ |
Avevate | (アヴェヴァーテ) | あなたたちは持つ |
Avevano | (アヴェーヴァノ) | 彼らは持つ |
avereの基幹であるavという部分を核に,うしろの部分が活用しています。この活用はほかの動詞でもまったく同じです。つまり「-evo,-evi,-eva,-evamo,-evate,-evano」という活用を音で覚えてしまえば,これほど簡単な時制もないくらいです。では,-ARE動詞と-IRE動詞も見てみましょう。
■ARE動詞
mangiare(マンジャーレ:食べる)の半過去活用
Mangiavo le paste | (マンジャーヴォ・レ・パステ) | 私はパスタを食べていました。 |
Mangiavi le paste | (マンジャーヴィ・レ・パステ) | 君はパスタを食べていました。 |
Mangiava le paste | (マンジャーヴァ・レ・パステ) | 彼/彼女/あなたはパスタを食べていました。 |
Mangiavamo le paste | (マンジャヴァーモ・レ・パステ) | 私たちはパスタを食べていました。 |
Magiavate le paste | (マンジャヴァーテ・レ・パステ) | あなたたちはパスタを食べていました。 |
Mangiavano le paste | (マンジャーヴァノ・レ・パステ | )彼らはパスタを食べていました。 |
■IRE動詞
sentire(センティーレ:感じる)の半過去活用
Sentivo la sua voce. | (センティーヴォ・ラ・スア・ヴォーチェ) | 私はその声を聞いていました。 |
Sentivi la sua voce. | (センティーヴィ・ラ・スア・ヴォーチェ) | 君はその声を聞いていました。 |
Sentiva la sua voce. | (センティーヴァ・ラ・スア・ヴォーチェ) | 彼/彼女/あなたはその声を聞いていました。 |
Sentivamo la sua voce. | (センティヴァーモ・ラ・スア・ヴォーチェ) | 私たちはその声を聞いていました。 |
Sentivate la sua voce. | (センティヴァーテ・ラ・スア・ヴォーチェ) | あなたたちはその声を聞いていました。 |
Sentivano la sua voce. | (センティーヴァノ・ラ・スア・ヴォーチェ) | 彼らはその声を聞いていました。 |
どちらのパターンも,動詞の語幹である「mangia」,「senti」を中心に,「vo,vi,va,vamo,vate,vano」と活用していることがわかると思います。このように,半過去の活用は1パターンさえ覚えてしまえば,あとはどの動詞でも簡単に応用できるのが特徴なのです。ある意味では,近過去よりも簡単かもしれません。
「essere」の半過去は「エラ」
イタリア語のbe動詞である「essere」は,やや特殊な半過去系を持っています。語幹の部分が「era(エラ)」となるのが,ほかの動詞と異なる点です。では,活用を見てみましょう。
essere(エッセレ)の半過去活用
Ero studente 2 anni fa. | (エロ・ストゥデンテ・ドゥエ・アンニ・ファ) | 私は2年前,学生でした。 |
Eri studente 2 anni fa. | (エリ・ストゥデンテ・ドゥエ・アンニ・ファ) | 君は2年前,学生でした。 |
Era studente 2 anni fa. | (エラ・ストゥデンテ・ドゥエ・アンニ・ファ) | 彼/彼女/あなたは2年前,学生でした。 |
Eravamo studenti 2 anni fa. | (エラヴァーモ・ストゥデンティ・ドゥエ・アンニ・ファ) | 私たちは2年前,学生でした。 |
Eravate studenti 2 anni fa. | (エラヴァーテ・ストゥデンティ・ドゥエ・アンニ・ファ) | あなたたちは2年前,学生でした。 |
Erano studenti 2 anni fa. | (エラノ・ストゥデンティ・ドゥエ・アンニ・ファ) | 彼らは2年前,学生でした。 |
このように活用自体はほかの動詞と同じなので,すぐに覚えられるでしょう。なお,essereの場合は,補語となるstudeteも人称に応じて,複数や性別で語尾が変化することも復習しておきましょう。
近過去と半過去の使い分け
前にも述べたように,イタリア語を初めとするラテン語諸言語では,過去のある1点を示す過去は「近過去」で,過去のしばらくの期間,つまり線を示す過去は「半過去」でと,2つの過去を使い分ける点に特色があります。もちろん,なじみの深い英語でも過去形と現在完了という2つのパターンがあるので,それほど特殊なわけではありませんが,やはりどうもピンとこないという人も多いでしょう。そこで以下に,近過去と半過去の違いがわかるように,この2つの過去を使った文例を挙げてみます。
Quando ho arrivato alla pizzeria, il mio fratello gia` mangiava la pizza.
(私がピッツェリアに着いたとき,弟はすでにピッツァを食べていました。)
quuando(クアンド:〜のとき(=when)),pizzeria(ピッツェリア:ピザ屋),il mio fratello(イル・ミオ・フラテッロ:私の弟),gia`(ジャ:すでに)
近過去で表される「ho arrivato(着いた)」が,過去のある一点を指しているのに対し,半過去で表される「mangiava(マンジャーヴァ)」は,そのときに食べ続けていたというような継続する過去の状態を指していることがわかると思います。
このように半過去を使うことで,過去の奥行きがぐんと増すのがわかるでようか。近過去と半過去をマスターすれば,一通り過去のほとんどの事柄は言い表せるようになるのです。
次回はSTEP8のレッスンです。