STEP9
イタリア語の文型を覚えよう・目的代名詞編
〜イタリア語・文法編9〜

これまでは,動詞の活用パターンなどを中心に覚えてきましたが
今度はそれらを上手に組み合わせて,1つの文に仕上げる文型の法則を覚えましょう。
英語に比べると,やや複雑な点はありますが,慣れると口をついて出てくるもの。
ポイントは目的語と動詞の順序が逆になることですよ。


まずは,目的語になる代名詞を覚えよう

 これまでは,名詞,形容詞,動詞といった基本的な要素を覚えてきましたが,イタリア語をさらにステップアップさせるためには,代名詞を上手に使いこなすことが大事になってきます。ちなみに説明しておくと,代名詞とは日本語の「こそあど言葉」,つまり「これ,それ,あれ,どれ」といった,名詞を一語で置き換える便利なものです。日本語でも日常的に,「あれ取って」とか「これあげる」とか,頻繁に利用しているので,その重要性は理解できるでしょう。英語で言えば,「it」や「they」がこれに当たりますが,英語と違ってやっかいなのは,名詞に性があることです。このため名詞の性はきちんと覚えておかなくてはいけないのですが,イタリア語の場合は比較的男性名詞と女性名詞の区別が付きやすいのでので,それほど困ることもないでしょう。

 それではまず,「〜を」に当たる直接目的各の代名詞を見ていきます。

●直接目的語となる代名詞
単数形 複数形
1人称 mi(ミ) 私を ci(チ) 私たちを
2人称 ti(ティ) 君を vi(ヴィ) あなたたちを
3人称男性形 lo(ロ) 彼(それ)を li(リ) 彼ら(それら)を
3人称女性形 la(ラ) 彼女(それ)を le(レ) 彼女ら(それら)を

 それでは次に,「〜に」に当たる間接目的格の代名詞を見てみましょう。

●間接目的語となる代名詞
単数形 複数形
1人称 me(メ) 私に ci(チ) 私たちに
2人称 te(テ) 君に vi(ヴィ) あなたたちに
3人称男性形 gli(リ) 彼(それ)に loro(ローロ) 彼ら(それら)に
3人称女性形 le(レ) 彼女(それ)に 彼女ら(それら)に

 これらの使い方をマスターするためには,イタリア語の文型について学ぶ必要があります。そこで,以下では,イタリア語の基本的な文型(単語の並び方)について説明することにします。


イタリア語の文型は,目的語が前,動詞が後ろ

 イタリア語などのラテン系諸語と,英語などのゲルマン系諸語でもっとも違うのは,これらの目的代名詞の取り方にあります。英語では,「主語+動詞+目的代名詞という文型が基本ですが,イタリア語では,「主語+目的代名詞+動詞」という文型が基本となります。ただし,これは目的語に代名詞を取る場合の話。通常の名詞を目的語に取る場合はやはり「主語+動詞+目的語」という形になります。取りあえず,例を見てみましょう。

●主語+動詞+目的語のパターン
 (Io) prendo il caffe.(イオ・プレンド・イル・カッフェ:私はコーヒーを飲みます。)
 (Io) presento Laura.(イオ・プレゼント・ラウラ:私はラウラを紹介します。)

●主語+目的語(代名詞)+動詞のパターン
 (Io) lo prendo.(イオ・ロ・プレンド:私はそれ(コーヒー)を飲みます。)
 (Io) la presento.(イオ・ラ・プレゼント:私は彼女(ラウラ)を紹介します。)

 このように,通常の文と,代名詞の目的語を取る文では,目的語の位置が動詞の後ろから前へ移動するのが,ラテン語諸語の文型の特徴なのです。これだけなら何となく簡単そうですが,これは「直接目的代名詞(〜を)」を取る場合の話。文がさらに「間接目的代名詞(〜に)」を取るようになると,話はややこしくなってきます。例を見てみましょう。

●主語+動詞+直接目的語間接目的語のパターン
 (Io) scrivo la lettera a te.(イオ・スクリーヴォ・ラ・レッテラ・ア・テ:私はあなたに手紙を書きました。)
 (Io) presento Laura a Mario.(イオ・プレゼント・ラウラ・ア・マリオ:私はマリオにラウラを紹介します。)


●主語+間接目的語(代名詞)+直接目的語(代名詞)+動詞のパターン
 (Io) telo scrivo.(イオ・テロ・スクリーヴォ:私はあなたにそれ(手紙)を書きました。)
 (Io) glila presento.(イオ・リラ・プレゼント:私は彼(マリオ)に彼女(ラウラ)を紹介します。)

 このように,直接目的語と間接目的語の2つを代名詞として取る場合は,「間接目的代名詞+直接目的代名詞」という,2つの言葉がくっついたものを動詞の前に持ってくることになります。この辺がイタリア語の難しいところ。そういった概念のない日本人にとっては,ちょっと厄介な感じですね。思わず頭が混乱してしまいます。書いている僕自身もなんだか混乱してきました。では,ちょっと一休み。これに関しては,次のレッスンでじっくりと見てみることにして,ここではもう少し,直接目的代名詞の勉強をしてみましょう。


直接目的代名詞の使い方

 語学でいう直接目的語とは,「動詞が取る直接的な目的語」ということで,日本語でいうところの「〜を」という助詞を補った形と思えばよいでしょう。英語の場合は,基本文型が「主語+動詞+直接目的語(S+V+O)」という順番で変わることがありませんが,イタリア語の場合は,上でも見たように,目的語が名詞であるか代名詞であるかによって,入る位置が動詞の前後で変わります。一見するとちょっと厄介そうですが,日常会話で使うパターンを見てみれば,そうでもないことがわかるはずです。

●直接目的語を使った日常会話のパターン1
Ciao Mario. Non vedi il mio gatto?(チャオ・マリオ。ノン・ヴェディ・イル・ミオ・ガット?)
(やあマリオ。僕の猫を見なかったかい?)

Non lo vedo stamattina.(ノン・ロ・ヴェード・スタマッティーナ)
(いや。今朝は(それを)見なかったよ。)

 このように,日常会話では,いきなり代名詞がポッと出てくることはまずないので(慣用句はのぞく),前の人が言った名詞に対して,重複を防ぐために代名詞に置き換えるという作業を行っているだけなのです。ですからこの場合,「il mio gatto」の「il」あるいは「-tto」という音を聴いて,目的語が男性単数であることを確認したら,それをそのまま「lo」へと置き換えて,動詞の前に持ってくればよいわけです。イタリア語の場合,代名詞は「ロ」「ラ」「リ」のように,たいてい1音で表されるので,軽く口をついて出てくるはずです。あとは慣れの問題でしょう。例をもう少し見てみましょう。

●直接目的語を使った日常会話のパターン2
○例文1
Conosci sigonora Rucca?(コノッシ・シニョーラ・ルッカ?)
(ルッカさんをご存じ?)
Si. La conosco bene.(ラ・コノスコ・ベーネ)
(ええ,よく知ってます。)


○例文2
Posso Mangiare queste pesce crude?(ポッソ・マンジャーレ・クエステ・ペッシェ・クルーデ?)
(これらの生魚は食べられるの?)
Si,certo. Le mangono tutti in giappone.(シ・チェルト。レ・マンゴノ・トゥッティ・イン・ジャッポーネ)
(うん,もちろん。日本ではみんな食べるよ。)


○例文3
Ci vedi?(チ・ベーディ?)
(俺達が見えるかい?)
No. Non vi vedo.(ノ。ノン・ヴィ・ヴェード)
(いいや。見えないよ)

 このように,日常会話で使用する場合は,代名詞となる目的語の性と数さえ聞き落とさなければ,あとは音で何とかあわせられるはずです。例文1では,シニョーラの「ラ」で女性・単数とわかるので,目的語は「ラ」,例文2では,クエステやペッシェの語尾の「エ」で女性複数とわかるので,目的語は「レ(L+E)」,最後の例文3はやや趣向が違いますが,「ci(チ)」で聞かれたら人称は逆になるので「vi(ヴィ)」に変換する。このように,イタリア語は,音で連想してそのまま受け答えられる便利な言葉なのです。とにかく代名詞に関しては,自分の口で何度も発音して,音で覚えてしまうのがもっとも手っ取り早く覚えられると思います。

 なお,まだ勉強していないことですが,「〜ということを知ってる?」のように,その文全体に対して知っているかどうかを聞かれた場合,「それを知っている/知らない」という場合の「それ」に当たる代名詞には,三人称単数の「lo」を使います。ここで使う「Lo so.(ロソ:知ってる)」「Non lo so.(ノンロソ:知らない)」は,よく使う言葉なので,決まり文句のようにして覚えておきましょう。

○例文
Tu sai che l'italiano e` molto gentile?(トゥ・サイ・ケ・リタリアーノ・エ・モルト・ジェンティーレ?)
(イタリア人ってものすごく親切だって,君知ってた?)
No. Non lo so.(ノ。ノン・ロ・ソ)
(いいや。知らないよ。)


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次回はSTEP10のレッスンです。