TEATRO ALLA SCALA(スカラ座)

ガッレリアを抜けると,そこがスカラ座の正面。
オペラの殿堂と言う割には意外と地味な印象です。
 オペラといえばスカラ,スカラといえばミラノというくらい有名なオペラの殿堂,それがスカラ座です。ここで催されるオペラは,イタリアのオペラの中でトップの座にあることはもちろん,世界的なオペラの中でもトップクラスの座を誇っています。現在,世界的に有名なオペラ座といえば,ニューヨークのメトロポリタン・オペラと,ロンドンのロイヤル・オペラ,そしてミラノのスカラと言われています。パリのオペラ座も有名ですが,やや格は落ちるようです。しかし,何と言ってもオペラの発祥地はイタリアですから,その分スカラ座に対する人々の羨望と期待は高いものがあります。ある意味では,ドゥオーモに匹敵するほどの,ミラノの中心的な存在と言えるかもしれません。

 スカラ座の場所は,ちょうどドゥオーモから左手のガッレリアを抜けたところにあります。ドゥオーモからはごく近くなので,きっと観光コースには必ず入っているかと思います。このように有名なスカラ座ですが,外見はものすごく地味です。パリのオペラ・ガルニエのような荘厳な建物を想像すると,ちょっとがっくりするくらい地味な感じを受けます。しかも周りの建物とあまり変わらないような壁の色をしているので,見分けがつきにくいのです。ですから,観光でミラノを訪れて,スカラ座の外見だけを見ても,まったくおもしろくないと思います。

 しかし,スカラ座は,演劇とは建物ではなくて内容なんだということを強く教えてくれる劇場です。中に入ってみると,それほど派手ではないにしても,赤と金を基調にしたシックな内装が目に入ります。絢爛豪華なゴシック調の建物ではありませんが,質実剛健で落ち着いた雰囲気を醸し出しています。もちろん,オペラやバレーを観に来る人たちの格好もシックでおしゃれです。観に来る人の大半はお金持ちの元貴族という感じの人で,この人たちはアボナメントと呼ばれる年間パスを持っています。こういった人ったちがいわゆる土間席にずらっと並んで観劇をするわけです。ただし,平民や学生のために天井桟敷は格安で提供されています。僕たちも,ここでずいぶん天井桟敷からオペラを見ましたが,それはそれで素晴らしいものでした。ときには3時間以上ものオペラを立ち見ということもありましたが,それでもなお有り余ってしかるべき内容の素晴らしいオペラを見られたと思います。

 もちろん,スカラ座で上演されるオペラは世界一のクラスだと思います。僕はそれほどオペラに詳しいわけではないので,ほかの劇場がどれくらいのレベルなのかは正直言って分かりませんが,どの演目も決して飽きることなく見ることができたばかりでなく,オペラの本当のおもしろさを知ることさえできたのです。オペラの知識がほとんどなく,かつイタリア語もよく分からない僕が見てさえおもしろいなあと思ったのですから,これはもう一流と言うしかないでしょう。

 オペラのシーズンは12月〜6月ですが,観光で行ってオペラまで見ようとするのはかなり無理があります。それと言うのも,前に言ったとおり,スカラ座の平土間席はアボナメントを持っている貴族階級の人が占有しており,残りのバルコニー席も,売り出されたその日にほとんど完売状態となってしまうので,観光客が当日行ってオペラを見るには,ダフ屋からチケットを買うしか実際道は残されていないのです。ミラノに住んでいる人間でも,チケット売り出しの前夜から並んで,ようやく手に入れることができるというものなので,なかなか観光客がおいそれと見ることのできないものであることは否定できません。こればかりは,イタリアのしきたりとも言うべきものなのでどうしようもありませんが,もし本当にスカラ座の舞台を見たいなら,半年くらいミラノに滞在するのも悪くありません。だって,世界一の舞台を日本に比べたら格安の料金で何回も見られるんですから,半年くらい無駄ではありません。これは僕が保証します。(Marzo/5/1998)




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