Juan D'Arienzo(ファン・ダリエンソ)
(1900〜1976)

JUAN D'ARIENZO:BEST SELECTION
BMGビクター:2,200円
収録曲:
FELICIA,CANARO EN PARIS,LA CUMPARSITA,INDEPENDENCIA,EL MARNE,DON PACIFICO,EL CHOCLO,NUEVE DE JULIO,ESTA NOCHE ME EMBORRACHO,HOTEL VICTORIA,EL SIMPATICO,LOCA,EL ENTRERRIANO,LA PUNALADA,EL TARTA,LA MOROCHA,PAMPA,DON ORLAND,EL POLLO RICARDO,EL PUNTAZO,NACI EN POMPEYA,EL INTERNADO,VIENTO SUR,JUEVES,HOMERO,JOAQUINA,DON JUAN

 「電撃のリズム」という異名を持つ彼のタンゴの特徴は,まさにその性格無比なるリズムにある。古典タンゴのもっとも大きな特徴ともいえる4ビートのスタッカートを,軽快かつ切れ味のあるスタッカートで攻めていく彼の楽団の演奏方法は,まさに電撃のリズムにふさわしいパンチ力を秘めているのだ。通常のタンゴは,2ビートを基調とした「強弱強弱」というリズムによって形作られる場合が多いが,彼の音楽はすべてが強拍であるといっても過言ではない。では,それがうるさいかというと,そうでもない。なぜなら,彼の楽団の作り出すメロディーは,ピアニッシモからフォルテッシモまでの斬新的な移行を常とするからだ。つまり,リズムはあくまでもきっちりとした4ビート,しかしそこに流れるメロディーは大きな波のうねりのように,じわじわと大きくなったり,やがて小さくなったりと,変幻自在なのである。このダイナミズムこそが,ファン・ダリエンソ楽団の,もっとも大きな魅力となっているのである。

 彼の残した名曲・名演奏は数多い。古典タンゴの有名曲はほぼすべて演奏しているのではないかと思われるほどの名パフォーマーなのだ。中でも有名なのは,その切れの良さとダイナミズムを生かした「ホテル・ビクトリア(Gran Hotel Victoria)」や「ヌエベ・デ・フリオ(9 de Julio:7月9日)」,「ラ・クンパルシータ(La Cumparsita)」などの作品。また,踊れるタンゴの軽快さを生かした「レ・ファ・シ(Re Fa Si)」や「パンパ(Pampa)」といった作品も数多い。その小気味よいスタッカートのリズムは,まさに「踊れるタンゴ」のキングともいうべきノリの良さを我々に味あわせてくれるはずだ。古典タンゴの世界を味わってみたいというビギナーから,タンゴを踊りたいという人,またタンゴの神髄を究めたいと思っている上級リスナーまで,「ダリエンソを語らずして,タンゴを語ることなかれ」というくらいに,広くおすすめしたい。

戻る