アストロリコ・銀座シークレットライブレポート
ピアソラ タンゴ・モデルナ特別編(2000年3月11日・銀座十字屋ホール)



 3月11日(日)に銀座・十字屋ホールにて,関西タンゴの勇「アストロリコ四重奏」のライブが行われました。この日は,100人程度のお客さんしか呼ばないシークレットライブで,主催のマークアイさんより,本ページの掲示板にて情報をいただいて知ったものです。ふだんはあまりタンゴのコンサートに足を運ぶことの少ない僕も,アストロリコが東京で見られるとあっては,出かけないわけにはいかないと,行ってまいりました。

 十字屋ホールはあまり広くないサロン風のホールで,タンゴの生音を響かせるにはいい空間です。もちろん,アストロリコの演奏はエネルギッシュですばらしいものがありました。僕は一度だけ,練習を見におじゃましたことがあったのですが,ステージでアストロリコを見るのはこれが初めて。関東の演奏家にはない熱い演奏で,とても楽しませてもらいました。昨年,体をこわされたバンドリーダーの門奈さんもお元気そうで何よりでした。

 そして,すごかったのが,特別ゲストの2人。現在,アストロリコと公演中の大浦みずきさんは想像がつきましたが(でも,驚いたけど(笑)),もう1人,あの元バービーボーイズのボーカル「コンタ」がゲストで登場。しかも,往年の名曲「別れの朝」をタンゴ調で歌うなど,ちょっとびっくりの趣向でした。もしかして,コンタもタンゴに目覚めちゃったのか? と思ったりして。もちろん大浦さんも,ピアソラの名曲「Los Pajaros Peridos(迷子の小鳥たち)」を自ら作詞の日本語の詩で歌うなど,サービス満点。5,000円のチケット代も高くはない内容でした。

 アストロリコはその名前を,アストル・ピアソラ,アニバル・トロイロ,レオポルド・フェデリコの三者から取っているくらい,この三者の影響を受けているグループなのですが,それよりも門奈さんが好きなのは,オスワルド・プグリエーセの激しいスタッカートが生み出す演奏スタイルなのではないでしょうか。以前に,練習場所におじゃましたときも,力強いビートでプグリエーセの代表曲「ラ・ジュンバ」を弾いていたのを思い出します。この日のライブも,随所にプグリエーセの4ビートスタイルが現れていて,ピアソラの曲がメインなのですが,そこにはプグリエーセの息吹が感じられるという,これもアストロリコのスタイルなのだという,よい演奏でした。特に,ピアソラキンテートの十八番「フラカナバ」や,トロイロの美しいワルツ「ロマンセ・デ・バリオ」は本当によかったです。

 プログラムの内容は,タイトルの通りピアソラが中心だったのですが,半分くらいはあまり演奏されないような曲で,ピアソラといえば「リベルタンゴ」,「ブエノスアイレスの四季」といった感じではなく,新鮮でした。変わったところでは,コンチネンタルの名曲「ジェラシー」のアルゼンチン風アレンジや,バイオリンの麻場さんや,ピアノの平井さんが自ら作曲したというオリジナルタンゴも聴けて楽しかったです。ちなみに麻場さんの関西らしいダイナミックな演奏が僕はけっこう好きです(笑)。

 とにかくアストロリコの演奏はレベルが高くて,ライブも楽しいです。力強くアグレッシブでいながら,気品を失わないというような,本当にタンゴらしいタンゴを聴かせてもらいました。今度は地元の京都でぜひ聴いてみたいと思います。(2001/March/12)

PROGRAMMA
リベルタンゴ
エル・チョクロ
ジェラシー
フロリダ通りを歩きながら(麻場利華作曲)
ラ・ピカリータ(平井かほる作曲)
シルエッタ・ポルテーニャ
ロマンセ・デ・バリオ
パタ・アンチャ
別れの朝(By コンタ)
迷子の小鳥たち(By 大浦みずき)
シン・レトルノ
サンチャゴに雨が降る
フラカナバ
ソレダー
タンゲディア
オブリビオン
現実との3分間
ミケランジェロ70