アストロリコ 10周年記念東京公演 タンゴモデルナ Vol.3
(2002年12月13日 14日・サントリーホール(小ホール))



 僕にとっては、実に久々のタンゴライブとなった。最近、何かと身の回りがあわただしく、なかなかライブに足を運ぼうという気にもならなかったのだが、大好きなアストロリコが久々に東京にやってきて、しかもサントリーホールという恵まれた環境で演奏すると聞いては、黙ってはいられない。しかも、スペシャルゲストとして、あの「島唄」でブレイクしたTHE BOOMの宮沢君が登場するというから驚き!というか、これで行かずにいられりょか?って感じで、早速会社の近くのコンビニでチケットを取り(今はコンビニでチケットを買えるんですよ!あ、知ってたって?(笑))、12月14日(土)のマチネ公演に出かけていったのだった。

 会場に入ってみると、やはりというか、宮沢君のファンらしき人たちの姿が多く見受けられた。最近はピアソラブームで若い世代も随分タンゴを聴くようになったが、一見してタンゴファンではないなというようなファッションをしていた人が多かったし、そういうのってさすがにすぐわかる。まあ、きっかけはどうでも、こうやって多くの若者がタンゴを聴くようになってくれればうれしい。彼らが今日のアストロリコのライブを見て、タンゴに目覚めてくれれば、実にすばらしいことだ。

 さて、第一部。アストロリコの十八番ともいえる「リベルタンゴ」からスタート。久々に生で聴いたけど、麻場さんのバイオリンは、以前よりもずっとずっと粘っこくファンキーになっていて、タンゴ濃度が相当増した気がした。もちろん、門奈さんのバンドネオンは言うまでもないし、このメンバーは本当にピアソラナンバーを弾かせたら本当に上手いなあ、と感動。のっけからボルテージは高まった。いや本当にこの人たちは上手い。日本で一番のタンゴバンドと言ってもいいだろう。

 プログラムはもちろんピアソラナンバーが中心の構成なのだが、それだけで終わらないのもアストロリコのよいところ。古典タンゴの名曲である「SILUETA PORTENA」や「EL CHOCLO」なども、アストロリコ風にまさに「モデルナ(現代風)」にアレンジされていて、非常に楽しい演奏だった。アストロリコの大きな魅力として、その卓越したアレンジがあるが、これくらいきちんと自分達流にアレンジできるバンドもそうそうあるものではない。個人個人の演奏技量も大した物だが、こうしたアレンジ技術も本当に大したものだと感服してしまう。

 さらに、門奈さんのお弟子さんの若手バンドネオニスタを交えて、バンドネオンだけの四重奏「CHORAL」と、文部省唱歌の「富士の山」を演奏。こういう試みもなかなかいいですね。最後に、バンドネオン4台のオルケスタ構成で、「CANARO EN PARIS」と「ZUM」をやって、第一部は終了となった。相当満足。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 さて、第二部は、お待ちかねの宮沢君の登場だ。三線を手に現れた宮沢君は「沖縄に降る雪」をソロで歌い始めた。宮沢君の声を生で聴くのも実は初めてなのだが、力があって気持ちが入ってて、実にいい響き。さらにはアストロリコのバックが入って、タンゴ風のすばらしい演奏となった。その次は、宮沢君の社会派としての一面がうかがえる音楽詩「ゲバラとエビータのためのタンゴ」。こういう詩が歌える宮沢君って本当にいいよね。しかもバックに流れるのはアストロリコのタンゴ。ホント聴かせるなあ。そして最後は、おなじみの「島唄」。タンゴ調の島唄もなかなかのものでした。本当に、今年はワールドカップ関連でとってもブレイクした宮沢君だが、彼は最近サンバにはまっているようで、ラテンとは非常に近しい関係にある。「THE BOOM」は、高校生くらいのずっと以前から好きだったバンドだし、こういう形でいろいろなコラボレーションをこなせて、しかも人の心を打つなんて、宮沢君は本当にステキな人だと再確認した1日でもあった。

 さて、宮沢君退場の後、すぐに席を立った隣のカップルには正直むかついたが(笑)、その後もピアソラナンバー「LA MUERTE DEL ANGEL」、「FRACANAPA」と、アストロリコおなじみの曲が続いてフィナーレ。アンコールはコンチネンタルタンゴの名曲「ジェラシー」と、NEWS23でも演奏した「荒城の月」のタンゴバージョンだった。ホントにいろいろなレパートリーを持っていて、そのどれもがアストロリコっぽいというのがすごい。門奈さんが、最後のMCで、「こんな場所で、いろんな方の応援を受けてタンゴを演奏できるということは(若手のバンドネオニスタだけでなく)、僕らにとっても非常に幸せなことです。僕らがうれしいんです」とおっしゃっていたが、本当にこの言葉は身にしみた。終演後、久々にいいタンゴの演奏を聴けたことは、僕にとっても非常にラッキーで幸せな出来事だったと、門奈さんや宮沢君の言葉を改めてかみしめながら、冷え切った空気のあわただしい師走の東京へと戻っていったのだった。 (2002/12/21)



PROGRAMMA
〜 第 1 部 〜
LIBERTANGO
OBLIVION
FUGA Y MISTERIO
SILUETA PORTENA
EL CHOCLO
A FUEGO LENTO
SOLEDAD
3 MINUTOS CON LA REALIDAD
CHORAL
富士の山
CANARO EN PARIS
ZUM
〜 第 2 部 〜
沖縄に降る雪
ゲバラとエビータのためのタンゴ
島唄
SIN RETORNO
LA MUERTE DEL ANGEL
FRACANAPA

〜 アンコール 〜
ジェラシー
荒城の月


戻る