私が初めて買った98。既に次機種であるPC-9801ns/Tが出回り始めていた92年の初頭に中古で購入しました。この微妙な機種選択が後の人生を大きく狂わすことになります(ってそんな大げさな(^^;))。
そもそもこのマシンの購入の目的は、ちゃんとしたCコンパイラが走る環境が欲しかったというもので、当時使っていたX68000のXCは「ちゃんとしていなかった」んですね(笑)。まあ、会社で使っているのが98だったので、環境構築に慣れてきた98が欲しかったというのも理由の1つでした。
しかしこれが仇になりました。当時ウチの会社には人数分のPCが無かったんです。コーディングとかドキュメント書きとか必要なときだけPCの前で作業するという作業形態でしたから、勝手にディレクトリは掘れないわ、急な作業が発生した場合は空けてあげなければならないわで結構不自由な作業を強いられていたのです。
こんな状態でしたから、携帯可能なノートマシンを会社に持っていって作業するという状態に陥るのは必然といえませう。個人所有のPCであれば他人に取られることもありませんし、HDも使いたい放題です。
かくしてこのマシンは、週単位で会社と家を往復する事になりました。
ちょうどその頃、巷であるモノが流行りだします。キーワードは「換装」。私もやったという人も多いでしょうが、Intelのi386DX/SXピンコンパチのCPU、Cyrix
CX486DLC/SLCの登場、そしてそれを自分のPCに載せ換えようというCPU換装ブームが始まります。
このCPU、ピンコンパチなので元のi386CPUを取り外し、そこへ新たなCPUを取り付け、後はソフトウェア上でキャッシュドライバを組み込めば性能が向上するというモノでしたが、簡単に取り外しができるPGAタイプのi386DXに比べて、ns/Eで使用されているのはQFPタイプのi386SXなのでした。このタイプは基板にハンダで直付けされており、しかも非常に細いピンが100本も生えているという難物です。
ご他聞に漏れず、私もこれにハマった口でして、早速アキバでCPUを購入し換装に取りかかりました。余談ですが、私がやった頃は既に雑誌でも取り上げられて結構なブームになっていたため店で購入することができましたが、当初Cyrixは一般向けに販売するつもりが無かったらしく、1個3万円もするCPUを個人で1ロット(1000個単位)購入し、ネット上で募った購入希望者に実費で分けるといった事もされていたようです。一方でその後もブームは過熱していき、最後には解説本にCPUが付属するようになり、普通の本屋でCPUが買えるというまでになりました。この間わずか1年という急変ぶりです。しかし書籍扱いのCPUというのも前代未聞ですね(^^;)。
閑話休題、このCPUを取り外すという作業は、はんだごてでピンを1本ずつ暖めながらランドから剥がすという、とても精密で根気のいる作業です。所要時間は実作業が2時間位、まあ新しいCPUのハンダ付けも含めて半日というところでしょうか。
実は私、この作業を同じマシンに対して4回もやってるんです。最初はごく普通に486SLCへの換装、次に換装したCPUが恐らく熱による破壊でお亡くなりになったため元のCPUに付け直し、その後新たに買ってきたCPUに再び換装、更に改良版CPU(CX486SLC2)が出たのでまたそれに換装(笑)。よく基板のランドがもったものです。
その後も、お決まりのクロックアップ(16MHz→20MHz)、FPU増設など、どんどん廃人の道を突き進んでいきましたが、時代がWindowsへと進んでいく中で、所詮本家のi486〜Pentiumマシンには敵わず、P54C-PIPの購入で事実上現役引退となりました。
致命的だったのはメモリの増設がメモリカードによってしか行えなかったことです。このメモリカード、初代98noteを基準に設計されているため、Cバス並の速度でしかアクセスできないモノでした。試しにWindows3.1をインストールしてみましたが、起動に5分、ファイルマネージャを開くのに1分、ソリティアのコンプリートデモは月面の重力並(^^;)ということで、Windowsには即刻ご退去願うこととなりました。
今考えてみると、会社の業務で使ってるマシンを改造するなんて、なんて無謀なことをしたんだろうと思いますね。HDDには開発中のソースもドキュメントも入っていたんですが、そこへCPUキャッシュコントローラやらHSBやらネット上からダウンロードしたソフトをバシバシ組み込んでました。何もトラブルが起きなかったのは奇跡といっていいかも。
さて、冒頭で機種選択の妙といったのは、i386SXを採用していたns/Eに対して、次機種のns/Tは98に特化した特別仕様のi386SLというCPUを採用しており、CPU換装が不可能だったんですね。もしそちらを購入していたら、こんな廃人仕様にはならなかったでしょう。世の中何が幸いするかわからないですね。それが幸いかどうかはまた別問題ですが(^^;)。
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