※『バスルームトーク・きよかわのぞみ』SS(^^)

:Written by あんB


 ……いつもよりちょっと早いお風呂は、今日の一番湯。
 まだ誰も入ってない新しい湯、肌をぴりぴり刺激する熱いお湯を、ちょうど良い加減にして。

  「ふぅ……いいキモチぃ……」

 気持ちいいお湯にゆったりと肩までつかって、はぁ…と、リラックスして思いっきり惚けている、あたしの目の前を。
 ――今日は、懐かしいあひる君といるか君が、ぷかぷかと泳いで(?)いったりして。

  「のぞみおねーちゃん、おふろ、きもちいいねぇー……」
  「うん、キモチいいねぇ……」
 

 今日は、2人で入る、お風呂。”いもうと”と一緒の、お風呂……。
 


BathingBeauty

 

 いつもはあんまり笑わないお父さんが、今日はとっても笑顔、多いのは……お姉ちゃんが、用事でお家に帰ってきてるから。
 普段寡黙なお父さんも、かわいい孫娘の前だと、すっかり”おじいちゃん”しちゃってるの。

  「のぞみおねーちゃんっ」

 とたたた…と、あたしの後をひっついて歩き回る、あたしのかわいい”いもうと”、まりちゃん。
 …そのちっちゃな姿をにこやかに見つめている、お母さんと、お姉ちゃん。
 お姉ちゃんのその優しい眼差しに、柔らな微笑みに、ちょっと不思議な……驚き。

 ――そっか……『お母さん』、なんだよね……お姉ちゃん、も……。
 

  お姉ちゃん。

 …今まで、自分が呼んでいたのと、同じ言葉。
 …今度は、同じ言葉で、自分が呼ばれている。

 ――なんだか、ちょっと不思議……でも、なんだかとっても嬉しい。

***

 まりちゃんをお風呂に入れてあげるのも、”おねえちゃん”の役目。
 お風呂の前には、ちゃんと髪の毛、きちんとブラッシング。

  「あれー?のぞみおねーちゃん、かみのけのばしてるの?」
  「うん、まだ短いけどね」

 あたしの後ろの襟足、ゴムで束ねた――ほんの少し伸ばした、髪の毛。
 いつか……素敵な髪に、なれるかな。女らしい……綺麗な髪に、なれるかな。

  「おかしいかな?」
  「…ううん。なんか、ねこのしっぽみたい」

 ――ね、猫の尻尾??

  「あのね、まりのおうちのおとなりのねこさん、しっぽがみじかいの。これぐらいしかないんだよ」

 そう言って差し出した小さな指は、ちいさくて、柔らかくて、かわいくて。
 「どうしてかなぁ?」と首を傾げるその頭は、あたしより、ずっと小さくて、ずっと低いところに…。

 その頭をそおっと優しく撫でてあげると「えへへっ」って、とっても嬉しそう。
 そのにこにこ笑顔、かわいいな。……なんだか、あたしも嬉しくなっちゃうな。


  「ねぇねぇ、しっぽをぎゅー…ってひっぱったら、ながいしっぽになるかなぁ?」
  「だーめ。猫さんに、”やめてーっ”って、ツメで引っかかれちゃうよ」
  「うん、そだねっ」
 

 ――『馬の尻尾』ならぬ『ねこの尻尾』な、あたしの髪……なんか、おかしくて。

***

  「じゃあ、お姉ちゃんがまりちゃんきれいきれい、してあげるねっ」
  「まりも、おねーちゃんきれいきれいしてあげるー」

 にこにこ笑いながら、まりちゃんをきれいきれいしてあげる、あたし。
 シャンプーのとき、ぎゅっ…と瞳を固くつぶってる、その表情……なんだか、とってもかわいいよね。
 そして、石鹸を泡立てて、優しく、こわれ物を洗うみたいに、とってもかわいいピンク色に染まったまりちゃんの身体、洗ってあげて。
 ちっちゃな女の子の身体はとってもちっちゃくて、とっても柔らかくて……ほっぺたなんか、思わずちゅってしちゃいたくなるほど、ぷわぷわなのっ……。

  「はーい、せっけんさんの泡流すよぉ」
  「はぁい」

 ”いもうと”と一緒だと、あたしの口調まで、どこか子供っぽくなってる。
 ……まるで、子供の頃に戻ったみたいだね。

 子供の頃……こうやって、よくお姉ちゃんとお風呂入ったよね。
 今よりずっと湯船が大きく感じたから、2人でいっぱい遊んで……バタ足とか、潜りっことかして、のぼせちゃったり。
 ……最後に入ったのは、もう…ずっと昔のことだけどね。

 
 お風呂の中、あたしの膝の上でぱちゃぱちゃ遊んでる、かわいい”いもうと”。
 ……目の前を泳ぐ(?)あひる君もいるか君も、あの頃と全然変わってないよね。

  「ふーっ…」
  「ふう……」
  「…あ、おねーちゃん、まりのまねしたー」

 ふふふっ…と膝の上の”いもうと”をそっと軽く抱き締めると、きゃっきゃっと嬉しそうにはしゃいで。
 無邪気な笑顔、素直な笑顔……見ている人を幸せな気分にする、かわいい笑顔。
 

 ――今日はきっと、お父さんに負けず劣らず、あたしも笑顔が多いはず。

***

  「じゃあ、肩までしっかりお湯につかるんだよぉ」
  「はぁい」

 明るい返事に、2人でとぷんっと仲良く、肩までお湯につかって。
 

  「あのねあのね、まりのママねぇ、よくパパと一緒にお風呂入るんだよぉ」

 …もぉ……お姉ちゃんってば、まだまだ”新婚さん”、してるワケね。

 ―――でも、なんか……羨ましいな。そういうのって……いいな……。
 

 ゆっくりお湯につかって、カラダも隅々まで、ほわほわのすべすべ。
 ……今日のお風呂は、もう心の底から、2人をしっかり暖めてくれるね。

  「まりちゃん、そろそろ上がろっか」
  「うんっ」

 お風呂から上がると、お姉ちゃんがバスタオル持って、湯上がりでほかほかの まりちゃんをそっと包んで。

  「まり、望姉ちゃんと一緒のお風呂、気持ちよかった?」
  「うんっ!!あのねっ、のぞみおねーちゃんにきれいきれいしてもらったのー」
  「ふふふ、よかったわねぇ」
 

 
  望お姉ちゃん。

 …お姉ちゃんが使った、その言葉。あたしを『お姉さん』と呼ぶ、お姉ちゃん……

 ―――とっても、不思議な感触のする、言葉……。
 

  「じゃあ、あたしもお姉ちゃんに”きれいきれい”してもらおっかな?…お姉ちゃんは、いつもお義兄さんに”きれいきれい”してもらってるんでしょ?」
  「こらぁっ!」

 上気してほわほわの2人と同じぐらいに、お姉ちゃんの顔が赤くなる。
 ……でもね、その瞬間の表情は、まりちゃんの『お母さん』のものじゃない。

 

 ―――赤くなった顔に、あたしの大好きな『お姉ちゃん』が、戻ってた。
 

<おしまい>

【Postscript】

 こん○○は。HP『fascination』開設者のあんBです。今回『文芸館・ときめき』にリンクを張らせていただいた記念に、きよかぁさんSSを上納(笑)させてもらいました。

 のぞみお姉ちゃんといっしょのおふろ(^^)、元ネタはビオレUのCMだったりします(*^^*)
 普段『極甘SS』なんて書いてますが、今回は恋の相手が出てこないので『甘SS』です(^^;)

 で、きよかぁさんのお姉さんの娘…ってことは、当然きよかぁさんは『おばさん(爆)』になるんですが、それは言わない約束よ(^^;;;;)
 #うちの姉の場合、「おばさん」だけど「おねえちゃん」…ということで、2つ合わせて『おばねえちゃん』と呼ばれてた(笑)


◇この作品への感想は、あんBさん(HQN01265@niftyserve.or.jp)までお送り下さい。


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