※『バスルームトーク・きよかわのぞみ』SS(^^)
:Written by あんB
……いつもよりちょっと早いお風呂は、今日の一番湯。
まだ誰も入ってない新しい湯、肌をぴりぴり刺激する熱いお湯を、ちょうど良い加減にして。
「ふぅ……いいキモチぃ……」
気持ちいいお湯にゆったりと肩までつかって、はぁ…と、リラックスして思いっきり惚けている、あたしの目の前を。
――今日は、懐かしいあひる君といるか君が、ぷかぷかと泳いで(?)いったりして。
「のぞみおねーちゃん、おふろ、きもちいいねぇー……」
「うん、キモチいいねぇ……」
今日は、2人で入る、お風呂。”いもうと”と一緒の、お風呂……。
いつもはあんまり笑わないお父さんが、今日はとっても笑顔、多いのは……お姉ちゃんが、用事でお家に帰ってきてるから。
普段寡黙なお父さんも、かわいい孫娘の前だと、すっかり”おじいちゃん”しちゃってるの。
「のぞみおねーちゃんっ」
とたたた…と、あたしの後をひっついて歩き回る、あたしのかわいい”いもうと”、まりちゃん。
…そのちっちゃな姿をにこやかに見つめている、お母さんと、お姉ちゃん。
お姉ちゃんのその優しい眼差しに、柔らな微笑みに、ちょっと不思議な……驚き。
――そっか……『お母さん』、なんだよね……お姉ちゃん、も……。
お姉ちゃん。
…今まで、自分が呼んでいたのと、同じ言葉。
…今度は、同じ言葉で、自分が呼ばれている。
――なんだか、ちょっと不思議……でも、なんだかとっても嬉しい。
まりちゃんをお風呂に入れてあげるのも、”おねえちゃん”の役目。
お風呂の前には、ちゃんと髪の毛、きちんとブラッシング。
「あれー?のぞみおねーちゃん、かみのけのばしてるの?」
「うん、まだ短いけどね」
あたしの後ろの襟足、ゴムで束ねた――ほんの少し伸ばした、髪の毛。
いつか……素敵な髪に、なれるかな。女らしい……綺麗な髪に、なれるかな。
「おかしいかな?」
「…ううん。なんか、ねこのしっぽみたい」
――ね、猫の尻尾??
「あのね、まりのおうちのおとなりのねこさん、しっぽがみじかいの。これぐらいしかないんだよ」
そう言って差し出した小さな指は、ちいさくて、柔らかくて、かわいくて。
「どうしてかなぁ?」と首を傾げるその頭は、あたしより、ずっと小さくて、ずっと低いところに…。
その頭をそおっと優しく撫でてあげると「えへへっ」って、とっても嬉しそう。
そのにこにこ笑顔、かわいいな。……なんだか、あたしも嬉しくなっちゃうな。
「ねぇねぇ、しっぽをぎゅー…ってひっぱったら、ながいしっぽになるかなぁ?」
「だーめ。猫さんに、”やめてーっ”って、ツメで引っかかれちゃうよ」
「うん、そだねっ」
――『馬の尻尾』ならぬ『ねこの尻尾』な、あたしの髪……なんか、おかしくて。
「じゃあ、お姉ちゃんがまりちゃんきれいきれい、してあげるねっ」
「まりも、おねーちゃんきれいきれいしてあげるー」
にこにこ笑いながら、まりちゃんをきれいきれいしてあげる、あたし。
シャンプーのとき、ぎゅっ…と瞳を固くつぶってる、その表情……なんだか、とってもかわいいよね。
そして、石鹸を泡立てて、優しく、こわれ物を洗うみたいに、とってもかわいいピンク色に染まったまりちゃんの身体、洗ってあげて。
ちっちゃな女の子の身体はとってもちっちゃくて、とっても柔らかくて……ほっぺたなんか、思わずちゅってしちゃいたくなるほど、ぷわぷわなのっ……。
「はーい、せっけんさんの泡流すよぉ」
「はぁい」
”いもうと”と一緒だと、あたしの口調まで、どこか子供っぽくなってる。
……まるで、子供の頃に戻ったみたいだね。
子供の頃……こうやって、よくお姉ちゃんとお風呂入ったよね。
今よりずっと湯船が大きく感じたから、2人でいっぱい遊んで……バタ足とか、潜りっことかして、のぼせちゃったり。
……最後に入ったのは、もう…ずっと昔のことだけどね。
お風呂の中、あたしの膝の上でぱちゃぱちゃ遊んでる、かわいい”いもうと”。
……目の前を泳ぐ(?)あひる君もいるか君も、あの頃と全然変わってないよね。
「ふーっ…」
「ふう……」
「…あ、おねーちゃん、まりのまねしたー」
ふふふっ…と膝の上の”いもうと”をそっと軽く抱き締めると、きゃっきゃっと嬉しそうにはしゃいで。
無邪気な笑顔、素直な笑顔……見ている人を幸せな気分にする、かわいい笑顔。
――今日はきっと、お父さんに負けず劣らず、あたしも笑顔が多いはず。
「じゃあ、肩までしっかりお湯につかるんだよぉ」
「はぁい」
明るい返事に、2人でとぷんっと仲良く、肩までお湯につかって。
「あのねあのね、まりのママねぇ、よくパパと一緒にお風呂入るんだよぉ」
…もぉ……お姉ちゃんってば、まだまだ”新婚さん”、してるワケね。
―――でも、なんか……羨ましいな。そういうのって……いいな……。
ゆっくりお湯につかって、カラダも隅々まで、ほわほわのすべすべ。
……今日のお風呂は、もう心の底から、2人をしっかり暖めてくれるね。
「まりちゃん、そろそろ上がろっか」
「うんっ」
お風呂から上がると、お姉ちゃんがバスタオル持って、湯上がりでほかほかの
まりちゃんをそっと包んで。
「まり、望姉ちゃんと一緒のお風呂、気持ちよかった?」
「うんっ!!あのねっ、のぞみおねーちゃんにきれいきれいしてもらったのー」
「ふふふ、よかったわねぇ」
望お姉ちゃん。
…お姉ちゃんが使った、その言葉。あたしを『お姉さん』と呼ぶ、お姉ちゃん……
―――とっても、不思議な感触のする、言葉……。
「じゃあ、あたしもお姉ちゃんに”きれいきれい”してもらおっかな?…お姉ちゃんは、いつもお義兄さんに”きれいきれい”してもらってるんでしょ?」
「こらぁっ!」
上気してほわほわの2人と同じぐらいに、お姉ちゃんの顔が赤くなる。
……でもね、その瞬間の表情は、まりちゃんの『お母さん』のものじゃない。
―――赤くなった顔に、あたしの大好きな『お姉ちゃん』が、戻ってた。
こん○○は。HP『fascination』開設者のあんBです。今回『文芸館・ときめき』にリンクを張らせていただいた記念に、きよかぁさんSSを上納(笑)させてもらいました。
のぞみお姉ちゃんといっしょのおふろ(^^)、元ネタはビオレUのCMだったりします(*^^*)
普段『極甘SS』なんて書いてますが、今回は恋の相手が出てこないので『甘SS』です(^^;)
で、きよかぁさんのお姉さんの娘…ってことは、当然きよかぁさんは『おばさん(爆)』になるんですが、それは言わない約束よ(^^;;;;)
#うちの姉の場合、「おばさん」だけど「おねえちゃん」…ということで、2つ合わせて『おばねえちゃん』と呼ばれてた(笑)
◇この作品への感想は、あんBさん(HQN01265@niftyserve.or.jp)までお送り下さい。