はじめに
同じ修理をしても、店によってその請求代金に違いがある。安いところもあれば、高く言われたこともあるでしょう。しかしその修理代そのものが高いと思うか安いと思うかは個人差があるようです。と言うのも、「難しい」作業と思われた方は「安い」と思われるでしょうし、「簡単なのに、工具さえあれば・・・」と思われる方には「高い」ものに見えるかもしれません。ましてや、アルバイトやパートの時給700円前後に比べれば高いものに思えます。そんな疑問お持ちの方いませんか・・・。

工賃の中身
工賃は修理の作業料(労力)だけではありません。工賃の中には次のようなものが含まれ、店舗の運営に不可欠なものです。

地代、家賃 修理をするには「場所」が必要です。出張専門でも車代、車庫代 が掛かります
光熱費 作業工具は電気を使うものが多く、店舗内の電気も必要です
設備機器使用料 工具や高額な精密計器・機器等があります
人件費(作業料) 作業に対する報酬です

上記の内容は修理専門のショップ、自動車の整備工場、メインテナンス・修理専門の電気修理店やOA機器サービス部門などのように商品販売後のアフターを行うにしてもこのような設備は必要で、多くの自転車・バイク店は商品の販売部門と修理部門がそうした設備と人を供用している。
だから、工賃というのは修理作業の労力に対する報酬だけではないということで、店舗経営に必要な経費負担も含まれているということです

工賃の基準、レバーレートと工数
工賃は作業内容別に所要時間が概ね決められていて、これを「標準工数」と言い1/10時間毎に区切っています。病院などで使う「医療点数」と同じと思ってください。その所要時間はなにを基準に決められているかというと、「その業務に3年間従事した人が掛かる時間」としていることが多く、当然整備士等の資格を持っていることが前提ですが、「早く終わったから安くなる」ことはありません、同じ仕事を早くできる技術を持っているのですから。

バイク・自動車業界の時間あたりの工賃、これを「レバーレート」と言い、6000〜10000円で多少幅があります。特に外車を取り扱っているところは国産車と違う工具を必要としたり修理研修に費用が掛かったりします。そのため国産車より割高な修理工賃設定になるようです。また、一部の外車に乗るお客様は「国産車と同じ修理代は安っぽくなる」と思われる方もいるとか・・・。

自動車でもバイクでもメーカーや自動車工業界から修理作業・車種別に標準的な工数設定があります。細かく分解し時間が掛かるほど工数が上がる。例を挙げればフロントフォークをアッセンブリー交換するのとインナーチューブのみを交換するのとではインナーチューブ交換の方が工数は高くなる、それだけ分解に手間が掛かるし、分解することでオイルシールやフォークオイルを交換しなければならず、結果として修理代が上がり、いろんな車種の中にはフロントフォークごと交換した方が安く済むことさえあるのだ。

ネジ締め一回いくら?
よく「ネジが緩んでいるので工具貸してください」と言われる。お客様にとっては「気軽に声を掛けたつもり」かもしれませんが、店にとっては工具で飯を食っているわけで、その工具をお貸しするわけにはいかない、と言うのが一大原則です。
お隣の個人タクシーの方に「車貸してー」と言うのと同じ事。また、どんなに簡単な作業でもお店を利用するわけだからいくらかのご負担をお願いする。その額も店によって違うでしょう、空気を入れる、緩んだミラーを締める、そんな簡単な標準工数以下の作業の場合、私の店では一箇所100円の「手間賃」を頂いている。

ただ、お客様の中で常連となってくると「簡単なことは出来る、私がして代金を頂くまでの事ではない」と、一種の信頼関係が出来ると大事な工具を使わせることもあるだろうし、作業を行っても代金を頂かないときもあるでしょう。しかしこのような事はあくまでもケースbyケースであって、「貸してくれるのが当たり前」と、思ってもらっては困ります。

一人で一台しか修理できない
次に、工賃に隠されたもう一つの「割高感」について考えてみたい。

例えば、パンク修理1200円(当店の一般自転車のパンク修理代)あればファミリーレストランでの食事代か会社員のお昼の定食二日分位の金額な訳です。だから、自転車のパンク修理ごときで1200円は高い!と私も思います。
でも、自転車やバイク、車、電気の修理等は修理作業員一人に一台ずつしかさばけず、生産性の悪い仕事であり仕方ないことなのです。先の「工賃の基準」でも書いたように、パンクの修理時間から計算すると1200円程度になります。お客様の中には「自分でやったら半日掛かったのに・・」とか「結局だめだった」と、言われる方も居られます。そこが技術屋の技術ですから。

料理の場合一度に何人分かできます。料理に携わっている方を軽視する訳ではないことを先にお断りするが、料理の下ごしらえが出来ていれば一人前3分くらいで出来るラーメンを一時間なら20人分出来る計算。
一杯500円の材料費原価を4割とすれば300円が工賃に相当する利益、これを20倍すれば時間あたり6000円で、ほぼ自転車・バイク屋の時間工賃と同じになるのです。

この考えでいけばいろんな業種の違いを越えて作業料を比較する事が出来る。
病気や怪我をして手術をすると高額の手術料が掛かる。しかし、手術には執刀医、助手、麻酔医、看護婦数人、開腹手術ならば7〜8人以上のスタッフに患者の容態を監視する機材も必要になるなど、高額になるのは致し方ないし、人の命ですから。

出張料
故障し、どうしても移動できないときは故障車の引き取りを依頼するしかない、このとき出張料を請求されると思いますが、この金額についても「高い、安い」あるようです。
電化製品が故障し出張修理を依頼し出張料を請求されて疑問を持たなくても、バイクの場合出張料を「要るんですかー?」と、言われる方は意外と多い。

先日、テレビの修理でSONYに電話したとき「出張料は2500円です」と言われ「安いなー」と思いました。修理の延長である出張も、時間あっての作業で、移動している時間も工賃に含まれるのが妥当な事だと思います。タクシーの”迎走”と同じですね。
ただ、会社からの遠近で出張料に差を付けのは逆に不公平でもあり、サービス圏内一律のようだ。それで、故障修理の場合一日5軒回れても10軒は無理でしょう。平均7軒×22日=385000円、修理工賃と部品の売上利益を入れてもサービスマン一人に掛かる経費を捻り出し事務所経費を引けば、会社の利益は少ない(若手のサービスマンならマイナスになるかも・・・)。

バイク・自転車の店でも、出張している時間ほかのことは出来ないし出張移動中も作業の一環であり、それに見合った出張料は基本的には発生するものです。
ただ、購入した店舗に出張修理を依頼すると「無料」となることがある(当店はそうだ)。店としてはどこかで利益を出さなければならない。それが販売時なのかアフターでなのか、それはお店個々の営業方針といえます。
安ーく売って、安ーく修理すれば儲からない訳で、販売時に儲けさせて戴いたならばアフターでお返しする、逆に値引きをして販売するとアフターで儲かろうとする。どちらの店を選択するかはお客様の自由で、もし出張料が気になるようであれば、購入時に出張料を含めたアフターの内容を質問してみる事は必要でしょう。

お分かりいただけたでしょうか? 
もし、修理代金に不審な点があれば修理の明細を見てください。疑問に思うようなところがあれば質問をすると良いでしょう。ただし、修理の内容にもよりますが1〜2割くらいの高い・安いは通常あり得る範囲と言えるでしょう。特に電装関係や不動車の修理では点検や確認の時間が作業全体の中でも多くを占め、原因部分の交換工数(標準の)だけでは割に合わない事もあるからです。

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