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 性能の歴史
今、GP500のレーシングマシンは200馬力もあるという。車体重量は135kgだから馬力あたり重量は0.7kg!!、F-1の1.0kgよりも軽いのである。それをコントロールして走るライダーがいるというのだから驚きである。
しかし、この馬力当然の事ながら一足飛びに向上したものではなく、技術の積み重ねの賜である。
今回の特集ではバイクの性能がどのようにして向上してきたか、時代を遡ってみたい。

1.40年前との性能比較
騒音規制、馬力規制が比較的緩かった90年代初期までを拾ってみました、
1960年頃 1970年頃 1980年頃 1990年頃
50ccスーパーカブ 58年
4.3ps/9500rpm
55000円
69年
4.8ps/10000rpm
60000円
82年
5.5ps/9000rpm
148000円(SDX)
93年
4.5ps/7000rpm
149000円
50ccスポーツ トーハツランペットCA50
4.0ps/6500rpm
58000円
ホンダSS50
6ps/11000rpm
69000円
ヤマハRD50
6.3ps/9000rpm
135000円
ホンダNSR50
7.2ps/10000rpm
230000円
250ccスポーツ ホンダCS72
20ps/8000rpm
182000円
ホンダCB250
30ps/10500rpm
189000円
スズキGSX250E
29ps/10000rpm
320000円
ホンダCBR250RR
45ps/15000rpm
599000円
400〜
500ccスポーツ
メグロスタミナ
33ps/6000rpm
295000円
ホンダCB450
45ps/9000rpm
273000円
ヤマハXJ400
45ps/10000rpm
410000円
ホンダCBR400RR
59ps/13000rpm
699000円
250ロードレーサー
市販車
ホンダCR72(62年)
25ps/9500rpm
限定車
ヤマハTD2
44ps/10000rpm
輸出
ヤマハTZ250
46ps/10000rpm
720000円
ホンダRS250R
82ps/12000rpm
1650000円
125モトクロッサー
市販車
スズキS40
11.3ps/7000rpm
(浅間レース用車)
ヤマハMX125(73年)
22ps/10000rpm
195000円
スズキRM125
27ps/10500rpm
255000円
ヤマハYZ125
36.6ps/11500rpm
429000円
大卒初任給 1〜1.5万円 3万円前後 10万円前後 17万円前後

1970年頃のワークスレーシングマシンは250ccで54psと公表されている。ヤマハから85年に発売されたTZR250はカタログ上45psであるが、実質51psをマークしていたとも言われ、その後のレーサーレプリカはレース仕様のキットに組み替えると60〜70psを出したと言うのだから技術革新は凄いものなんですね。
58年のスーパーカブ発売当初はOHVでしたが64年にはOHCとなって馬力も増し、80年の5.5psまで向上する。しかし、燃費向上・経済性をねらった事や、50ccの速度規制で高出力が必要でなくなった為4.5psまでダウンした。でも、30年という時の流れはほぼ同じ馬力を2500rpmも低い回転数で実現している。

市販車にしろレーサーにしろ、その排気量から搾り取れるエネルギー(馬力でありトルクである)の総量は同じと思って良い。つまりいくら頑張っても250ccから400ccのエネルギーを発生させることは不可能なのである。また、最高出力を400cc相当に発生することは不可能とは言えない。しかし、そこへエネルギーを集中させると、他の回転域では全く力が無く、繋がりが悪くなることでスムースな加速を望めるはずもなく、ただただ乗りにくいだけとなる。ここのところをいかにバランスを取るか、メーカーの開発担当者が一番苦心するところだ。

とは言え、長い年月の中ではそのエネルギーを有効に使う技術が発達し、30〜40年前のレーサーの馬力を音も静かに発生させ、しかもたっぷりのトルクを持つ扱いやすいエンジンが出来ている。

これほどに出力向上したのは基礎技術の積み重ねは当然あるとして、高度な加工技術・革新的な技術の導入や考案無しには達成できない事。多気筒化、動弁構造の高度化、冷却の水冷化、給排気系のデバイス考案・採用などがある。


1.多気筒化への道
2.動弁構造の違いと特性
3.冷却の水冷化
4.給排気系のデバイス

多気筒化への道は国産4気筒モデルとして初めて69年に市販されたホンダCB750が初めてで、この時の馬力は67psだった。多気筒化するメリットは高回転化し馬力を上げ易いことだ。1気筒あたりの排気量が大きくなると2つの問題があって、ボア(直径)を上げて高回転エンジンを作ると、燃焼の均一化が得られ難くノッキングなどの異常燃焼を起こしやすく、高出力も出しにくい。。ストローク拡大の場合ピストンスピードが速くなりすぎる事で耐久性に問題がある。

そこで、同じ排気量でも、気筒数を2気筒、3気筒、4気筒に分けると、回転が上がってもピストンスピードが抑えられるため高出力化し易く、同時に単気筒に比べ振動を軽減できるメリットも生まれる。ただし、多気筒にすると機械ロスが増える欠点を持つ。つまり、動弁系、軸受け、シリンダの摺動抵抗など部品点数の増加とともに抵抗も増える。その為、低回転では多気筒によるメリットを享受出来ない。

多気筒化のメリットをもう一つの見方がある。それは回転数の変化率。多気筒エンジンはよく「伸びがある」と言われるが、これはアイドリング回転から最高回転までの比率が高いのでそのように感じる。
ヤマハのSR400はアイドリング1300rpm、最高出力を7000rpmで出すから5.38倍、4気筒モデルのXJ400Rは1300rpmの11000rpmだから8.46倍。これが単気筒と多気筒の一番大きな違いとして言い表しやすい。
「理想のエンジン」は低回転でも実用的で且つこの回転比率が大きいもの、と思っています。

さらなる高出力を求める為に3バルブを用いたホンダXL250があるがマルチバルブ化が本格化したのは400ccクラスでヤマハFZ400あたりからで、以後同社はFZ750で1気筒5バルブを用いるまでになった。
このようにマルチバルブにするのは給排気の抵抗を下げ、シリンダーへの混合ガスの充填効率を上げる事にある。ただし、マルチバルブにすると冷却の問題、熱変形の問題等市販化するにはそれなりに高度な技術を必要とし、市販車である以上耐久性もなくてはならず、2サイクルに始まった水冷化がそれを可能にしたとも言える。
 
バイクといえども「騒音規制」がある。運輸省の基準に合格しなければ販売はおろか、生産も出来ない。その基準はJMCAのような緩い基準ではない。
昔は空冷でも充分騒音規制をクリヤ出来た。しかし、2サイクルエンジンには4サイクルのようなオイルによる冷却が無く、エンジン放熱のためのフィンが騒音規制クリヤのための大きな障害となっていて、80年の騒音規制値をクリヤするには水冷化するしかなかったようで、RZ250はそんな事も含め「最後の2サイクルスポーツ」との意気込みで世に出すことになった。

空冷と水冷とではエンジンの安定性に大きな違いがある。
空冷では風上側と風下側で温度差が大きく、その分熱によるエンジンの歪みも大きくなりやすい。通常走行時を100としたとき、サーキットをスロットル全開で走ると約10〜15%ほど出力低下があり、最高速度が10%近く下がることになる。(ギヤレシオは余裕馬力で設定しているため170km/hほど出るバイクが160km/hに下がるくらいなものだが、10km/h差はいかんともしがたく、立ち止まっている人の横をジョギングで通り過ぎる差に等しい)

水冷化には水による騒音の遮音性が高い事に加え、安定した性能を引き出せるという効果もあり、広く採用されることになった。

給排気デバイスの採用
ところで、このように高出力化が可能となっても、その一方では低回転でのトルク不足は否めない。スポーツバイク故の宿命でもあるが、エンジン本体ではそのようになっても構造的に付け足すことでこの難問を克服したのが排気バルブで、2サイクルではヤマハの「YPVS」、ホンダでは「RCバルブ」という名で市販化され、4サイクルではヤマハの「EXUP」がそれに当たる。

2・4サイクル共に基本的には排気管の太さと長さの比率でどこに最大トルクを設定するかが決まり、排気量に応じて基本的なパイプ径が設定され、これを走行中に変更するなどと言うことは出来なかったのだが、ヤマハが排気ガスの研究段階で使っていた構造に改良を加えて、実用化したのがYPVSというシステムである。

これにより、通常高出力化で不足する低回転域での出力ダウンを気にせずに馬力を上げることが可能となって以後、飛躍的な高出力時代を迎えることになる。

2000年5月作成
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