バイク業界は販売不振に喘いでいる。最盛期年間330万台の販売をしたとは思えないほど激減し、今年は80万台そこそこの販売見込みしかなく、(ある人は60万台行くか行かないかと言う)実に1/4に減少しているのです。そこで遅ればせながら国内メーカーがタッグを組み販売促進に協力し合う約束をした、と報道された。果たして良い結果が出るのだろうか?そこで、今回の特集では何故販売台数の減少を招いたかを探ってみたい。 お客に背を向けたメーカー いつまでお客に背を向ければよいのだろうか! 今、各メーカーの総合カタログを手にしてください、そこにはレーサーレプリカはありません。50万円以下で欲しいスポーツバイクありますか?カタログ上賑わっているのはアメリカンやリッターバイクばかり・・。自動車の世界と大違いです。当初の自動車はセダンとバンで需要を形成していましたが、シビック以降「ハッチバック」が、パジェロ以降「4WDタイプ」が、ワンボックスバン改造ブームが「ワンボックスワゴン」を生み、最近ではオデッセイ以降「ミニバン」がブームとなりそのまま自動車のジャンルとして定着しました。つまり無くなったジャンルはなく、車種=選択の幅を広げています。 では二輪業界はどうでしょうか?ブームが起きるたびにその車種には力を入れるものの、別のブームが起こるとそちらに向いて、販売車種をそちらばかりに向けてしまう。幼児の積み木と一緒で崩しては重ね崩しては重ねの繰り返しで、一向に高く積み上がらない。 レーサーレプリカ全盛の頃中学生でバイクに乗れなかった人が「免許取って乗るぞ」と心待ちにし、免許もお金もできて「さあ乗るぞ」と思ったら乗りたいバイクが売っていなかった・・これは悲しい。 バイクは趣味性が高く流行によってジャンルごとの販売台数が大きく左右されると言うメーカーの事情も分かるが、少なからず需要があるのに製造中止にするというのはユーザーサイドから言えばそれは「メーカーのご都合主義」にしか映らない。 私が元ヤマハの社員と言うこともあり、ヤマハ中心に商売やってきたのでそうしたご都合主義の為に営業面で苦い経験はたくさんあるし、同業者からも同様の話をたくさん聞いた。ホンダは250ccオフロードバイクとしてXLR250〜XR250と作り続けているがヤマハの場合XT250を製造中止のあと暫くたってXT250Tを、それで又製造中止してTT−R250という大変良くできたバイクを作ったかと思ったらまた製造中止。買いたい、買い換えたいと思ったときに売っていない。 パッソルしかり、パッソーラしかり、アクティブしかり・・・。 ※昔、ヤマハの商品企画の知り合いにこんな言葉をぶつけた「トヨタって消した商品名無いでしょ」と、すると「パブリカ」という名前が出てきた。確かに、でも「パブリカから生まれたスターレットは残っていますよね」。トヨタが今の牙城を築いたのは営業努力はもちろんのこと、ネーミングを大事にしずっと使い続けた結果でもあると思うのですが。(そのスターレットも無くなったがね) また、DT200Rが販売されたときのこと、知り合いの店が7.8台注文入れたが1台として入荷しないと言う。その話を営業主任に話すと「いつもうちのバイク売っていないのに回せないだろ」と言う、これにはあきれる。その店はオフロードが専門で日頃スクーターの販売に力入れていないし、他のバイクを売ろうとしても売りたいオフロードバイクをヤマハが作っていないのだからとんだお門違いである。 販売店の中にはオールマイティーに「何でも売る」店もあれば、レース活動に力を入れる店、地域に根付いたスクーター中心の店など多様である。先の店のお客にしても我慢して他社メーカーのオフロードバイクに乗っていたわけで、本当はヤマハのオフロードバイクを待ち望んでいたわけで、それが7・8台の客注文に結びついている。 まさにレーサーレプリカブームが始まろうとしていたときXJ400に替わりFZ400Rが発売されたが、いわゆる「スーパースポーツ」としてのツーリングバイクは後に販売される”ディバージョン”までヤマハには存在しなかったのである。30・40代のおじさんにレプリカは無いだろう・・。XJ400Rなどのネーキッドのスーパースポーツは車で言う「セダン」であって、決してラインナップから消してはいけない車種であると思います。そこでSRやSRXで我慢せざるを得なかった、それが嫌なら他社メーカー製品を購入するしかなく、このようにしてユーザーの心をもてあそび何時しか「ヤマハ党」、「ホンダ党」という言葉を聞かなくなって久しい。 販売店に背を向けたメーカー 背を向けたのはユーザーだけではない、販売店にも背を向けている。大体10年位前からそれまでの「委託販売」から「買い取り販売」に仕入れ方法が変わった。その前後のお話から。 元々バイクの生産計画は「3ヶ月計画」と言うのがあって、例えば7月生産のバイクは4月には生産台数の計画を立て部品メーカーに発注するようになっている。 2000点以上もの部品で成り立つバイクを作るにはそれだけの準備期間が必要と言うことは理解できるし、販売を開始して「大当たり」すると計画変更する事は大変な作業で予約・注文台数をこなすのに3〜6ヶ月掛かったバイクも過去にはあって、ユーザーに迷惑掛けるが、それも仕方ないことと納得できる。 しかし、そのようなときも含めて販売予測に見込み違いから最終的に作りすぎ「在庫」が残ってしまう。 メーカーは旧商品を残したくないのでシーズン末になると「販促費」を付け処分特価で販売店に出す事があります(ありました)。また、一方でメーカーと販売店の間には「台数契約」があり、達成すると販売リベートが出る仕組みになっているので、契約台数ぎりぎりの販売店はこれをクリアするため利益度外視で値引き販売するし、委託方式の時はそれほど販売店にリスクは無かったものの、買い取り方式に変わると仕入れた商品の売り残しは出せない為、自ずと値引き販売が当たり前になり利益が出なくなる。 すると利益確保のために中古車中心の店に変化していき新車在庫をしている店、新車:中古車の展示比率も変化し新車は減少していくことになる。お客様の中には「現物を見てから決める」方は多い。新車を目にする機会が減ればそれだけ購入には結びつかないのである。 バイクが330万台売れたときはそれでも良かった。しかし、ヘルメット規制・三ナイ運動強化頃から減少する販売台数、それに連れ販売店の数も減少していったが台数契約(一部メーカーはない)が残っているばかりでなく、昨年からはメーカーの三ヶ月生産計画に合わせ購入車種・色・台数まで予約する「三ヶ月予約」が導入された。これでは販売店から見れば「メーカーは販売店にバイクを売ればいい」としか映らない。 三ヶ月先に誰が何を買いに来るかなんて正確には予測できない。生産在庫の中から受注に合わせ順次出荷すればよいのだが・・・。これでは2輪業界の景気回復はあり得ない。 ※購入予約すると確実に供給される「保証」を受けるが、予約なしでも多少の”ゆとり在庫”があるため従来同様の納期が可能です。 利益確保のあまり・・・ 上記のような経過を辿り新車では利益の確保が難しくなっている。そこで中古車、あるいはバイクのドレスアップを中心とした用品販売に力を入れ利益確保せざるを得ない状況だ。バイクや自動車の改造が規制緩和され、所有者の責任に於いて改造が原則自由になった。とは言え、何でもかんでもOKというのではなく「整備不良」項目は存在して居るし、ヘルメットも被っていればOKではなく自動二輪車はB種以上の規格ヘルメットでなければならない。しかし現実はどうだろうか? 大きな音を出し走るバイク、見れば400以上のバイクに半キャップヘルメット、ハンドルは肩よりも高く・・・。 そのように改造したバイクとノーマルバイクの区別はバイクに興味のない一般の人に付ける事は出来ず、ただ「うるさくて格好悪い」にしか写らず、そのような方の子供が「バイクに乗りたい」と言ったら周囲の目も気にすれば反対するだろう。ただでさえダーティーなイメージを持つ、持たれやすいバイクに対するイメージを更に悪くしている環境は、5年後10年後の需要まで摘み取っていやしないか。 一時の金儲け的商売は将来のバイク需要減少を招いてしまうのではないだろうか。今後の健全なバイク業界発展のためには「大人としてのけじめ」が必要に思う。 ユーザーの協力 「健全なバイク社会」を夢物語にしないためには売る側(販売店)のけじめや意識改革は勿論のこと、買う側=ユーザー(お客)も他人に迷惑を掛けるような過度な改造をしないことだ。ここで言う「他人に迷惑を掛ける改造」とは何か、それはマフラーである。以前の特集でも書いたことだが、改造車を目にしない人でも改造マフラーから出る大きな音は耳に入ってくるのである。車検場に行けば余程大きな音を出していない限り「車検に合格」するのだから「合法」と言えるのだが、それでは「暴走族」と一緒ではないか。 また、とっさの時スムースな危険回避が出来そうにないハンドルの装備も目に付く。それで事故発生の際は自己責任が重く問われる可能性があるし、衝突時にはハンドルへ激しく体を打ち付ける危険性も高くリスクが大きい。個性の表現そのものを否定する気持ちはとうていないが、危険な改造、他人に迷惑を掛ける改造を慎まなければバイクに対する社会の認知は年を追って低く、更に風当たりが強くなれば結局バイクに乗れない環境へと進むのかもしれない。そうならない為にはユーザーの協力は必要不可欠なことだ。 バイクの火を消さないためには これまで述べてきたようにメーカーの事情、販売店の事情があり、ユーザーには希望がある。 新車が売れなければ中古車も店頭に並ばない。今、中古車で何とか食いつないでいる店も、このままでは販売台数がじり貧するのは明らかで、現状から脱却することは不可能と言える。今現在バイクに乗っている人の減少に歯止めを掛け、これから先「バイクに乗りたい」と言う新規の需要を掘り起こすには魅力あるバイクのジャンル拡大と生産、そして世間の皆さんが持つライダーを含めバイクへのダーティーなイメージを払拭しなければならない。それが私たちバイク愛好者・業界人に課せられた課題である。 そう結論づけたい。 ざっと書いてきましたが、いかがでしたでしょうか? 今回の特集に対するご意見を承りたく思います。GEOサイトに掲示板がありますので書き込みをお願いします。 2000年9月作成 Copyright (C) 1998-2001 カサブランカ、All rights reserved. |