一般車に多いのは内装式変速
自転車の変速装置にはたくさんの種類がありますが、大別するとスポーツ車に採用されることの多い「外装式」と、一般車に多く採用される「内装式」があります。
人間の小さな力を効率よく動力として使うためには変速機は欠かせないアイテムなのですが実際に”使いこなす”というのは大変難しい事のようです。

平坦路ならば変速の必要性は少ないのですが、それでも風が強かったり坂道があるとペダリングがきつくなるため変速装置は必需品になってきます。

自転車に変速は必要か
初めにちょっと横道にそれた話から・・・。携帯電話の基本料がまだ数万円した頃、低価格で登場したのPHSを即座に購入して、かれこれ6年が経つ。初期の頃起きやすかった通話の不良も解消し、外出中の呼び出しに使ったポケベル時代、公衆電話を捜す苦労もなくなったが、限られた相手との通話なので、メールの送受信や着メロの変更などはやらない。
その為、PHSの”通話”機能以外は使わないので、そうした基本機能以外の操作は覚えていない。つまり、宝の持ち腐れしているのかもしれないが、それは自分が選択した機能ではないので構わないのだ。

自転車の変速装置が付いた自転車に乗って、変速を使えばペダルが軽くなると言うのは分かっていても、使わないでいる人は結構多いのである。自分にとって不要な物は使わない、使わないから使い方を知らない。これは私のPHS利用と同じだ。
使えば便利というのは理解できても、どういう状況で使えば良いのか、具体論になると難しい。
ある程度きつい坂になると変速を使って軽くしても、やはりきつくなる。きついのは一緒だから使わない・・・と、イコールになるのだろうか。

ペダルに掛かる負荷の変化
そこで、ペダルに掛かる負荷と速度の関係を図で表すと下のようになる

ペダルを回すのに掛かる足への負荷は、回転が低いほど高くなり、回転が上がると低くなる。
ペダル負荷は脚力と相関関係にあり、ペダル負荷が低くなると脚力も落 ちるため、速度の上昇によって増える走行抵抗によって、ペダル負荷 (脚力)と走行抵抗が交差した点が、その人の出せる速度限界点となる。 変速なしでは左図のようになるが、変速付きになると二つ下の図で説明 します。
上記の図からは分かりにくいかもしれないので左の図を作ってみました。
赤の範囲 発進時はペダルに相当の力を入れ「重く」感じます。
青の範囲 ある程度スピードが出ると慣性力が生まれて「軽く」感じます。
黄の範囲 ペダルの回転が上がるため、回すのがつらくなります。

上の図を「変速」で繋ぐと、下のような関係になります。


ペダルも軽やかに順調に変速位置「3」で走行しているといつかは走行抵抗と釣り合うA地点以上の速度を出せなくなる。更に向かい風や坂道になると走行抵抗が増えるのでペダルに掛かる負荷は大きくなり漕ぐのがきつくなる。
そこで「変速最適範囲」で「2」に切り替えるとペダル回転数は上がってもペダルを踏み込む力=ペダル負荷は下がるため同じ速度で走っても軽く感じるようになる。
しかし、更に速度が落ちると「1」に変速する必要が出てくるが、それも更なる負荷が増えるとペダルに掛かる負荷が増え漕げなくなり、ついには自転車を押して坂を上がることになる。

ポイント変速を上に上げたらペダルに力を入れて漕ぐ、下げたらペダルを早く回すように意識を持つ

とは言っても、内装3段はギヤ比が離れているために同じ速度であっても1と2、2と3ではペダル回転数が大きく違うので、その事に合わせる意識が薄い場合(つまり、うまく使えない人)は「ペダルの重さが変わらない」と受け取ってしまうのでしょう。数字で言えば一般自転車の速度はせいぜい20km/h前後で、女性の場合は15km/h位でしょう。その速度からブレーキを掛けてスピードを落とすと一気に10km/hを切りますから、変速「1」にしたとしてもペダル負荷が高く、「ペダルが重い」と、感じることになり、結局は変速が付いても意味がない印象を受けてしまうことになるようです。

内装4段とオートマチック
では内装式でも4段ではどうでしょうか?



線が一杯で分かりにくいので、別の図を作ってみます。


内装3段は速度の守備範囲がギヤ比によって幅広い為にペダル回転数の落差が大きく、その時には「変速ショック」を感じる。内装4段はギヤ比の変化が小さい事から変速をした後でもペダル回転数差が少ないために足に感じる「変速ショック」も少なくて済みます。

内装3段付き自転車で平坦路を発進停止の繰り返しをする際、ほとんどの方が変速を使わない。上の図からも分かるようにスタートするにはやや重い感じで、スピードが出ると軽く感じてしまうギヤ比に設定されている。
内装4段は、3段の「2」を挟むように少し軽めの「2」と、やや重めになる「3」のギヤ比設定なので、「2」で楽にスタートしたら「3」に切り替えて効率よく走行する。少し向かい風を感じたり、緩い坂を走るときは「2」に切り替えることでペダル負荷が下がり、速度をあまり落とさずに走ることもできる。
つまり内装4段は、通常走行するときに使うギヤが2つになるというメリットがあります。

これをオートマチックにした物がシマノの「オート4」。変速利用時の分かり難さ、変速の煩わしさ、全部のギヤを有効に使う事を目的に開発されたものです。
オート4にはバリエーションがある。
1.おどロック付き
2.おどロックなし
3.コントローラーなし
以上の3種。今回説明に使うのは1.の「おどロック付き」。2種類の変速パターンと手動による変速と、”おどロック”というペダルを回せなくする盗難防止装置を備えた物で、ロック解除には暗証番号を入力する必要があるものです。

切替スイッチを”D”にして停止状態からのスタートは必ず変速ポジションの”1”からスタートする。速度が12キロ、16キロ、20キロと、上がるにつれ自動的に2−3−4とアップしていく、その変速時にはコントローラーのLEDが点灯し、”ピィッ”と言う音が出る。”Ds”ポジションでは上記より2キロほど早く変速を行う。乗る人はただひたすら、自分のペースでペダルを回しさえすれば、その絶妙とも言える速度で自動的に変速するのである。

勿論、スピードが落ちれば変速も下のギヤに切り替わり、再度の加速も容易になる・・・はずなのだが、時として3に
変わるべきところでも2のポジションのままと言うこともあるが、おおむね快適なオートマチックとして働く。

しかし、時には困ったこともある。ゆっくり景色を眺めるように走りたい、速度センサーで働くDのポジションでは変速位置が「1」となり、ペダルをクルクル回さなくてはならない。そんなときには”手動”ポジションがあって、暗証番号入力を兼ねた三角形のボタンが2個あり、左側の三角でアップ変速を、右三角でダウン変速を行う事が出来、ジョギング程度の速度なら通常”1”であるところを”4”で走行できるようになっています。

「通常のグリップシフトによる4段変速でも良いじゃないか」、そう言われそうだが、それでは使われない内装3段と同じで「宝の持ち腐れ」になってしまう。通常の平坦路を走るギヤが内装3段の1枚から2枚に増えた使い勝手と効果に加え、その変速を自動で行えるのは大きなメリットだ。

内装3段変速でも改良なされたが
内装3段も99年末には新しくなり、ペダリングしながらの変速も出来るように改良された。これは内装4段のペダリング中の変速を可能にした機構を取り入れ、改善された物だ。その後更に、内装3段にもオートマチックの「オートD」も発売された。これは新3段にオートマチック機構を取り付けた物。

自動で変速し、手助けするのは良いのだけれど、変速比の変更はされていないし、また切り替わる速度のタイミングが悪いので、先の説明のようにギヤ比が離れているが故に変速ショックが大きく感じられる。
1→2への変速タイミングは12km/h前後で、「1」で走るには結構ペダルを回している感覚、そこから「2」に変わるとペダル回転数が大きく落ちるため、足へのショックが大きくなる。同時に再度スピードを上げるにもペダルを沢山回す感覚が生まれにくい。
また、16〜7kmn/hで2の位置で走行している状態から12km/h以下というのは「ちょっとスピードを落とした」程度、程良くペダリングしていた状態から変速が1に切り替わるとペダルを沢山回す意識が生まれにくい事もあるようで、内装4段のような恩恵には授かれない。

こう説明すると、いかにもな「オートD」が悪いようになってしまうけれど、それだけ4段と言う変速段数が自転車として良い言うことでしょう。

外装式では少なくても6段、最近のレース仕様では27段変速まで有ります。そこまではどうかと思いますが、快適にペダリング出来る範囲を走行する速度に合わせて繋いでいくと出来るだけ多い変速が有った方がいいことになり、内装式でも7段まで有りましたが、価格の面で折り合いがつかず、結局短期間で販売中止になりました。
丘陵地にある住宅地での自転車利用ではそのような多段変速を採用した自転車も必要で、その変速をうまく使いこなすには、使い方にあった変速数の選択と、これまで説明した頭の中での「切り替え」も必要なことのようです。

2001年10月作成
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