自転車の変速装置には、外装式と内装式があります。
両者に違いは外観からすぐに分かります。変速するギヤが外部に露出しているのが外装式、リヤハブ内に内蔵されギヤが見えない物が内装式です。
内装式の中には7段の物まで作られた事はありますが、今では4段までとなっています。確かに、変速数は沢山あった方が何かと便利なのですが、ごく普通の自転車にとって7段というのは必要性が薄く、仮にあったとしても、あまりに高価ではメリットがありません。特に山間部での利用に於いて多段変速は必要となることがありますが、低価格で実現できる外装式の方にメリットを感じます。

外装式ではリヤのみと、フロント・リヤ併用の2種類の形式があり、子供用のMTBや通学用途の自転車はリヤのみ、その他のスポーツサイクルは後者を採用しています。その変速数はフロントが2ないし3段、リヤが6から10段変速まであって、組み合わせにより合計12段から30段変速まであります。

これほど沢山の変速の組み合わせを正確に行うためには、組み立て時のきちんとした調整が必要ですが、ワイヤーの伸び等で調子が変わることもありますから、定期的な調整も必要なことです。

今回は、シマノから新しく出された変速装置を参考教材として使い、外装式変速の調整方法を解説していきたいと思います。〜画像が多いので、ゆっくり読みながらご覧下さい。

これが外装式です
フロント3段、リヤ7段で、合計21段変速。
MTBでは一般的な変速数です。
ハンドル右側がリヤの変速切り替えで、この自転車はグリップシフトを採用していますが、従来の製品と違い、手前にグリップをひねる事でTOPギヤに切り替わるようになりました。
つまり、加速(スピードを)したいときに「ギヤが変わらずに困った」と、言う問題を解決しました。
こちらはフロントの変速を受け持つ左グリップです。
こちらの変速方法は変更ありません。
調整の初めはフロントギヤの変速ディレーラーの高さ調整です。
左グリップを回しながらアウターギヤ(ハイギヤ)に変速します。この時、写真のようにギヤとディレーラーの隙間が1mmくらいになるようにディレーラーの高さを合わせます。
合わせ方は、ディレーラー取り付けねじを緩めて(矢印のねじ)調整します。
この時、高さはもちろん、ギヤとディレーラーの平行も合わせておきます。
ディレーラーの位置を調整したら、次はディレーラーが動く範囲の調整ですが、その前に変速ワイヤーの遊びを調整しておきましょう。
フロントの変速をインナーギヤ(内側のローギヤ)に切り替え、ペダルを回してギヤをかけ直します。
指で押さえた変速ワイヤーに遊びが出ていたら、ワイヤーを留めているねじを少し緩めて遊びを無くすようにワイヤーを引きます。
ディレーラー上部に二つの調整ねじがあります。内側がアウターギヤ「H」の位置調整用で、外側がインナーギヤ「L」の位置調整用です。
調整は、インナーギヤにチェーンを掛けた状態で、リヤギヤの変速をローギヤにします。この時にディレーラーとチェーンが当たらない程度に調整ねじを回して調整します。
調整が済んだら確認のためにペダルを回し、リヤギヤをTOP(ハイ)ギヤに掛けます。この時僅かに当たる程度は構造上問題ありませんから、そのままにしておきます。
続いてアウターギヤ(ハイギヤ)ですが、こちらはリヤギヤをTOPギヤにかけ直して調整しますが、インナーとは逆にTOPギヤではチェーンが当たる音を出さないように調整し、ローギヤに切り替えて音が出るか出ないか確認しますが、インナーギヤ同様少し音が出てもそのままにしておきます。

教材のように、フロント3段の場合、ここまでの調整が上手くいっていれば、シフトをミドルギヤ(中間のギヤ)にきちんと入るはずです。また、その際リヤギヤをどの位置にしてもチェーンが当たる音が出ないはずですが、もし音が出るようならばワイヤーの遊びの影響が出ていることも考えられますので、変速レバー手元にあるアジャストスクリューで微調整します。
  
フロントがインナーーギヤで、リヤギヤをローギヤとTOPに切り替えたときの、ディレーラーとチェーンの隙間を上から見た物です。
写真左がローギヤの時、右がTOPギヤに掛けたときの違いです。
この写真はフロントがアウターギヤになっていますが、この場合リヤがTOPの場合チェーンラインは直線ですが、ローギヤになると大きく曲がっているのが見て取れます。
つまり、フロントがアウター(高速用)でリヤがローギヤ(低速)と言うのは、ギヤの組み合わせ上ちぐはぐだし、チェーンにも負担を掛けることになるため、変速の組み合わせとしては”使わない組み合わせ”です。
同様に、フロントがインナーでリヤがTOPギヤと言うのもちぐはぐなので、これも使わないギヤになり、これらの組合わせに於いて、ディレーラーとチェーンが当たる音がしても、問題ないと言うことになります。
リヤの変速調整もはじめにワイヤーの遊びを調整します。
新型の変速ですから、ローギヤに変速してからワイヤーの弛みを確認します(旧タイプはTOPギヤで)。張りがなければ、それは弛みですから、ワイヤーの留めねじを緩めワイヤーを少し引っ張りながらねじを締めます。
この時、あまり強く引っ張ると、変速した状態になりますので、手加減が必要です。
また、ワイヤー固定用ねじを締めるときはディレーラーを手で支えて下さい。
写真のように左のねじがローギヤ調整用、右がTOPギヤ調整用です。どちらも締めることでディレーラーの動きが制限されるので、下の写真のようにギヤとディレーラーが一直線になるよう調整します。
調整が出来たらギヤを「4」にしてみましょう。
ワイヤーの遊び、ディレーラー位置の調整が上手くいっていれば3と5のギヤの中央ピッタリにチェーンが来ているはずです。
もし、ズレが出ている場合は、フロント同様ワイヤーの遊びが関係しているので、リヤディレーラーのワイヤー止め部分にあるアジャストスクリューで微調整します。
これで一通り調整が終わりました。しかし、フロント・リヤ別々に調整をしましたから、ギヤの組み合わせ全てで(先に書いた2通り以外)調子がいいとは限りません。ペダルを回して変速し、スムーズに変速できるか、出来ないときは再度ディレーラーの位置、ワイヤーの遊び、チェーンラインの確認を行って下さい。
また、調整と実際に走るとでは変化することもあります。時間を掛けて何度か確認しながら調整を行って下さい。
 トラブルシューティング
フロントギヤがアウターに掛からない
・アウターギヤの調整ねじが締め込まれ過ぎている〜参照
・ワイヤーの遊びが大きく、アウターギヤまでディレーラーを移動させることが出来ない。
フロンロギヤがローギヤに切り替わりにくい
・ワイヤーの遊びがない・少ない〜ローギヤでも引っ張っている状態
変速してもリヤギヤがTOPギヤに変わりにくい〜旧タイプのリヤディレーラー
・戻しスプリングのへたり〜最悪は部品交換
・ディレーラー回りの潤滑不足〜スプレー式の潤滑剤をかける
・ワイヤーの遊びが少ない〜ワイヤーテンションの掛かりすぎ
TOPのアジャストスクリューが締め込みすぎ
・ディレーラーガードが曲がり、ディレーラーの動きを制限している
前後ギヤ共通
・チェーンが外れる〜ギヤの調整スクリューを締め込むフロントリヤ
その他
TOPギヤで加速すると”ガッガッ”と音がしてスムーズに加速できない。
長距離走ってくるとギヤが摩耗し、チェーンの掛かりが悪くなり、体重をかけた加速においてチェーンが浮き上がる現象が起きることがあり、この原因の場合は、ギヤ交換が必要です。
ギヤの寿命を延ばすためには、各ギヤを満遍なく使い、一つのギヤギヤばかり使わないようにしましょう。